01 聖拳アルミナス
オークション編(後編)〜キルケットの錬金術師編〜
の1〜39話+余談1話(5/5修正:話数変更38→39 余談2→1)
一通り見直しまで終わったので、定期的に投稿していきます。
話数は、この後の見直しとかで多少は変わるかもしれないです。
オークション編(前編)〜キルケットの女剣士編〜 に引き続き、地道に商売をしていく話になるかと思います。
あと、最後はちょいエロ入るかもしれないです。
苦手な方はご容赦ください!
ヤック村からキルケットへと戻った俺は、その足でガンドラの店へと向かった。
実は、出発前に何点かの遺物の鑑定や研磨をまとめて依頼しておいていたのだ。
遺物の鑑定やスキル鑑定を行う鑑定スキルは、体力や精神力などをそれなりに消耗する。
そのため、ガンドラの体力を考えると1日に行える鑑定の数には限りがあった。
錆び付いた武具の研磨などには、さらに時間がかかるだろう。
「すまねぇ、アルバスの旦那。鑑定は一通り終えたんだが、研磨の方まではまだ手が回りきってねぇんだ」
「仕方がないさ。オークション出品予定の装飾具は後回しでもいい」
そっちは、最終的にオークションまでに間に合えば良い。
「へい! 旦那に言われた通りスキル鑑定を先にして、研磨はスキル付きの武具の方から先にしとります。でも、なかなか時間がかかっちまってて申し訳ねぇ」
「いや、割引でやってもらってるんだ。そこまで急かしちゃ悪い」
俺がそう声をかけると、ガンドラはまた涙ぐんだ。
「あっしみてぇなもんに、もったいねぇ言葉ですじゃ…」
思い込みが激しめのガンドラは、自分が認めている相手からこういう優しい言葉をかけられるのにめっぽう弱いらしい。
「もし。あっしが古代の錬金術師だったら…研磨なんかは一瞬で終わらせちまうんでしょうが…」
「錬金術師?」
「ええ…」
ガンドラによると、古代魔術の一種でかつてはそういった魔術が存在したらしいのだそうだ。
破壊と再生成、そして精製や加工などを行う、現在は失われた魔術属性だとのことだ。
「雷電や氷雪、爆裂のような。今は失われた魔術属性と似たようなものか…」
「あっしは魔術のことはよくわかりませんが…、おそらくはそういった類のものだと思いやす」
ライアンたちと様々な古代遺跡を攻略していたが…今のところそんな名前の魔導書を見つけたことはなかった。
「あっしらみたいな鍛冶屋の間で伝わってる、迷信の類かもしれませんがねぇ」
「確かに。鍛冶屋や加工屋としては憧れの術だろうな」
だがいずれにしろ、貴重な古代の魔導書1枚を使って武具の研磨をして終わりでは全く割に合わないだろう。
それに、そんなことができる奴がいたら。
ガンドラのような武具職人は商売あがったりになるだろう。
「そんなことよりアルバスの旦那! 鑑定した武具の中に、相当な掘り出し物がありましたぜ!」
そう言ってガンドラが持ってきたのは『聖拳アルミナス』だ。
それは、俺がロロイの変化版鑑定スキルに気づくきっかけにもなった武器だった。
その鑑定書には『聖拳アルミナス(研磨済み)』の文字と共に『遠隔攻撃・風/打』のスキル鑑定結果が記されていた。
「遠隔攻撃スキルか!?」
そう、思わず声が漏れてしまった。
ロロイの見つけてきたサビサビの金属の塊。
そのとき俺が『捨ててこい』とか言っていたそれは、100万マナを越える値が付く可能性がある、とんでもない代物だった。
「これは、大儲けだな!」
俺1人だったら確実に捨てていたはずの『錆びた鉄の塊』が…
ロロイのアイテム鑑定により価値を見出され、ガンドラのスキル鑑定と研磨により最高の逸品へと姿を変えていた。
磨かれてニブい銀色の光を放つその聖拳を受け取り、俺は胸の高鳴りを抑えることができなかった。
「すごいぞ、これは」
油断すると叫び出しそうだった。
その他にも、ガンドラの鑑定で幾つものスキル付きの遺物が発見されていた。
これら含め、地下遺跡から持ち帰ったものを全て売り抜けば。500万マナを越えるような額になるかもしれない。
ロロイとバージェスの口車に乗って、命懸けの遺跡探索に乗り出した甲斐があったというものだ。