表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍1,2巻発売中】戦闘力ゼロの商人 ~元勇者パーティーの荷物持ちは地道に大商人の夢を追う~  作者: 3人目のどっぺる
第4章 キルケットオークション編(前編)〜キルケットの女剣士編〜
81/316

18 濃密な時間

その後、俺たちは1週間ほどアルカナの旅館に滞在した。


クラリスが女であることを打ち明けた日から、バージェスは、クラリスと寝る部屋を分けると言い出した。


「結婚前の娘と、間違いが起きると良くない」


とのことだが…


さっさと間違いを起こしてしまえば良いと思ったのは俺だけだろうか?


クラリスの方はというと。


「今は、断られたわけじゃないとわかっただけでいい。いつかそのうち、ちゃんとできれば…」


と、あの夜の怒りはどこへやらで、それを了承してしまうのだから、とんだ純真ピュアカップルだ。



そんなプラトニックなバージェスとクラリスに対して、俺の方はと言うと…

半年間会えなかった分を埋めるかのように、毎晩毎晩アルカナと最高に濃密な時間を過ごさせてもらった。


ごめんなさい。

とりあえず言いたかっただけです。


まぁでも、俺にとっては一番重要だからな!



俺の商売の方はというと…


日中は1週間毎日のようにロロイとアルス大森林を駆け回り、大量のモーモー肉を仕入れてきた。


ロロイの倉庫の中には4体ほど入れるのが限界である中型モンスターモーモーを、俺の倉庫に100体ほどぶち込んだ。


食肉部位に換算しても20tはあるので、しばらくはモーモー肉どころか飯にも困らなそうだ。


ついでに俺の倉庫に、いったい何体までモーモーが入るのかと試してみたのだが…

100体までいってもまだ満タンになる気配がなくて、いよいよ俺の倉庫容量には制限が無いような気がしてきていた。


ちなみにロロイは、モーモーにトドメを刺すたび「いつも美味しいお肉をありがとうなのです」と言って深々と一礼していた。

肉塊になる前の大好物が生きて動いている姿を見て感謝の言葉が出てくる辺り、やはり野生児だな。



またそれとは別に、俺はアルカナの旅館で新たな商売のネタを見つけだしていた。


バージェス達に詳しく話すのはもう少し形になってからのつもりだが、上手くいけばキルケットでさらなる稼ぎを得られそうなネタだ。

そしてアルカナもその商売に乗ってくれるとのことだった。というか、これまたアルカナの協力が欠かせない案件だった。


「薬草のことでしたら。最近調合が楽しくて仕方ないので…なんでもやりますよ」


アルカナ、頼もしい限りだ。


お礼に俺は、ロロイとクラリスの許可を取って、アルカナにアース遺跡の遺物を3つ贈与することにした。


俺の商品となって遺跡探索のための資金になった薬の他。ロロイもクラリスも地下で度々アルカナの薬の世話になっていたため。

アルカナへの遺物の贈与について、特に異論は出なかった。


アルカナに贈与したのは…


『薬師エミレットの髪飾り(薬剤調合・成功率UP)』

『薬師エミレットの調合日誌』

『薬師エミレットの種×10』


の3つだ。


鑑定結果は『エミレットの…』だったが。

ガンドラが言うには、エミレットは古代の薬師の家系だそうだ。

アース遺跡から発掘された他の遺物で、それが証明されているらしい。


調合日誌は古代文字で書かれているのだが、確かアルカナは文字自体はギリギリ読めたはずだ。


「こちらは、古代の薬師くすりしの方の調薬記録ですか…」


「内容はわかるか?」


「知らない名前の薬草しかないですが…内容自体は何となく…」


ちなみにガンドラは。

読めるには読めるが、そもそも内容が難解なため理解できないと言っていた。


中央オークションへ出品する品物の候補だったのだが…


かなり本格的になっていたアルカナの薬草調合室を見て、そして楽しそうに調薬について語るアルカナの話を聞いて、気が変わった。


「スキルの付いた遺物まで…。こんな貴重なものを、私がもらってしまっていいのですか?」


「少なくとも俺は、もうそれくらいのものはアルカナからもらってる。たまにしかちゃんとお返しができないんだ。何も言わずに受け取ってくれ」


「本当に、大商人様みたいなことを言いますのね」


「それを目指しているからな」


「ありがとうございます。あ・な・た…」


そして、みんなの前だというのに濡れた瞳で俺を見つめてくるアルカナ。


これはあれか?

ここであれしろということか?


バージェスは口を一文字に結んでいるし、クラリスすんごく恥ずかしそうに俯いている。

ロロイは、なぜかニコニコしながら俺たちを見ていた。


「あら…」


ロロイの視線に気づいて口元を抑えるアルカナ。


「まだ、少し時間が早いな。とりあえず夕食にしようか」


「そうですね」


ちなみに、夕食はプリンと共同浴場の少年が2人がかりで作っていて、その味は宿泊客達になかなかの評判なのだそうだ。



そんな感じで俺たちは、出発前から決めていた10日間という期間をヤック村で過ごし、再びキルケットへと舞い戻ったのだった。


クラリスの一件は、これでいろいろと前に進み出すだろう。

ここまでお膳立てしたんだから、後はもう2人で上手くやってくれって感じだ。


そして俺の方は、これから3ヶ月後の中央オークションに向け、さらに本格的に動き出すつもりだった。

ヤック村に向かう前にガンドラに依頼していた、遺物のスキル鑑定もかなり進んでいる頃だろう。


「これから、もっと忙しくなるぞ…」


モーモー肉も仕入れたことだし、焼肉屋を再開することも考えていた。

ただ、色々な商売を同時展開することを考えると、ロロイと2人きりというのも色々と限界が出てくるだろう。


さらに商売を拡大するため、そろそろ新たに人を雇うようなことも考える始める時期かもしれない。


天下の大商人を目指して、俺は着実に(マナと商材)を蓄えていた。

「キルケットの女剣士編」メインストーリー終了でございます。

ここまでお読みくださり、誠にありがとうございます。


みんな、なかなか結婚しませんね(^◇^;)

私の責任です、すみません。m(_ _)m


ストックの残るは「余談」と「目録」で。明日の夜と明後日で投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  もうバージェスのことはほっとこう。奥手(ヘタレ)と鈍感と純情とか他人がどうこうできぬ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ