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【書籍1,2巻発売中】戦闘力ゼロの商人 ~元勇者パーティーの荷物持ちは地道に大商人の夢を追う~  作者: 3人目のどっぺる
第4章 キルケットオークション編(前編)〜キルケットの女剣士編〜
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17 結婚の申し込み

旅館の廊下にて、落ち込むクラリス。


風呂に入る前まではバンダナで髪を隠していたが、今は垂らしっぱなしだ。


「しばらくここに滞在するわけだし。チャンスはいくらでもあるさ」


「そそ…そうなのです。さっきはロロイが設定にのめり込みすぎて大失敗しちゃったけど、今度はちゃんとするのです!」


「2人ともありがとう。2人に責任はないよ。今までのことも含め、結局は私がちゃんとできなかったからダメだったんだ…」


さらに落ち込むクラリス。


「いや、俺たち2人がダメだった。クラリスはしっかりとやることやってたのに…」


今回は、ロロイもいけないが。

もたもたと予定通りの行動を取れなかった俺もかなり悪い。

普通に考えて、俺たち2人が失敗の原因だ。



そこへ、気絶から復活したバージェスがやってきた。


「ロロイちゃん。その…さっきはすまなかった」


裸をガン見したことを言っているんだろうが、今の俺たちの関心ごとはそれじゃない。


ちなみに俺もしっかり見てしまったが…

ロロイの方が全く気にしていないようなので、俺も気にしないことにした。


「ロロイは別にいいのです! それよりもバージェスはもっとちゃんとクリスを見るのです」


「?」


バージェスがクラリスを見た。


「やっぱり髪の毛が伸びすぎだな。まぁ、そういう路線なのは構わねえけど…」


「だから、私は女なんだって! さっきも言っただろ!」


クラリスが、再びそう言った。


「はぁっ? 仮にそうだとして、半年も同じ部屋で寝泊まりして、さっきは同じ風呂にも入って。それで俺が気づかないわけがないだろーが」


気づかないわけがあるんだよ!


「いつまでも馬鹿なこと言ってんじゃねーぞ」


そう言ってバージェスは、クラリスの股間を「がしっ」と掴んだ。


「ほれ、ちゃんとキ○タマがついて…」


そう言いながら少しまさぐって…


「……ない?」


そして、バージェスの顔が青ざめた。


地下遺跡では、俺がなんとか回避したその『お約束』を、バージェスが見事にしでかしてくれた。


「んなにィィィィイイイイッッ!?!?!」


「だから…私は…」


「ふぐぅっ」


「えっ?」


そして、バージェスは本日2回目の気絶をした。

きっと脳みそがオーバーヒートしたに違いない。


百戦錬磨の魔法剣士は、女の子に超絶弱かった。


「……」


「……」


「……」


俺たち3人は顔を見合わせた。


「作戦、第一段階完了……なのですか?」


「そうみたいだな」



→→→→→



俺たちは、気絶したバージェスを3人がかりで部屋まで運び入れ、バージェスとクラリスを2人きりにした。


あとは、バージェスの目が覚めた後で、クラリスからきちんと話をすれば良い。


最難関のカミングアウトが済んでいるので、あとはもうなるようになるだけだろう。


そして、1時間後にやっと部屋から出てきたクラリスは…


目を赤くして泣いていた。


「ダメだってさ…」


それだけ言って、外に走って行ってしまった。


「クラリス!」


ロロイがクラリスを追いかけて出ていった。



「バージェスが断った…ってことか」


バージェスにも選ぶ権利があるのは言うまでもないが…


俺としてはここまでクラリスに協力してきた手前、上手くいってほしかった。


「あいつ…」


ずっと若い嫁が欲しいとか言ってて、いざとなったら拒否するとか…

いったいなんなんだよ。


まぁ、たしかに。

いままでずっと男だと思って接してきた弟子が、実は女の子だと知って…


さらにはいきなり結婚とか申し込まれて戸惑うっていう気持ちも、わからなくはないけどな。


ただ、戸惑いがあるならせめて時間を設けるとか。いきなり断る以外にも色々あるだろーが。


「……はっ!?」


まさか…おっぱいか!?

おっぱい好きのバージェス的に、クラリスのそこが不満とか、そういう話か!?


プリンとアルカナを見てデレデレしていたバージェスの顔が浮かび、凄まじい殺意が湧いた。


そうなんだとしたら、ぶち殺してやるぞ。


…間違いなく返り討ちにあうだろうけど。


何せ俺弱いし。



「バージェス。クラリスの結婚の申し込みを断ったんだってな…」


せめてきちんと理由だけでも聞いてやろうと思って、俺は部屋に入ってバージェスに声をかけた。


「えっ…断った? 俺がか?」


「はぁっ!?」


「あれは断った。ってことになるのか?」


「はぁんっ!?」


ついつい変な声が出ちまった。



詳しく話を聞くと…


クリスが本当は女であることや、本当の名前が『クラリス』であることを打ち明けられ、さらには結婚まで申し込まれたバージェスは…


戸惑いのあまりしばらく黙り込んでしまったらしい。


それはまぁ、普通の反応だ。


「ちなみに、どのくらいだ?」


「30分くらいかな…」


「長っ!!!」


クラリスがどんな気持ちでその時間を過ごしたかは、想像に難くない。


そして、バージェスは…


「『まだ若いんだし。俺なんかよりもいい奴が現れるかもしれないから、もっとよく考えろ』って、そう言ってやったんだ」


「それで…?」


「いや…それだけだ」


「はぁ…」


そしてバージェスは、本当に『よく考えろ』と忠告しただけのつもりだったらしい。

よく考えた上で、クラリスがまだその気なら…


「拒否する理由は特にない…」


とのことだ。


「クラリスは、断られたって思って泣いてたぞ」


「えっ…」


純情ピュアかっ!」


お互いに!


…頭が痛くなってきた。


「もう一度確認するけど。結婚の申し込みを断ったつもりはないんだよな?」


「ああ…」


「なら、俺からそう伝えておくぞ。だけど、後で自分でもちゃんと伝えろよ」


「あ、ああ…」


なんで俺が翻訳をしてやらなきゃならないんだ。


純情ピュアかっ!



俺はクラリスとロロイを探すため、薄暗いヤック村の道へと走り出た。


「あ! アルバス」


…旅館の入り口脇にいたので、2人はすぐに見つかった。


俺が今しがたバージェスとした話をすると。

クラリスはまた泣き出して……しばらくして怒り出した。


「あいつ! 紛らわしいんだよ!!」


「ちゃんと確認しない方も悪いだろ…」


「とりあえず。全部バージェスが悪いのです!」


「後で文句言ってやる!!」


「……」


まぁ、クラリス元気になったし。

それならそれでいいや。

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― 新着の感想 ―
[良い点] クラリス… 良かったのう… [気になる点] クラリスが渋いおじさま好きという設定は、やはり天下の大泥棒の孫から…かな?(笑)
[一言]  だな。バージェスが悪い。
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