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【書籍1,2巻発売中】戦闘力ゼロの商人 ~元勇者パーティーの荷物持ちは地道に大商人の夢を追う~  作者: 3人目のどっぺる
第4章 キルケットオークション編(前編)〜キルケットの女剣士編〜
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14 アルカナの提案

「アルカナさんは、なんて言ってる?」


俺たちは、翌日の夜。

再びバージェスが寝静まった頃に食堂に集まっていた。


クラリスとロロイは、緊張の面持ちで俺が手紙を読み上げるのを待っている。


「待て待て、焦るな…」


前半は俺への愛のメッセージだ。

…恥ずかしいから声には出せん。


「どうなのです!?」


「ロロイも焦るなって…」


そして中盤は近況報告。


「マジか! プリンが結婚したのか!?」


思わず声が出てしまった。


プリンは隣の共同浴場の少年と結婚することになったらしい。

というか、実は勢いですでに「済」だということだった。


血はつながっていないが。

一応、父親としては複雑な気分だ。


『僕は、プリンとプリンの生きているこの村を一生を懸けて守り続ける』


という、熱いプロポーズの言葉が決め手だったとかなんとか…


『君は、お父上とアルカナさんが守ってきた、この土地を守るんだ』


アルカナのお世辞かもしれないが。

以前に俺が薬草風呂でプリンに言ったそんな言葉が、プリンの気持ちに大きな影響を与えていたということらしい。


…感慨深いもんだな。



「アルバス…まだなのですか?」


「いつまで1人で読んでるんだよ」


俺が浸っていると、ロロイとクラリスに催促されてしまった。


「待て待て。もうそろそろそれっぽいところが始まるから…」


人がいい気分に浸っている時にコイツらめ。


早く早くと催促してくるロロイ達。

仕方がないので、とりあえずそれっぽい部分に書いてあることを読み上げた。


「なになに『薬草混浴風呂で、裸のお付き合い大作戦を決行すべし』だと? …はぁっ!?」


アルカナの提案する作戦は。

「男同士の裸の付き合い」と見せかけて、「えっ、女の子なの!?」という感じで勢いよくバラすというものだった。


「ダメダメだろ…」


アルカナ…。手紙の前半部分に力を入れすぎて、後半は力尽きてだいぶ適当だろ。


もはや、やる気を無くしているだろ。


口ですら言い出せないようなやつが、そんな方法でバラせるわけないって!


だが、ロロイとクラリスは…


「そんな大胆な方法を思いつくとは。さすがはヒトヅマなのです!?」


「それで行こう! わざわざヤック村まで行くんなら、きっと俺も覚悟が決まる!」


なんかノリノリだった。


コイツらマジで言ってんのか!? 


「旅行なのです! ついでにアルバスの行商なのです!? あと、トレジャーハントなのです! アルバス。あっちの方には、どこか古代の遺跡はないのですか?」


「あるにはあるが、ビリオラ大断崖と呼ばれる亀裂の手前だ。難所のガラド大山脈を越える必要があるから、アース遺跡攻略に近いレベルの準備と覚悟が必要になる。行くとしたらついでとかじゃなくてキチンと準備してからだな」


まぁ古代の遺跡と言っても、あそこはアース遺跡よりかはかなり新しい200年ほど前の遺跡だ。


前衛都市ゴリアテ。

かつてのエルフ達との戦争において、最後の前線地帯であったと言われている。今は放棄された西の外れの都市だ。


「じゃ、今は旅行と行商なのです! 英気を養って、マナを貯めて、トレジャーハントの準備なのです!」


「そうだな。ヤック村に行くなら、モーモー肉を仕入れてくるか」



最近はモーモー焼きを出す店がだいぶ増えてきてはいるが、俺がたまにモーモー焼きの店を出してみるとまだまだ売れ行きは悪くない。


『元祖!アルバスのモーモー焼き』


第二次ブームの火付け役という知名度は、まだまだ健在だった。


また、通常の輸送コストを考えると、俺の店の値段設定はかなり安めだったらしい。


「なんでそんな金額で売れるんだ!?」

「うちでやってみたら大赤字だ!」


そんな声が聞こえてきたが…

今更値段を変えるのも変な話なので、俺は元のままの1串10マナでモーモー焼きを売り続けていた。


ちなみに他の店では、同じような量で20マナで売って、それでギリギリ採算が取れるくらいだそうだ。


かなりミスったぜ。


今度から値決めの際にはロロイサイズの倉庫スキルで、輸送コストを計算することにしよう。


「いざヤック村なのです! アルバスの奥さんに会いにいくのです!」


「なんか目的変わってるぞ、ロロイ」


そして、ヤック村行きの計画はあれよあれよという間に練られ、2日後には出発することになってしまった。



アルカナ…


『たまには帰って来い』って。


つまりはそういうことかな?


ヤック村を旅立ってから、実に半年ぶりの帰郷だった。

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