07 新たな目標
「これからどうするかなぁ」
魔王の討伐とかは、実は俺にとってはどうでも良かった。
なんとなく。ライアンのパーティに拾われて、そのままついていった結果そうなっただけだった。
魔王の討伐は、それなりに大変だった気がするが、
俺は後方で、ひたすら支援アイテムを出しているだけだった。
やっぱり、魔王の討伐を成し遂げたのは勇者ライアン達の力だ。
「そういえば俺…、商人なんだっけ…」
15の頃。
まだ世間や自分の限界を知らずに夢みがちだった俺。
「『倉庫』の天賦スキルは、行商人に最適だ。何せ荷馬車いっぱいの荷物を、荷馬車が無くても運べるからね!」
スキル鑑定士のそんな話を真に受け、その後たまたま聞いた、吟遊詩人の語る古の大商人に憧れた。
大陸をまたにかけての行商に始まり。
いずれは莫大な財産を築く。
そして各地に広大な土地と幾つもの商店を持ち、そして何人もの妻を侍らせる大商人。
ついには王都の一等地に住居を構え、お城の大臣達とも繋がりを持つ権力者へと成り上がる。
そんな夢を見て。
とりあえずとして職業は「商人」を名乗っていた気がする。
だが現実。
『まずはモンスター退治クエストをこなして元手となる資金を貯める』のところで挫折していたのを、ライアンのパーティに拾われた。
そしてそのまま15年。
ライアンのパーティで、なんとなくパーティの金策とかも任されていたが。
元はといえば全てはライアン達がクエストで稼いだ金だ。
「妻、か…」
正直…5人も妻を持つライアンを、羨ましいと思ったことは一度や二度ではない。
宿屋でも野営地でも、いつも決まって夜は俺1人が外に追い出される。
そして、なるべく遠くにいるように指示される。
毎晩開催されている「幹部会議」だけど。
夫と妻だけで、こもって何をしてるかなんて大体察しがついていた。
「よし、じゃあ俺も、嫁を探そう」
30過ぎて童貞でも『賢者』の獲得スキルが手に入らないことが証明された今、そんなものはさっさと捨ててしまうべきだと思う。
そのために必要なのは…
「金だな」
昔、描いていた夢とまでは行かなくても、『倉庫』スキルを活かした行商人業で、人並みの生活ができるくらいの金を稼ごう。
「そうすりゃあ、どっかの村娘で…俺のところに来てくれる娘がいるかもしれない」
町々をめぐり、嫁探しながら行商人をする。
これ、一石二鳥じゃね?
そして、妻を見つけて、一緒に行商の旅をする。
勇者ライアンが作っていたような美女ハーレムを…、今度は俺が作る…
とまでは行かなくてもいい。
1人でもいいから嫁が欲しい。
そのための人並みの生活基盤を築こう。
30を過ぎたこの身だが。
遅すぎるなんてことはない。
「『俺の残りの人生で、今が1番若い時』だもんな」
元手は5万マナ。
多くはないが、決して少なくもない。
そして、俺の新たなる人生の目標が定まった。