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【書籍1,2巻発売中】戦闘力ゼロの商人 ~元勇者パーティーの荷物持ちは地道に大商人の夢を追う~  作者: 3人目のどっぺる
第4章 キルケットオークション編(前編)〜キルケットの女剣士編〜
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02 売れない遺物売り

結論から言おう!


「やっぱり遺物は売れねぇな…」


俺たちが荷馬車広場デビューを果たしてから数日。

これまで遺物は1個も売れなかった。


ロロイはそんな状況に慣れているので、終始ニコニコしながら売り子をしていた。

だが、クラリスは凄まじく退屈そうだ。


「全然売れないな…」


「商材にもよるけど。超売れっ子でもない限りは、商人なんて待機してる時間の方が長い。…こんなもんだよ」


モーモー焼きを売っている時は、手がもう4本くらい欲しい気持ちだった。

今はモーモーの在庫も減っているし、モーモー焼きはあえてもうやめていた。


「遺物」と「薬草」という不人気商材の2本柱で勝負していることもあり、今現在、そもそも俺たちの荷馬車商店を覗きに来る客はかなり少ない。


ちなみに、この日の朝から売れたのはアルカナの薬草ペーストが2瓶だけだった。

売上にすると400マナ。


元手がただなので、俺はそれなりに儲かる。

だけど、アルカナの労力や原料となる薬草の値段などを考えると、全く喜べるような状況ではなかった。


「ロロイはめちゃくちゃ楽しいのですよ! 西門の近くで売っていた時に比べると、ロロイの遺物おたからを見に来てくれるお客さんがすごくたくさんいるのです!」


「たしかになぁ」


確かに、キルケット西の外門近くで露店を開いている時は。

通りかかる冒険者や街人たちは皆どこかへ行くという目的があったので、余分なものを見る余裕はほとんどなかったようだ。


それに対してこの行商広場は、そもそも買い物自体を目的にして訪れる人が多い。


だからこそ『この商人はどんな商品を扱っているのか?』と、興味本位で覗きにくる客も少しはいるのだ。


「それにその時は1人きりだったけど、今はアルバスとクラリスが隣にいるのです。もうそれだけでもロロイは楽しいのです」


「確かに1人きりよりは手持ち無沙汰にならないな」


こうして会話なんかして、少し暇を潰すこともできる。

だが、やはり遺物はなかなか売れない。


そもそも遺物というのは、基本的に実用的なものではない。

一部の研究者やコレクターなどが、研究や家の飾り付けのために、コレクション要素も込みで収集するというのがほとんどだろう。


基本的にはマナに余裕のある、物好き向けの商材だ。


故に、それを売るだけで生活を成り立たせるほどの稼ぎを得ることは、普通は困難だ。


それは初めからわかっていたので、この程度難航するのは想定内だった。



ちなみにだが。

勇者ライアンが発掘した『青紋剣サミラス』のような遺物は例外中の例外だ。


『青紋剣サミラス』のように、特殊な魔術によって保護され。2000年の時を超えてもなお、使用可能な状態で残されているような遺物は、凄まじく貴重な代物だ。


そういった遺物は、大抵は珍しくて強力なスキルが付いており。今でも十分実戦で活躍できる性能のものがほとんどだ。


そしてそういったスキル付きの遺物は、一個で10万マナを超えるような値が付く。


世のトレジャーハンターたちが富と名声を求めて探し求めるのは、主にこういった遺物だ。


『青紋剣サミラス』には。

水属性による遠隔攻撃のスキル『遠隔攻撃・水/斬』が付いていた。


遠隔攻撃系のスキルは、凄まじく貴重だ。


さらにそこに属性攻撃までが付いていたサミラスは、仮にキルケットで競売オークションに出していた場合、200万マナを超える値で売れていてもおかしくなかっただろう。


今回俺たちがアース遺跡群の地下5階層から持ち帰った遺物の中にも。『青紋剣サミラス』ほどではないにしろ、そういった特殊なスキルのついた遺物があるはずだ。


いや、絶対にある!

命懸けで遺跡に潜ったのだ。

あってくれないと困る。


詳しくは鑑定屋を見つけてスキル鑑定を行う必要があるのだが。

いずれにしろ、それは今ここで売るべきものではない。


然るべき場所で。

然るべき手順を踏んで。

然るべき相手に売る。


そうする必要がある。

そうすることで、最大限の価値をつけて売ることができる。


だから、今はこれでいいんだ。

暇な遺物売りでいい。


これは小手調べだ。


俺たちが「遺物商」である事を世間に認識させる。


今現在の、俺の目的はそれだった。



だがやはり…

周りの商人たちの目は冷たかった。


「『薬草』と『遺物ガラクタ』? そんなもの他で売れよ」


対面の道で武器を売っていた行商人が、わざわざ俺の店を覗きに来てそう吐き捨てて帰っていった。


「ロロイの遺物ロマンは、『ガラクタ』ではなく『おたから』なのです!? あと、アルバスの薬草はすっごい薬草なのですよ!?」


「やる気かあんた? 覚悟できてるんだろうな?」


ロロイが顔を真っ赤にして怒り出し。

クラリスが剣に手を添えて物騒なことを言い出した。


「お前ら、やめとけ」


だがまぁ。周りのそういう反応まで含めて、予想通りといえば予想通りだ。


俺だって。

出会ったばかりの頃は、ロロイに対して似たような印象を抱いていた。

それで同じようにロロイにキレられた覚えもある。


ただやはり、何の実績もない遺物商人に対する世間の反応が、俺の予想通りなのがわかってよかった。


まだまだ、本番はこれからだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ロロイは可愛ええのう…
[気になる点] 勇者が持ってる『青紋剣サミラス』が100万マナを超えるくらい。 1000万円かぁ。 微妙にお買い得?
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