01 荷馬車広場デビュー
オークション編(前編)〜キルケットの女剣士編〜
の1〜18話+余談1話(分離により一話増えました)
が、一通り形にできたので定期的に投稿していきます。
今回は主人公がひたすら商売を頑張る、地味めなお話になる予定です。
苦手な方はご容赦ください!
俺たちがアース遺跡群から帰還してから、1週間が過ぎた。
ロロイによる遺物の鑑定もひと段落して、俺は本格的に遺物を売り捌く方法を模索し始めていた。
ちなみにだが。
ロロイが元々持っていたガラクタ遺物たちは、そのほとんどが壁画の破片や、武具や生活品の破片の類だった。
一見するとただのガラクタだが「〇〇壁画の欠片」や「古代の木壺の欠片」や「錆びた古代鉄斧の欠片」など、名前が分かれば確かにお宝とも言えるものだ。
「ふふふふふん♪」
俺たちがロロイの遺物を、お宝だと認めると。
ロロイはもう、めちゃくちゃに嬉しそうだった。
「ロロイはもう。立派なトレジャーハンターなのです! これで、じい様にも胸を張れるのです」
→→→→→
信頼のおける鑑定士の情報を集めることと並行して。
俺は、荷馬車広場で遺物商店を開くことにした。
今回はロロイに加え、クラリスも遺物売りを手伝ってみたいとのことだったので、3人で広場へと向かう。
ちなみにバージェスは、キルケットの他の知り合いに呼ばれたとかで、しばらくそっちの仕事を手伝うことになりそうだと言っていた。
荷馬車広場は、営業時間が9時〜18時と決まっている。
そして売る側の商人は8時から広場に入場することができて、場所取りや開店準備を始めることができる。
その日、俺たちが商人の入場時間よりも少し早い7時50分ごろに広場前の道に到着すると、すでに多数の商人たちが列を作って並んでいた。
「あちゃー……」
俺たち3人は顔を見合わせた。
おそらくは広場の中でもより良い場所で店を開くために、朝早くからこうして並んでいるのだろう。
俺は荷馬車広場での商売に初参戦なので、この辺の感覚が全くわかっていなかったようだ。
「なんか、みんな大荷物なのです」
ロロイはかなりソワソワしている。
俺たち以外の商人は皆、荷馬車と共に待機していた。
荷馬車は、ウシャマという家畜化されたモンスターに引かせて動かす。
ウシャマというのは、四足歩行で尾っぽと首が長い、家畜化されて人懐っこくなったモンスターだ。
荷馬車広場に並ぶ他の行商人たちは皆、ウシャマに荷馬車を引かせていた。
手ぶらなのは俺たちだけ。
人力で移動可能なためだろうけど、荷馬車もアイテムとして認識された。
つまりは、俺の倉庫に収納可能だった。
昨日のうちに3人がかりで商品陳列を終えた荷馬車が、丸ごと俺の倉庫に入っている。
俺は特に問題なく「倉庫」への荷馬車の出し入れができたのだが、ロロイの「倉庫」には荷馬車は収納できなかった。
「俺は倉庫スキルを持ってないからよくわからないけど。人によってサイズに違いとかあるんだな」
クラリスは、そう言って首を傾げていた。
「やっぱり、アルバスの倉庫は特別製なのです!」
周りの商人達が荷馬車を出しっぱなしにしていることから考えても、やはり荷馬車を丸ごと入れられるようなサイズの俺の「倉庫」は珍しいのだろうか?
そんな事を考えているうちに時間になり、
他の商人たちと一緒に荷馬車行商広場へと入場した。
→→→→→
「そこのお前たち!」
俺が、荷馬車を倉庫から取り出す場所を見繕っていると。
広場の監視員らしい衛兵の二人組に声をかけられた。
「なんだ?」
「この行商広場は、荷馬車持ちの行商人専用だ」
「…知ってる」
「荷馬車も持ってないような貧乏商人が、ここで露店を開くことは認められていない! 他を当たれ」
なんか、前にも同じ事を言われて追い返された記憶があるな。
「ふふん。ロロイたちは立派な荷馬車持ちの行商人なのですよ!」
俺の横で、ロロイが胸を張る。
まだ場所の見極めをしている最中だったのだが。
まぁ、この流れでは致し方ない。
「倉庫取出」
そう唱えて。
俺はその場所に荷馬車を出現させた。
「な……」
デカデカと『行商許可証』も吊り下げてある俺の荷馬車が、衛兵2人の前に出現した。
「なにも問題はないだろう?」
「あ…、ああ…」
衛兵の2人は、首を傾げながら持ち場に戻っていった。
「アルバス。カッコいいのです!」
「本番はこれからだぞ? 看板娘のロロイ…とクリス」
「はい! なのです!」
「俺も、娘か…?」
クラリスは、今は普通に男装のクリスバージョンだ。
だが、俺にはすでに女の子にしか見えない。
「あ…悪かった」
「いや、別にいい」
こうして…
俺たちは、荷馬車広場デビューを果たし。
遺物売りを開始したのだった。
俺が見据えているのは。
4ヶ月後に開催される、年に一度のキルケット中央オークションだ。
そこへ、俺たちが命懸けでアース遺跡の最下層から持ち帰った貴重な遺物を出品する。
それにあたり、今から遺物の販売実績を積み上げて知名度を上げるのだ。




