表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/316

24 死地

アルバス達を追って行ったゴブリンの一団をやり過ごした後。


バージェスは物陰から踊り出し、数体のゴブリンを斬り殺しながらその部屋の中へと突進した。


ここまでは予定通り。


部屋の中には5体のボスゴブリンと、30〜40体のゴブリンが残っていた。


武器は、事前にアルバスの倉庫から取り出しておいた近接戦用のショートブレードの二刀流だ。


ちなみに愛用の大剣は、背中だ。


そして両手のショートブレードで次々にゴブリン達を斬りつけながら、ボスゴブリンとの間合を詰める。


「バージェス様!! なぜあなたがこんなところに!?」


魔障壁プロテクションの中から、リオラが叫ぶ。

だが、今のバージェスにリオラを構っている余裕はない。


『上位種のボスゴブリンを片付ければ。統率力が衰えて群れの規模が縮小する。そうなれば、追跡の手は弱まるし、巣のゴブリン共も散り散りになるはずだ』


パーティを二手に分ける前に、バージェスがアルバス達に言ったその言葉は…

半分本当で、半分嘘。


ボスゴブリンを討伐すると…

群れの統率力は低くなるが、一度放たれた追跡の手は緩まらない。


次の指令がないままでは、ひたすらアルバス達を追い続けるだろう。


「悪いな…本当のことを言うと、止められそうだったんでな…」


そのままバージェスは、ボスゴブリンを無視して次々に取り巻きのゴブリン達を斬り殺していった。

そしてあっという間に20体を超えるゴブリンを葬り去る。


取り巻きを失ったボスゴブリンの行動は単純だ。


再び、取り巻きを増やそうとする。


ぎぃぃーー! と5体のボスゴブリンが次々に甲高い声を上げ。

アルバス達に向けて放っていた追手を呼び戻し始めた。


「あぁ…これも予定通りだ」


アルバス達にとっては予定外だろうが。


これで、アルバス達に向けて放たれていた追手は全てこの部屋に戻ってくる。


リオラの魔障壁プロテクションの前に立ちはだかり、バージェスがニヤリと笑みを浮かべた。


「バージェス様! 今、魔障壁プロテクションを解きます! 中へ!」


だが、バージェスはリオラを無視した。

リオラの言葉には答えず、自分の言いたいことを伝える。


「アーク、リオラ。今から極大魔法剣を使う。巻き込まれないようになるべく俺の近くに寄っていろ。魔法剣でゴブリン共はほぼ壊滅するだろうが。多分、殺しきれない。だからアーク。そうなったらリオラを連れて俺の来た入り口の方へ走れ。そっちには俺の仲間がいる」


アークの手が、ピクリと動き。

閉じられていた目が、カッと見開かれた。


「へましやがって、このクソ坊主が。自分の大切なものくらい、ちゃんと自分で守れや」


バージェスがそう吐き捨てると。


毒に侵された身体で、アークが立ち上がった。


「感謝いたします。バージェス様」


「アーク、無茶よ! バージェス様も…護衛隊も無しに極大魔法剣を放つなど。危険すぎます!」


アルバスたちを追って行ったゴブリンだけではなく、横穴からも次々とゴブリンが這いずり出てきていた。

その数は、すでにゆうに100を超えている。


「この死地に、活路があるとすればそれだけだろう?」


そう言って…

バージェスは2本のショートブレードを投げ捨てた。


そして、背にした大剣を抜き。

高々と天井に向かって掲げた。


「さて…やるか」


飛びかかってくるゴブリンを、蹴り飛ばして振り払いながら。

バージェスは詠唱に入った。


「天地に満ちる光の精霊よ…我が呼び声に応え、我が剣へと集え。我ら矮小なる人の子へ、その御力を示したまえ」


バージェスの大剣が光を放ち始め、ゴブリン達がわずかに怯んだ。


バージェスはそのまま。

高く掲げたその大剣を逆手に持ち換え、深々と地面に突き立てた。


「極大魔法剣! 天地神明陣てんちしんめいじん!」


突き立てられた剣を中心に地面を光の亀裂が駆け巡り、一瞬にしてバージェスを中心とした魔法陣を描いた。


その、部屋全体を包み込んだ魔法陣から光の竜が溢れ出し、ゴブリンの身体を引き裂きながら上へと立ち昇り始める。


「ギギィっ!」


不穏な大技の気配を察して。

一部のゴブリンが、奇声を上げながらバージェスへと飛びかかってきた。


無防備なバージェスの衣服に取りつき、噛みつき、棍棒で殴りつける。


だが…


一度起動し始めた極大魔法剣は、もはや止まらない。


「バージェス様!!」


「ぐ…ぬうぅ…」


全身にゴブリンをまとわりつかせながら。

バージェスがさらに深く地面に剣を突き立てる。


「失せろ…薄汚ぇモンスターども! 俺の教え子と、リオラ姫に。その穢らわしい手で触れるな」


溢れ出た光がゴブリン達を包み込み。


凄まじい轟音と共に。


弾け飛んだ。



そして…


光が消えた後に残ったのは…


バージェスにまとわりつく数体のゴブリンと、リオラとアーク。

そして光の魔法陣に切り裂かれ、ぐちゃぐちゃになったおびただしい数のゴブリンの死骸だった。


リオラの魔障壁プロテクションは、バージェスの魔法剣の衝撃で弾け飛んでしまっていた。



「うおおおぉぉぉーー!」


アークが立ち上がり、リオラの手を引いて出入り口へと走る。


バージェスは、ぐらりとよろめいて地面に倒れ込み。

そして生き残りの数体のゴブリンによって、めったうちにされていた。


全ての力を使い果たし、もはや抵抗することもできない。


「アーク! バージェス様が」


「まずはリオラ様を!」


アークはリオラの言葉に耳を貸さず、走り抜けようとする。


が…

向かっていた出入り口から現れた、更なるゴブリンに襲いかかられて地面に倒れ伏した。


「ぐぅっ!」


リオラが再び魔障壁プロテクションを出現させようとするが、ゴブリンに殴り飛ばされて魔術が中断させられてしまう。


「きゃぁぁっ!?」


そして、そのままゴブリンたちに組み敷かれ。

もはや身動きがとれなくなってしまう。


ゴブリンの爪がリオラの背中に伸び。

その衣服を引き裂いた。


「リオラ様っ!?」


アークもまた。

毒に侵された体を、ゴブリンたちに打ち据えられ。

血を吐きながら、無様に地面を這いずっていた。


もはやこれまで…


リオラとアークを、再び絶望感が襲ったその時。


「どおりゃぁぁあーーっ!」

「バージェス! 生きてるかっ!?」


広間に走り込むゴブリン達を蹴散らしながら。


ロロイとクリスがその部屋に乱入してきたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] バージェスカッコイイやないか(泣) [一言] こんな渋カッコイイおっさん冒険者がモテナイわけはない!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ