表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/316

22 アークとリオラの絶望

剣士アークは絶望していた。


その場所は、アース遺跡群。

地下3階層の迷宮のど真ん中。


その中の、ゴブリンの巣穴と化した一部屋に。

彼は、リオラと共に取り残されていた。


支援魔術師のリオラ。

彼の、命よりも大切な人。


もう2日間。

飲まず食わずでここで助けを待っている。


大商人ノッポイの遺跡探索部隊に加わって、この遺跡に潜ったのだが。探索隊がゴブリンの巣穴を突いてしまい戦闘になってしまった。


こちらの人員も多かったので、ゴブリンだけならばどうと言うことのない相手だった。


そのはずだったのだが…


戦闘中にノッポイの側近が誤って発動させた罠で、4体の迷宮の魔物が出現した。


そして、状況が不利だと見たノッポイ達は。アークとリオラに魔物達の足止めを指示し、そのまま先に行ってしまった。


モンスターの中に取り残され、逃げることもできないその戦いでアークは深手と毒を負い、すでに身動きが取れない状態になっていた。


最後の力を振り絞り、迷宮の魔物を全て撃退したが。

まだゴブリンが残っていた。


その時には。

流血と、全身に回った毒とで彼はもう戦えなくなっていた。


アークが力尽きてしまっては、支援魔術師であるリオラにはゴブリンを撃退する力はない。


それから、2日間。

彼らはリオラの魔障壁プロテクションの中で籠城していた。


「申し訳…ございません」


「喋らないでアーク。傷が……」


手持ちの回復薬は。ここまでの工程と、2日前の迷宮の魔物との戦闘で使い果たしてしまっていた。


「戦闘員は、戦闘員らしく身軽でいなさいっポイ!」


と言われ。


手持ちの資材のほとんどをノッポイの管理物とされてしまった。

そのため、ろくな資材を持ち歩けていなかった。


リオラの張った魔障壁プロテクションの外側では、ゴブリン達が下卑た顔をしながら今か今かとその時を待っている。



リオラは。

魔力回復薬の最後のひと瓶を飲み干した。


迷宮の探索を終えるか、もしくは補給の必要が出たならば…

ノッポイ達はまたここを通るかもしれない。


そんな低い可能性に一縷の望みをかけて。

リオラとアークは、ここで籠城していた。


籠城が可能な期間は、リオラの魔法力が尽きて魔障壁プロテクションが消えるまで。


「魔力回復薬を飲んだから……あと、2時間くらいは持つわ」


「今のが……最後のひと瓶……ですか……」


「ええ、そうです」


もし、リオラの魔法力が尽きて魔障壁プロテクションが消えれば。

その時には2日間お預けを食らっていたゴブリンたちが、一斉に飛びかかってくるだろう。


その時、リオラは…


「アーク……最後の力は残っていますか?」


「……ええ」


「もし、本当に。私の魔法力が尽きる時がきたら。その前に、私の首を刎ねてください」


「う……」


「このような、低級モンスターたちの慰み者になって僅かばかりの時を生き延びるくらいなら、私は純潔なままの死を選びます」


「うっ……俺には……そんなことは……」


「お願いします。あなたにしか頼めないことです。それとも、私にゴブリンの慰み者になれと言うのですか?」


「うう……」


アークが。

使い慣れたロングソードを握りしめた。


刻一刻と、静かに、その時が近づきつつあった。


その時。



「ああああーー!!! ゴブリンの巣穴ーーー!! 怖いーーー!?」


死の迷宮に似つかわしくない。

異様に元気な声が響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ