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21 アース遺跡群の探索④

アース遺跡の地下3階層へと続く斜め穴から、耳をつんざくような悲鳴が聞こえてきた。


それと同時に、何か大きな音がして…

そして静かになった。


「な、なんだ……」


ノッポイに雇われた冒険者達が、色めき立っている。


「お前、見てこいよ」


「いや、お前が行けよ」


「ざけんな、お前が行け」


なんか、押し付け合っている。


俺は、ロロイの手を引いてその場から逃げ出しかけていたが…

やめた。


「じゃあ、俺たちが見に行ってきてやるよ。孫請けとして雇ってくれ。ちなみに500マナで手を打とう」


「じゃ、それで頼む」


なんか、意外と簡単に話がまとまった。



→→→→→



バージェスとクリスを呼び寄せて、俺達は遺跡地下3階層への斜め穴を降り始めた。


身をかがめながらでないと通れない。


「頭、気をつけろよ…」


地下2層階層までの砂岩でできた人工的な遺跡とは違い、ゴツゴツとした岩肌と土塊が剥き出しになっている岩の亀裂だ。


「さっきの悲鳴だけど。音の反響具合からしてかなり遠くだ。声と音の具合からして、多分落下系の罠にかかって墜落したんだと思う」


と、小声で俺の推測を話した。


「なるほど。つまり、その罠にさえ気をつければ特に危険はないってことだな」


そんな話をしていたら、じきに斜め穴を降り切った。


そこでは、土塊でできた狭い通路が奥へと続いていた。

そこからは入り組んだ狭い通路と、大小様々な広間を組み合わせた大迷宮が広がっている。


当然ここは正規の入口でない。

何らかの原因でできた岩の亀裂が、偶然にここにつながったのだろう。


さて、これから迷宮攻略の始まりだ。



「ん?」


その時、横から何か生暖かい風を感じたので。

そちらに向けて松明をかざしてみた。


「!!」


そこには。巨大なモーモーの顔をした化け物がいた。

人間のような二足歩行をしているが、サイズは普通の人間の2倍はある。


「ミノタウロス!」


そいつが、巨大な棍棒を振り上げ。

いままさに、俺に向かって振り下ろそうとしていた。


「おおおっ!」


間にバージェスが割って入り。

その棍棒の一撃を受けた。


「アルバスてめぇっ! 何が危険はない、だ!」


だが、受けとめきれずに弾き飛ばされてしまう。


狭い洞窟の中で、いつもの大剣ではなく山刀を使っていることもあり、完全に力負けした形だ。


バージェスは、俺にぶつかり。

そのまま俺ごと吹き飛ばされた。


「アルバス! バージェス!」


ロロイが身構えた。


「やめろロロイ! お前じゃかなわねぇ! 回避に徹しろ!」


バージェスがそう叫び。

ロロイは殲滅から、回避へと戦術を切り替えた。


ロロイはミノタウロスの棍棒の攻撃を、ひょいひょいとかわしまくる。


スピードではロロイが上だ。


だが、ロロイの小柄な身体では。

一撃でももらえば、だぶんそれでもう終わりだ。


「バージェス……立てるか?」


「なんとかな…」


「2層の広場まで後退して、そこでやろう……できるか?」


俺の意図は、バージェスにすぐに伝わったようだ。


バージェスは大きく頷き。

ミノタウロスに向かって駆け出した。


「ロロイちゃん! クリスと一緒に、アルバスを連れてさっきの広場まで戻れ!」


ロロイとバージェスが入れ替わった。

今度は、バージェスがミノタウロスの相手をする。


俺はクリスとロロイに肩をかりながら斜め穴を登った。


登り切った先で。

俺を雇った冒険者達が「どうだった?」「あの、1番デカい旦那は?」と覗き込んできた。


「離れてろ! すぐわかるから」


そしてその直後。

斜め穴からバージェスが飛び出してきて…


その後ろから、ぬぬぬ、とミノタウロスが這いずり出てきた。


「ぎゃゃゃぁぁぁあーーーー!」


冒険者達の悲鳴が響く。


「なんだこの化け物は!」


迷宮の魔物「ミノタウロス」

古代文明の罠などによく利用される、人工的に作り出されたモンスターだ。


ライアン達はその辺の中級モンスターと同レベルに扱っていたが…間違いなく上級クラスのモンスター。

普通の冒険者にとってはかなりの脅威でしかないはずだ。


ミノタウロスの振り回す棍棒で、冒険者達が次々と吹っ飛ばされて致命傷を負っている。



倉庫取出デロス!」

俺はバージェスに駆け寄り、そのスキル発動の呪文を唱えた。


そして、そこに出現したのは…

バージェス愛用の大剣。


「うぉぉぉおおおおおおーーーっ!」


瞬時に大剣を手にして、脇に構えて全力の攻撃態勢をとるバージェス。

狭い通路でなく大広間であれば、この愛用の大剣が使える。


バージェスの大剣の刀身から炎が噴き出し、剣全体を包み込んだ。


大火炎テラフレア斬撃ソード!」


それは、魔術系の書物などにも載っている火属性魔法剣の大技。


横凪に振り抜かれたその炎の斬撃は…

一撃でミノタウロスの身体を真っ二つに切り裂いていた。


そして…

ミノタウロスは、倒れ伏し。

ボロボロと砕け散りながら消滅していった。


「バージェス! カッコいいのです!」


ロロイに拍手され。

バージェスは全力でデレ始めた。


周りの冒険者達は、呆気に取られてその光景を見ていた。


正直、俺もだ。


迷宮の魔物は門番だ。

四大魔法属性の各属性を弱点とするよう設定されており、その資格のない者の侵入を阻む。


門番「ミノタウロス」の弱点は、火。


事前の打ち合わせで何度か伝えていたそのことを、バージェスがきちんと覚えてくれていてよかったが…


バージェスが上級魔法の魔法剣を扱えるなんて思ってもいなかった。



迷宮の魔物は。

基本的に、俺たちだけが迷宮を進むのであれば遭遇することはないだろう。

以前ライアン達と潜った際に、俺は迷宮の魔物を発生させる罠のある場所と、それを避けるルートを把握していた。


だが、先行者がいる場合はその限りではない。

おそらく、今のミノタウロスはノッポイの探索部隊の誰かが、罠を発動させて出現させたものだろう。


「準備はそこそこにしてでも、ノッポイより先行したほうが良かったんじゃないか?」


「いや、準備不足は地獄を見るって言っただろ? 実際、焦って出発してたら、ミノタウロスの対処法まで伝えられてなかったぞ」


「だから、早く出てたら。そもそもあんな化け物に遭遇しなかったってことだろ?」


「だから……」



「何でもいいから! ロロイは早く先に行きたいのです!」


そう言って。

喧嘩する俺とバージェスを無視して、ロロイが斜め穴の方に歩き出した。


「まぁ、そうだな。行くか」


俺たちは、いまだに若干ビビっている冒険者達を放っておいて、再び地下3階層へと向かった。


「ノッポイの旦那から『誰も通すなっぽい』って言われてるんでな」

とは、もう誰も言ってこなかった。


一応、偵察を請け負った分の500マナは、キチンともらっておいた。

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