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20 アース遺跡群の探索③

アース遺跡群の地下2階層の最奥。

地下3階層へと続く斜め穴の亀裂がぽっかりと口を開けているその広間には、冒険者がたむろしていた。


「おそらくは、商人ノッポイの遺跡探索トレジャーハント部隊だな」


俺たちのパーティは、少し離れた場所からその部隊の様子を伺っていた。


たいまつのあかりに照らされたその大広間には、10名ほどの冒険者がたむろしているようだ。


おそらくはここをベースキャンプとして設定して、先行部隊はこの先の迷宮攻略の真っ最中なのだろう。

安全地帯を確保して、そこを拠点にして迷宮の攻略を進めるというのは、大規模な探索ではよく使われる手だ。


だが。

俺に言わせれば、手前すぎる。


道を知っていても通過に4日はかかるほどの、この先の迷宮の広大さを知らないのだから、仕方がないのかも知れないが。


「それじゃ、1ヶ月かかっても攻略できないぞ…」


時には、全補給物資と共に迷宮に突入するような判断も必要になる。

勇者パーティは、そうやって数々の遺跡を攻略して来た。


「随分な大部隊だな」


バージェスの言葉で再度相手の状況を確かめると、車輪付きで小型の人力荷車が5台ほど見えた。


「わざわざ倉庫スキル持ちを集めてたはずなのに。何であんなもの持ち込んでるんだ?」


俺は、純粋にそれが疑問だった。


「入り切らない分の物資の運搬用、ってことだろ?」


「そういうもんかね」


「そうだろ? そうでなければ、本隊と離れてここで荷車が待機してる意味がわからん」


正直、俺は他の倉庫スキル持ちとそこまで深く関わったことがなかったので、普通の倉庫にどれだけの物が入れられるのかの感覚がいまいちよくわからなかった。


本当に。

バージェスの言うように、倉庫スキルに物資が入り切らないと言う理由で、荷車を持ち込んでいるのなら。

地下3階層への狭い斜め穴の奥には行けず、ここで待機しているのも頷ける。

おそらく、亀裂の縦幅が狭いために荷車を通せないのだろう。


俺の倉庫なら。

あのくらいの荷車なら丸ごと入れてしまえる。

サイズが大きくても、人力で移動可能なものならばしまえる。


ロロイにはできるかと聞いてみると。

「絶対にムリ! なのです!」

とのことだった。


ロロイの倉庫は、かなり小さいように思えているが、やはり俺の「倉庫」の方が、一般的なサイズに比べて大きいのだろうか。


それならそれで、もしかしたら俺だけの商売のネタにできるかもしれない。



「それで、あいつらどうするんだよ?」


クリスは、既に抜刀している。


「待て待て。人間同士だぞ? そう簡単におっ始めるなよ」


そして、バージェスに咎められている。

こういう時は、バージェスは普通に常識的だ。


「でも……吟遊詩人の物語とかだと、悪い商人は決まってほかのトレジャーハンターの邪魔をしてくるぞ。やられる前にやらないと……」


クリスは、随分と物騒な思考回路をしてる。

まぁ、ライアンたちも似たような感じだったが。


「俺が行って、交渉してくる」


そう言って、俺は1人で歩みを進めた。



→→→→→



「ノッポイの旦那から、『誰も通すなっポイ』って言われてるんでな」


「悪いけど、それ以上近づいたらぶっ殺すぞ?」


荒くれ者とほとんど変わらないような。人相の悪い冒険者にそう脅された。


ダメか……。


「1人500マナ払う。それでどうだ?」


「ダメだって言ってんだろーが!」

「耳ついてんのかお前!?」


値段を釣り上げてみてもダメだった。


見たところ、全員それなりの使い手っぽい。

バージェスやスキル持ちのロロイがいるとは言え。

こちらの戦闘員3人で、こいつら10人と渡り合える気はしない。


主人公の仲間が超最強チート集団で。

数で勝る他の冒険者をなぜかボコボコにできるってのは、ファンタジーの中だけだ。



「どうするのです?」


「そうだなぁ、どうしようかなぁ……えっ?」


難航する交渉の場に、なぜかロロイが乱入してきていた。


ちょっとばかり。

いやかなり…

冒険者達の目つきが変わった気する。


「ロロイ。何で出てきたんだ? ちょっと下がってろ」


「ロロイはトレジャーハントがしたいのです! アルバスは、それをお願いしにきたのでしょ? ロロイも一緒にお願いするのです!」


そう言って、冒険者達に『お願い』し始めた。


荒くれ者の冒険者たちも。

ロロイみたいに、若くて可愛い女探検家にお願いされたら。

簡単に許しちゃうかもしれない……。


「って、んなわけあるか!」


モルト町の、のんびりとした奥手な冒険者達とはわけが違う。


キルケットの冒険者はピンからキリまでいるが、みんなギンギンに尖ってる。


高潔で純粋に名声を求めるようなやつから。

その逆に、マナと自らの欲望のためならば殺しを含め何でもするような奴らまで。


「そうだなぁ。お嬢ちゃんの身体で、俺達にトレジャーハントをさせてくれるって言うんなら、考えてみてやってもいいぜ」


こいつらの人相の悪さは、完全に後者だ。


微妙にジョークを交えてくるあたり、ちょっと悪に染まりきれていない感もあるが…


「ロロイの身体でトレジャーハント!? そんなことができるのですか? どうやるのですか!?」


「ぐへへ、まずは服を少しずつ脱いでだな…」


「うんうん」


そう言って、素直に服を脱ぎ始めるロロイ。


トレジャーハントと聞くと、かなり思考回路が鈍くなるのかもしれない。


「ぐへへ」


「次はその薄いのも脱いじゃってだなぁ」


「ふむふむ…」


変態冒険者達は、超上機嫌だ。


「やめろっての!」


俺は思わず。


『それ以上近づくな』と言われていたラインを超えて、冒険者に空の封霊石を投げつけていた。


すると次の瞬間。

冒険者達が一斉に武器を抜いた。


「あ……」


さっきまでの、少しふざけた雰囲気は一変していた。


「忠告はしてあったぜ。兄ちゃん、悪く思うなよ」


「これも仕事なんでね」


「にいちゃんは即行で地獄行きだが。連れのお嬢ちゃんの方は、いったん天国に連れてってやるよ、ぐへへ」


「ちなみに、俺らも一緒にな!」


冒険者なんて。

スケベなやつばかりだ。


「クリスの言ってた通り。悪い商人の仲間は、悪い冒険者なのです!」


流石に状況を理解したロロイがカイザーナックルを「倉庫取出デロス」して身構えた。


だが、いくらロロイでも分が悪い。


状況を察したバージェス達が走ってくる音が聞こえたが、それでもまだ分が悪い。



どうやってこの場を切り抜けるか?


切り抜けたとしてその後どうするか?


そんなことが頭を駆け巡っていた、その時。



「ぎゃぁぁぁぁーーーーっっ!!!」


という悲鳴が、広場の奥の斜め穴から聞こえてきた。

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