17 封霊石とキズナ石
唐突だが、「封霊石」という石がある。
半透明な、円盤型をした小さな石だ。
それは「マナ」と呼ばれる生命エネルギーを封じ込めることのできる石である。
マナは。モンスターにも人間にも宿っていて。
死ぬと身体から漏れ出る。
俺達の国では、死んだ生き物から抜け出したマナを封霊石の中に封じ込めて、それを通貨として利用していた。
その内包するマナの容量に応じて、封霊石の価値が決まる。
5マナ分のマナを封じ込めてある封霊石。
100マナ分のマナを封じ込めてある封霊石。
1000マナ分のマナを封じ込めてある封霊石。
そんな感じ。
そして封霊石毎に、最大容量というものがある。
そのため、100マナを支払うのに。満タン容量で30マナの石と、20マナの石と、50マナの石を1つずつ出して支払ったりする。
ほかの方法として。
200マナ支払うのに、250/500の封霊石から。必要分の200マナだけを相手の持つ封霊石に移したりする場合もある。
そんな感じ。
それならば。
自分の身体からマナを抜き出して、それを通貨として利用できないか?
みたいなことを企てる連中もいたが…
基本的には無理だ。
生きている人間のマナを封霊石に封じ込めた場合。
その本人が生きている限りは、それは通常の封霊石とは違う生者独特の輝きを放つ別物の石になる。
その状態になった封霊石は「キズナ石」と呼ばれ。その本体とのつながりは、本体が生きている限りは消えることはない。
そしてその『キズナ石に入っている生きた人間のマナ』は通貨としては使用できないことになっている。
その代わり。
そのキズナ石には、別の利用方法がある。
危険地帯に向かう際。
自身のマナを込めたキズナ石を、安全地帯にいる者に預けておくのだ。
そうしておくことで。
長期間のダンジョン探索などの際に、潜っている者達がまだ挑戦を続けているのか、もしくは既に死んでいるのかを外にいる者が知ることができる。
キズナ石の輝きが消え。
ただのマナ入りの封霊石になった時が、その石にマナを込めた者が死んだ時だ。
俺たちは。
各々のマナを込めたキズナ石を、孤児院のミトラに預けて出発した。
ロロイは、それをするのが初めてだったらしく。
とても興味深そうに自分のマナを込めたキズナ石を見ていた。
バージェスは、ミトラに愛の言葉を囁きながら手渡そうとしたが、クリスに奪われてクリス経由で手渡していた。
「目が見えないのに、渡す意味があるのか?」
不躾だが、大事なことなので俺はミトラにそう質問した。
「ええ。目が見えない分、周囲のマナを感じ取る力がありますので…。どのキズナ石が誰のものかも、キチンとわかります」
一部の白魔術師などが持つという、生命を感知するスキルのことだろうか。
詳しいことはよく分からなかったが。わかるのであれば問題ないだろう。
バージェスも、ロロイも、俺も。
ミトラにとってはほぼ無関係の他人だ。
ミトラがクリスのキズナ石の輝きを感じ取れるのであれば、それで問題ない。
ちなみに。
ヤック村を出発する際。
俺はアルカナと、互いのマナを込めたキズナ石を交換していた。
だから俺に何かあれば。それでアルカナにはそれが伝わるようになっている。
もろに。
後付けっぽい設定で申し訳ないが…な。




