16 出立と、資材の目録
出発の日。
俺達はクリスの孤児院に集まっていた。
そこそこの広さの庭に。
遺跡探索に持っていく資材を、いったん全て倉庫から出して並べた。
そして。
俺たちは、地下へと持ち込む資材の確認を始めた。
まずは飲み水。
各自の手持ちの皮袋水筒のほかに。
200Lの水が入ったタルが15本。約3,000L分だ。
戦闘で動き回って汗をかき、多めに見積もって1日に4Lほど水を飲んだしとして…4人でも半年くらいはもつ。
そして食料。
各種肉、野菜、果物のほか。豆や穀物、山菜やきのこ類なども用意した。
塩や砂糖などの調味料も重要だ。
長期間のダンジョン潜行で食べる物が偏りすぎると、なぜか体調に異変をきたしていくというのは、ライアンのパーティで俺が学んだことだった。
次に、支援アイテム。
体力回復薬。魔力回復薬。アルカナの薬草セット。
戦闘用の罠各種のほか、閃光玉などの戦闘支援アイテムも忘れずに用意した。
そして、
たいまつや火打ち石。油や布、ロープ、魔法時計半年分など。
ダンジョン探索に必要な用具を一通り。予備もふんだんに揃えた。
ちなみに「魔法時計」とは、起動させてから1日で消えるように調整されたぼんやりと光る球で、ダンジョンなどでの時計の代わりになる代物だ。
あとは、調理用具や4人分の寝具など。
俺はそれらの品を検品し「倉庫収納」と唱えて次々に「倉庫」に収納していった。
「アルバスの倉庫は。超特大サイズなのです!」
ロロイは、それを見て子供みたいにはしゃいでいた。
まぁ、17歳は。
俺から見たら普通に子供なんだけどな。
義理だが。娘のプリンは16歳だ。
ちなみにいくらかの資材は、念のためロロイの方の倉庫にも入れてもらった。
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「ううう…ロロイの遺物……」
遺跡探索のための物資を「倉庫」に入れるため。
もともとロロイの倉庫に入っていた遺物たちは孤児院に置いていかれることになった。
ガラガラガラガラと、後から後からたくさん出てくる。
きっちり荷馬車1台分くらいの容量の、ロロイの遺物コレクションが放出された。
「ミトラさん…。ロロイの遺物を、よろしくです」
孤児院に残るクリスの姉に、ロロイは涙ながらに遺物を託していた。
3ヶ月間ここで寝泊まりしていたバージェスに加え。
バージェス達とパーティを組んでしばらくしてからは、ロロイと俺も孤児院の一室を借りてお世話になっていた。
クリスの姉のミトラは。盲目のため、ほとんど部屋から出て来ないのだが…
ロロイはいつの間にかそのミトラとも仲良しになっているようだった。
「触るのはいいです! 売るのもいいです! そしてちょっとなら壊すのもいいです! でも、捨てないでください!」
その縛りは。
正直、意味不明だった。
あとちなみに。
ロロイのスリット深めで太ももチラ見えの武闘着は、ダンジョン探索には向かないので、普通のズボン型に着替えてもらった。
バージェスはとても残念がっていた。
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「姉さん。行ってくるよ」
クリスは。ミトラにそう言って歩みを進めた。
目から額にかけて巻かれた目隠しで、ミトラの表情は読み取れなかったが…
おそらくは、弟を心配をしているのだろう。
「ええ、行ってらっしゃい。気をつけて…」
その拳が、強く握られて震えていた。
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「ミトラさん。行って参ります! クリスのことは、俺に任せてください!」
そう言って、ミトラの手を握ろうとしたバージェスは。
うまいこと避けられてよろめいていた。
おいおいマジかお前。
相手は盲目だぞ?
急に先行きが不安になってきたが。
とにかくその日。
俺たちは本格的な長期の遺跡探索のために、アース遺跡群へと出発したのだった。