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15 ライバル商人出現!?

バージェスは、クエストで稼いだマナで、食料、水を入れるための皮袋、そして支援アイテムなんかを惜しげもなく買い揃えていった。


たぶんだけど、自分の蓄えにも手をつけているっぽい。


「なんでそんなに入れ込むんだ?」


俺はバージェスに質問した。

まぁどうせ、ロロイにご執心だって事なんだろうけど…


遺跡探索トレジャーハントはロマン、だぜ!?」


ナイスな顔でそう答えるバージェス。

ロロイの影響をモロに受けているっぽかった。


「まぁなんだ。若い奴らが、本気で夢を追ってる姿を見るとよぉ。俺にできることくらいは協力してやりたいって気持ちになるんだよ。ロロイちゃんだけじゃなく、クリスの野郎もトレジャーハントに興味津々だしな」


そしてなんか、普通にいいことを言い始めた。


クリスも、ロロイにご執心ということか…


「あんただって、まだ37だろ? 1発当てようと思えば、まだまだやれるだろ」


俺も、30過ぎてから古巣のパーティを追い出されて、今更ながらに大商人を目指し始めてるわけだし。


「俺は、もういいんだよ」


「そうか」


まぁ、本人がそれでいいならそれでいいんだろう。



「バージェス。水の保管用で買うなら皮袋よりタルだ。水は、満タンにしたタルを倉庫に保管しておいて。必要に応じてタルごと出して皮袋に移せばいい」


なら今は、この遺跡探索トレジャーハントを成功させることを考えよう。


「食料も。マナさえ足りれば牧場から直接大量買いの交渉をする方が安上がりだ」


俺はバージェスたちに『4人が半年間は生きられるくらいの食糧と水の確保』を指示した。


倉庫に入れておけば腐らないし、多過ぎて困ることはない。


さらには、予備の武具。

いつなんどき、武器が破損するとも限らないし。

モンスターと戦っているうちにロストする可能性もある。

できれば、2〜3セットくらいは予備の武具を持っておいた方がいいというのが、俺の意見だった。


バージェスたちは、素直に従って準備を進めていった。


もしかしたらモンスターに阻まれて3日で逃げ帰るかもしれないが。


場合によっては悪いアクシデントが起きて、1ヶ月でも2ヶ月でも、食料が続く限り地下深くで篭城しなくてはならなくなるかもしれない。


ダンジョン探索の準備は、どれだけしてもしすぎるという事はない。


勇者ライアンのパーティで15年を過ごし、俺はその辺りのことだけは人並みに学んでいた。


バージェスはそんな準備を進めながらも、度々クリスとロロイを連れて中級〜上級のクエストに出かけていった。

そして、少なくない額の報酬金を得てきていた。


バージェスは、冒険者としてはめちゃくちゃ優秀だった。



ちなみに勇者ライアンのパーティで魔界ダンジョンに潜った時の準備は、『7人が2年間は生きられるだけの食糧と水』だった。


結果的に、ライアン達は約1年で魔界ダンジョンを攻略したので、大半は余ってヤック村でライアン達に返した。

元々はライアン達が稼いだマナで買ったものなので、まぁ当然だ。


ただ。つまりは備蓄に余裕があるのとないのとではダンジョン攻略の際の心の余裕が全く違うという話だ。

準備はしすぎるくらい万全にしておくに越したことはない。


ちなみにだが、魔界ダンジョンの攻略に費やしたのは、行き道に9ヶ月、帰り道に3ヶ月だった。



→→→→→



買い物を続けながらロロイは大興奮していた。


「トレジャーハント! ロマン! アーティファクト! 『無尽太陽オメガ・サン』」


口癖のようにそれを繰り返しているが…


「お肉、野菜、果物!? いい匂い!」

いつの間に食べ物の話に移っている。


その度に、バージェスは遺跡探索のストック用とは別に、ロロイに食べ物を買ってやっていた。


典型的な餌付けだ。

胃袋を掴んで籠絡しようという魂胆が見え見えだった。


だか、そんなバージェスの努力(?)とは裏腹に、ロロイとクリスは打ち解けていき、たまに2人きりで出かけたりするようになっていた。


ああ。キューピッド・バージェス、哀れなり。



→→→→→



そんなある日、順調に長期探索のための準備を整えていく俺たちの耳に少し不穏な噂が入ってきた


「王都からきた大商人ノッポイが、アース遺跡群の攻略のために『倉庫』スキル持ちの冒険者を集めているらしい」


という噂だ。


俺が資金調達の一環で焼肉露店を開いている時、そんな話が聞こえてきた。


その「ノッポイ」と言う名前には聞き覚えがあった。


先日俺が、バージェスと一緒に、コドリスの牧場主に対して大量買い値引きの商談をしている際のことだ。


「こいつらの1.5倍の額を出す」と言ってきた金持ちの使者がいて。牧場主は、俺たちとの交渉中にもかかわらずそっちで即決してしまった。

で、その使者の主人が確か商人ノッポイだった。



→→→→→



「ムカつく野郎だな。マナに物を言わせて資材も人材もガンガン集めてやがる。これで結局先を越されたりなんかしたら、さらに腹が立って仕方がねぇだろうな!」


夜、クリスの孤児院に集まって打ち合わせをしている時、バージェスが珍しく至極真っ当なことを言っていた。


「そうです。ロロイ達が先なのです!」


ロロイも同調するが、あとか先かで言えばアース遺跡群なんてのは、はるかな昔から採掘者がいたはずだけどな。


「だが、焦りは禁物だぞ。焦って準備不足のまま潜行したら、マジで地獄を見るぞ」


と言うか、多分このメンバーだったらバージェス以外は普通に死ぬ。


「これは、俺の経験に基づくアドバイスだ」


俺がそう言うと3人は神妙な顔つきで聞いてくれていた。


なんていい奴らなんだ。


ライアンたちは、準備関連はかなりいい加減だった。

戦闘力が凄まじく高かったので、そのおかげでなんとか切り抜けてこられただけだというような場面が多々あった。


だから街に寄る度に、俺は必死になって食料や支援アイテムなんかを買い集めたもんだ。


いつしか、俺がそれをやるのが当然みたいな空気になっていたけど。まぁ、戦闘で全く貢献できてないんだから仕方がない。


何せ俺、荷物持ちだったからな!


メンバー達が宝石やら流行りの服やら、掘り出し物の骨董品だとかを楽しく買い回っている間、俺は必死に街を駆けずり回って次の冒険やクエストに向けての準備を進めていた。


モンスターを解体したり、不要な素材を売って資金を調達するのもそのタイミングだ。


お陰様で俺のモンスター解体速度と腕は、その辺の超が付く熟練冒険者と並べても遜色ないレベルだ。


俺がモンスターを捌く姿を見たやつは俺のことを熟練の冒険者だと勘違いするだろう。


1体たりとも自分では討伐してないんだけどな!



ところで、遺跡やダンジョンへの潜行では、準備不足でこれ以上進むのはキツい状況になったら、諦めて引き返すような判断も必要だ。


焦って死んだら元も子もない。


ライアンはその辺の往生際が最悪なまでに悪かったので俺はそれで何度も死にかけた。


ライアンは俺の話など全く聞かなかったが。


少しでも俺の意見を聞いてくれる今のメンバーには、なんとしてもちゃんとして、ちゃんと生き残って欲しい。



俺たちが戦術関連の打ち合わせや資材の準備を終えて、遺跡に向けて出発をしたのはそれから7日後。


ノッポイの部隊が出発したのは、俺たちの4日前だった。

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