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14 遺跡探索をするということ

「やはり。アース遺跡の1階層あたりじゃ、ほとんど売り物になりそうな遺物おたからは残ってないな」


クリスが育ったという孤児院の食堂にて。

俺たちは本格的な遺跡探索を行うための打ち合わせを行なっていた。


バージェスは、この孤児院にて、クリスの部屋を間借りして寝泊まりしているそうだ。


またどうやら。

孤児院の奥の部屋にいるクリスの姉に、ご執心らしい。


恋多き男、バージェス。


もう好きにしてくれ。



話を戻すと。


俺達はモンスター討伐や、素材納品のクエストのついでに。何度かアース遺跡群の地下1階層へと潜っていた。

だがやはり、簡単にたどり着ける範囲には目ぼしい遺物おたからは残されていなかった。


ロロイは。

他のトレジャーハンター達が手をつけなかった、なんだかわからないような遺物ガラクタを、たびたび大事そうに自分の「倉庫」に入れていた。


たまに、入れた後にもう一度取り出して捨てていたが…

その基準はよくわからない。

だが、どちらにしろたぶん、それらは売り物にはならないだろう。


「じゃあ、やはり。本格的に遺物おたからを探すなら、地下3階層より下に潜る必要があるっつーわけか」


バージェスの言葉に、俺はうなずいた。


「アルバス。お前なら、どのくらいの準備が必要だと思う?」


「どの程度の探索をするかによるな。あと、モンスターの数や種類にもよるが。仮に地下にいるのが地上と同じようなゴブリンやウルフェスと、その中級上位種だけだとして…。単に最深部まで行って戻ってくるだけならば、2週間程度で事足りると思う」


それでも2週間は必要だ。

さらに、今回の目的はただの観光ではない。

行って戻ってくればOKということではない。


「だけど、今回の目的は遺物探索トレジャーハントだろ? それなら、場合によっては1ヶ月でも2ヶ月でも、潜りっぱなしになる可能性もあると思う」


「そんなにかかるのか? 地上でも上級モンスターを狙って1週間森を彷徨うなんて事はザラだったが。地下探索はそんなに長期間を見るものなのか。俺は遺跡探索はほとんど経験がないから。その辺の事はマジで感覚がわからねぇな」


バージェスが『お手上げだ』という風に頭を抱えた。


「ちょっと待てよ。今、『最深部まで行って戻るだけなら』とか言ってたけど…」


そこで、クリスが話に割って入ってきた。


「2年前に勇者ライアンのパーティが最深部にたどり着いて以来、未だにそこまで辿り着けたパーティはいないんだぞ?」


「そうなのです。数々のトレジャーハンターが挑みながら、未だにその、アース遺跡の最深部にあると言う、アーティファクト『無尽太陽オメガ・サン』を確認したのは、勇者ライアンのパーティただ一つなのです。だからきっと、勇者パーティが探索しきれていない遺物が、そこにはまだごろごろ眠っているのです! まさにトレジャーハンターのロマン! なのです!」


アーティファクトとは。

「神の遺物」とも呼ばれる特殊な遺物だ。

移動させることもできなければ、倉庫スキルにしまうこともできない。


各地でいくつか発見されており、

中央大陸の古代遺跡で3個。

そしてこの西大陸で、アース遺跡の無尽太陽オメガ・サンを含めて2個発見されていた。


そしてそれを発見することは、トレジャーハンターとして最大級の名誉とされている。


「まぁつまり、おっさん達の言うことは、初めから荒唐無稽だってことだ。遺跡の中がどうなってて、探索にどれだけ時間がかかるかなんて、勇者パーティか、そいつらから直接話を聞いた人間にしかわからないことだよ」


クリスがため息をつき、諭すような感じで俺たちにそう言った。


俺とバージェスは顔を見合わせた。


そして俺は、ポリポリと頭をかいた。


「あー、本人からは言いづらいだろうから代わりに俺が言うが。アルバスは以前、その勇者パーティに居たんだよ。この様子じゃ、アース遺跡群にも一緒に潜って、その『無尽太陽オメガ・サン』とやらの発見にも、立ちあってるんだろうよ」


クリスとロロイは

しばし、バージェスの言葉の意味を理解しかねているようだった。


目の前の、さえない中年商人=俺、と。

そんな大それたことをしたパーティのメンバーという人物像が、どうにも結びつかないのだろう。


「はぁっ!? あ、あんた。勇者様のパーティにいたのか!?」


クリスが悲鳴のような大声を出した。


「弱々で、戦闘じゃ全く役に立たないのに?」


「う、うるせーな」


そーだよ。

だから、追い出されたんだよ


ロロイはと言うと。

「ロ……ロマ…ン……」


なんらかの許容量を超えてしまったらしく、白くなって固まっていた。


トレジャーハンターとして求めてやまなかった物に、ひょっとしたら本当に手が届くのかもしれない。

そんな期待感と、その他諸々の感情がごちゃ混ぜになって訳がわからなくなっているようだった。



俺は、バージェスに「荷物持ち」兼「ガイド」として雇われてこのパーティにいることになっている。


だから『アース遺跡の最奥までガイドしてくれ』と言われれば、そうしよう。


少なくとも。


2年前にライアンのパーティが攻略した段階でのアース遺跡群内部のマップならば、今でも頭に入っている。

パーティメンバーがスキルで見つけ出した罠の位置までバッチリだ。


ってか…


ライアン達が潜ったあと、結局誰も攻略できてないのか。


確かに、あの遺跡探索トレジャーハントの成功は、皇女フィーナのスキルがあったからこそという感じでもあったが…。



ちなみにライアン達と潜った時は

瓦礫で閉じられていた地下3階層へと続く岩の亀裂をこじ開けて通ったので、その先にはモンスターが1匹もいなかった。


今から再び遺跡に潜る際に、警戒するとしたら…

一番のポイントはその辺りの違いだな。


不測の事態に備えて、できればあと1人か2人くらいは戦えるメンバーが欲しいところだった。


だがバージェスは

この4人で遺跡探索を進めるつもりのようだ。


人数が増えれば、それだけ食料のその他の準備や運搬も大変になる。

また荷物が増えればその分、小回りもききづらくなる。

とのことだが。


「全部倉庫にぶちこんときゃ。そこまで問題ないんだけどなぁ…」


まぁリーダーがそういう方針なら、仕方がないだろう。

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