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12 トレジャーハント・パーティの結成

本日の焼肉露店を閉めた後。

宿屋街に向かいながら、なんとなくロロイに愚痴った。


「早く次の商売を見つけないといけない。正直、焼肉屋はいつまでも続けられる商売じゃないからな……」


そう。一刻も早く、次の商売のネタを見つけなくてはならない。

できれば、ちゃんと仕入れのルートを確保できて、継続して続けられるやつを!



ちなみにだが、1泊50マナの雑魚寝宿はやめた。

商売繁盛してそこそこ稼いでいるところを多くの人に見られている以上、そういうところで寝泊まりするのはやはり危険だ。


「それならトレジャーハントですよ! ロロイは、トレジャーハンターとしてひと山当てるために、このキルケットにきたのです!」


俺からの「アイデア料」と、なんとなく「護衛お願いね」の意味合いを兼ねたモーモーの骨つき肉にかぶりつきながら、ロロイがそう言った。



「ロロイはソロなのか? 他のトレジャーハンターたちとパーティを組んだりはしないのか?」


スキルの燃費はともかく、ロロイの戦闘力があればひくてはあまただろう。


「パーティを組んでも。みんなすぐにトレジャーハントに飽きて、モンスター退治や納品なんかのクエストに行ってしまうのです。ロロイはそんなことをせず、ずっとトレジャーハントをしていたいのです」


「それは…」


飽きて。というか、単純にトレジャーハントだけでは生活が成り立たないから。ギルドでクエストを受けて金を稼いでいるだけだろう。


そう説明しても、ロロイはなかなか納得しなかった。


ちなみにロロイにとっては、遺物を露店で売ることもまたトレジャーハンターの醍醐味のひとつだそうだ。

つまりは、「遺跡探索」と「遺物売り」以外のことはしたくないらしい。


というかこの子。売り物にならない遺物ばかり並べて、今までどうやって生活してたんだろう。


ロロイの遺物ガラクタが売れてるところは、ぶっちゃけ見たことがない。


「みんな、なんですぐにトレジャーハントをやめちゃうのですかね…」


「そうだなぁ…。たぶん、みんな。クエストでマナを稼いで。そのマナで、次のでっかいトレジャーハントをするための準備をしてるんだろうな」


と、俺が言うと。

どうやらその言葉はうまく刺さったらしい。


「そ…そうだったのですかぁっっ!!!」


ロロイはかなり衝撃を受けたようで、そのまましばらく固まっていた。


「じゃあ、みんなは今頃。クエストして稼いだマナで、ロロイよりもでっかいトレジャーハントをしているのですか!?!? そ…そんなぁ…」


ヘナヘナと崩れ落ちるロロイ。


「いや、まぁ。そうとも限らないけどな。クエストの方が普通に儲かると思えば。採掘者なんかやめて、冒険者として生きていく道を選ぶやつは、やっぱり多いと思うよ」


というか。そもそもその二つの間に、そこまで明確な違いはない。

冒険者としてギルドからクエストを受けながら、トレジャーハンターとして遺跡の探索をしたりもするのは、ごくごく普通のことだ。

むしろ「片方だけしかやらない」ってやつの方が珍しい。


ロロイはしばらくそのままへたり込んだ後。

何かを思いついたように飛び起きた。


「じゃあ、アルバス。ロロイとパーティを組んで、一緒にトレジャーハントに行くのです!」


と、いきなり叫んだ。


いやいや。


なんでそうなるのか分からん。


俺は戦闘力ゼロの足手まといだし。

荷物持ちにしかならないし。

マジでやめておいた方がいいぞ。


少なくとも。ペアパーティで遺跡探索なんて、危険すぎる。

たぶん、俺。すぐに死ぬ。


そう言ったのだが。


「アルバスが弱っちいのは知ってるのです! でも、アルバスは物知りだから、頼りになるのです。戦うのはロロイがするのです! だから、ロロイと一緒にでっかいトレジャーハントをするのです!」


と言って、ロロイはなかなか譲らなかった。


そんな時。


「話は聞かせてもらった! ロロイちゃん! それなら俺たちと、パーティを組まねぇか!?」


と、どこかで聞いた声がした。


そう。

そのむさ苦しいおっさん冒険者は…


魔法剣士バージェス。


年下好きの変態クソオヤジ(37歳)が。

ロロイ(17歳)をロックオンして、自分のパーティへ勧誘し始めていた。



→→→→→



「ロロイちゃんが、俺たちのパーティに加入する。そして俺が、アルバスを荷物持ちとして雇う。そして4人でトレジャーハントだ!これでどうだ!」


「最高ですそれ! バージェス、最高なのです!」


早くもバージェスの口車に乗ってしまった純粋無垢なロロイは、飛び跳ねて喜んでいた。


「アルバスのお友達なら。バージェスもきっと良い人なのです!」


それを聞いて、バージェスは鼻の下を伸ばして喜んでいた。


このど変態くそ野郎が。


だが俺は。

それならそれで、まぁいいか。と言う気持ちだった。


バージェスは変態だが、腕は確かだ。

判断も的確なので、大きな危険は冒さないだろう。

俺も、バージェスが荷物持ちとして雇ってくれるなら、それでそれなりの収入を得られる。


トレジャーハントというのも。うまくやれば確かに儲かるかもしれない。


最近、俺は「荷物持ち」も立派な商売の一つだと思うようになっていた。

現物があるわけではないが「荷物持ち」という俺の持つ技術を売って、その対価としてマナを受け取るのだから。それは立派な商売だ。


やっぱり俺は、どこまで行っても「荷物持ち」が似合ってるってことか?



「クリスもよろしくです!」


ロロイににっこりと微笑まれて、少年剣士クリスは目を伏せていた。


これは、多分恥ずかしがっているな。


『キューピッド・バージェス』


城塞都市キルケットについたばかりの頃に耳にした、バージェスのそんな二つ名が頭に浮かんだ。


そうして。

俺たちは4人で遺跡探索のためのパーティを組むことになった。



【バージェスの遺跡探索トレジャーハントパーティ】


魔法剣士バージェス(リーダー/前衛)

剣士クリス(前衛)

武闘家ロロイ(前衛)

商人アルバス(雇われ荷物持ち/雇われガイド)

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