16 旅立ち
俺たちはプリンに見つかった。
これからナニをしようとしてたかなんて。
年頃の娘ならわからないはずがない。
プリンはしばらく固まった後。
すぐに状況を理解したらしい。
「アルバスさん。そういうことだったんですね!」
そう言って小さく震え出した。
これはマズい!?
人生初修羅場か!?
と思いきや。
「旦那様にはなってもらえませんでしたけど。これからはお父さんなんですね!」
と言って、案外簡単に受け入れてくれた。
→→→→→
全力で名残惜しい。
だが、俺は行かなくてはならない。
あれから俺は。
ギルドに、キルケットまでの護衛メンバーを集める依頼を出し。
その出発予定日の1週間後までだと心に決めて。
妻と娘との幸せな時間を堪能した。
そして、出発の朝。
「アルバスさん。いいえ、あなた。行ってらっしゃい」
「お父さん…また近くに来たら。絶対私たちのところに帰ってきてね」
ひょっとしたらこれが最後かも知れない。
そんな思いをいだきながら。
俺はその家を後にした。
後ろ髪を引かれるとは。まさにこのこと。
だが、俺は行かなくてはならない。
俺が、そう決めたから。
そして、妻もそう望んでいるから。
「あなたは世界を股にかける大商人になるお方。その力で、私たちだけでなくもっともっとたくさんの人を幸せにしてください」
そんなふうに言われたら。
薬草屋の主人になってここで暮らすのもありかもなんて、もう言えなくなっちまうじゃないか。
「行ってくる。アルカナ、プリン。元気でな。あっちに着いたら、アルカナの箱に手紙を入れるからな」
目指すは、城塞都市キルケット。
この周辺ではもっとも大きな都市だ。
妻を得て。
俺は、本格的に行商人としての旅路を歩み始めた。
ちなみに2人の元へは、
行商で近くによる度に、何度も帰った。
「ヤック村の薬草農家編」メインストーリー終了でございます。
ここまでお読みくださり、誠にありがとうございます。
ストックの残るは「余談」と「目録」で。今日の夜か明日の朝にでも投稿予定です。