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51 あるひとつのはじまり


城塞都市キルケット。

西部地区、門外区画にて。


「というわけで、今日からここがあんたたちの家だ」


俺は、闘技大会の上位入賞者四名に対して『アルバスの借家』の一通りの説明を行っていた。

いずれも屈強な四人の戦士。そして物凄い強面ばかりだ。

彼らが、俺の代わりに入居者達から(マナ)を徴収してくれるというのなら、もう言う事なしだった。


そして、自信と希望に満ち溢れた顔をしている彼らの中に一人、とてつもなくばつが悪そうな顔をしている男がいた。


やつは今回の闘技大会の優勝者。

そう、バージェスだ。


俺はもう、バージェスのそんな姿を見るだけで口元が緩んでしまうのだった。


「俺は今後キルケットを留守にすることも多いだろうから、集金は代行の者が受けるかもしれん。お前達の方も、キルケットを離れることもあるだろう。その場合の証明は、代理のものに印章付きの紙を持たせて……」


なるべくバージェスの方を見ないようにしながら、俺は一通りの説明を終えた。



→→→→→



キルケット闘技大会の入賞者には、商人ギルド所属の銀等級商人が用意した素晴らしい賞品が授与される。

そして、彼ら上位入賞者四人には、俺が用意した『アルバスの借家』の管理者となる権限が授与されることになっていた。


また彼らは、それとともにキルケットオークションまでの間、自警団の一員としてキルケットの防衛にあたることになっていた。


建前上は拒否する権利もあるのだが……

俺の護衛をしているバージェスが、闘技大会で優勝しておきながらもそれを拒否するというのは、いろいろと具合が悪いだろう。


商人ギルド所属の銀等級商人であり、大貴族ジルベルト・ウォーレンの義弟だとされている俺の立場は……

すでに個人的な感情だけで好き勝手ができるようなものではなかった。


ジルベルトの体面のような話もあるだろう。

なにせ、闘技大会の入賞者によるオークション警護については、キルケット内で唯一ジルベルト・ウォーレンよりも上位に位置する大貴族、トンベリ・キルケット卿の肝いりの政策なのだ。


ゆえにこれから当面の間、バージェスはキルケット自警団の一員としてキルケットの警護にあたることになってしまっていた。

一応、そちらの方からも少なくない額の給金が出ることになっているらしい。


「すまねぇな、アルバス」


「気にするな、仕方がないさ。それよりも俺は、あんたが覚悟決めてくれたことの方がうれしいんだぜ、兄弟(・・)


最後にわざとらしくそう付け加えると、バージェスは照れくさそうに笑った。



闘技大会の予選戦の後。

俺はクラリスとバージェス(というか主にクラリス)からことの顛末の報告を受けた。


それを横で聞いていたミトラとロロイは、まさに飛び上がるほどの大喜びだった。

そして、そのまま劇場の吟遊詩人たちや白い牙のエルフ達。さらにはバージェスを訪ねてきたゴルゴとバリスも巻き込んでのどんちゃん騒ぎの大宴会が開催されたのだった。


その後、バージェスが闘技大会で優勝してしまうと……

クラリスはバージェスをリードしながら、二人で優勝賞品の『アルバスの借家』に引っ越す段取りを進め始めた。


そしてついに、今夜それが実行に移されるのだ。


というわけで、今日の夜から二人はここに住むことになっている。

お屋敷内の二人の部屋もまだあるので、基本的には行ったり来たりの生活になるだろう。


さすがにニヤニヤが止まらない俺を見て、バージェスが再度照れくさそうな顔で目を伏せつつ……

俺と同じように口元を緩ませたのだった。



そしてその翌日。

俺はミトラと共に、クラリスから「ちゃんと結婚したよ」という旨の報告を受けた。


そうなったらもう。

その夜は当然のように、再び二人を囲んでの大宴会が開催された。


これには、紅蓮の鉄槌のメンバーや東部地区ギルドのバージェスに馴染みのあるメンバーなんかも招待し、ミストリア劇場の劇場スペースを貸し切っての超大規模な披露宴となったのだった。

やっとこさ、クラリスとバージェスのあれこれに決着をつけることができました。

ただまぁ、結婚て……ゴール(おわり)じゃなくてスタート(はじまり)ですよね。


さて残るは、『余談』と『棚卸し』と『間章(仮)』になります。

『間章』は、次章として構想している『9章 ノスタルシア三皇女編』と、今回の『8章 暗躍する翼編』を繋ぐような話になる予定です(まだちゃんと書き上がってないw)。


今しばらくお付き合いいただけますと幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] クラリスとバージェスに決着思ったより早くてよかった!めでたい
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