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13 とある結婚②

「だめだ!」


プリンの手がピクリと止まった。


「そんな…」


「君は…。俺みたいなのと結婚しちゃいけない。君は、お父上とアルカナさんが守ってきた、この土地を守るんだ。そのために選ぶべき相手は…、俺じゃない」


「……」


「俺はいずれこの村を出て、世界を股にかけたどデカい商売をする。大商人になる。そうしたら、もう2度とこの村へは戻らないかもしれない」


「私は…、それでも…」


まだ、なにか言おうとしているプリンへ。

止めの言葉を投げつけた。


「君は…そんな無責任な奴の妻になんか、なってはいけない。それに…、俺の方にもそのつもりはない」


プリンの手が俺から離れ。

身体も離れた。


「ごめん…なさい」


声の気配から。泣いているだろうという事がわかった。


そして、そのまま。

プリンは浴場から去っていった。


ちなみにだが。

俺の下半身は凄いことになっている。


カッコつけちゃったけど…

しばらくはそこで、1人でものすごく後悔した。


ムスコは、全力で俺の判断を否定していた。



→→→→→



「アルバスさん…」


1人で共同浴場から出た俺を。

薬草農家の女主人で、今は宿屋の女将でもあるアルカナが呼び止めた。


「娘と…、プリンと何かありましたか?」


怒られると思った。

なので、何も言えなかった。


「そろそろ共同浴場の営業が始まります。とりあえず、こちらへ…」


そう言って、アルカナは旅館の一室へと俺をいざなった。


「何があったのか…詳しく話してください」


静かな部屋で。

子を持つ母の顔でそう凄まれ。


俺は観念して洗いざらい全てを話した。


と言うか。


話しながらよくよく考えたら。

俺、何も悪いことしてなくね?


そりゃ、結婚前の娘の裸をがっつりと目に焼き付けさせてもらったけど。そもそもそれは俺のせいじゃないし。


いやいや、でも。プリンちゃんの想いを踏みにじったんだから。それはそれで十分に悪いこと、か。


今更ながらに。

あそこでプリンちゃんを受け入れて、そのまま薬草農家になる覚悟を決めるのが正解だったような気がしてきた。


「あの子ったら…」


話を聞いたアルカナは、言葉に詰まってしまってそれしか言えないようだった。


そして…


「では、こうしましょう」


と、何か良いアイデアを思いついたようだった。


「私と結婚してください」


×良いアイデア ○意味不明なアイデア


「はいぃっ?!??」

思わず素っ頓狂な声が漏れた。


「私には、1人目の夫がいます。その夫のことを、忘れるつもりはありません。でも、もう一度結婚したいと思える相手に出会ってしまいました。本当はこのまま独り身で生きていく覚悟を決めていたのですが…」


「いや…、いやいや……」


「だから、たとえアルバスさんが私と結婚しても。アルバスさんは私のことはそんなに気にせず旅に出てください。私はこの薬草農家と。1人目の夫が建てて、アルバスさんが再び日の目を見させてくれたこの旅館を守り、ここで残りの人生を過ごします」


「いやいや、意味が…」


「いいんです。私が…そうしたいだけですから」


そう言ったアルカナは。

すでに母ではなく女の顔をしていた。


そして、有無を言わさぬ強い力で。

敷いてあった布団へと、俺を押し倒した。


たぶん。抵抗しようと思えばできた。


でも…


プリンちゃんの一件ですでに崩壊しかけていた俺の理性。


そこではギリギリ理性を保ったものの、実は後からめちゃくちゃ後悔していた。


「やっときゃよかった」「そうすれば今頃」


そんな考えが頭の中を渦巻いていた。


だからもう、今度は無理だった。

ここで拒んでも、また後悔するだろう。


ごめんなさい。


こんな優柔不断でごめんなさい。


「えっ? 母親そっち!?」って思った人も、本当にごめんなさい。


「あら…。前に脱衣所でチラッとみたけど…」


もはや、アルカナは女の顔を通り越して雌の顔になっていた。

獲物を前にして、飛びかかる直前の体勢になって身をかがめている、上級モンスター、レオハルト(雌)だ。


「改めてじっくり見ても…、やっぱりご立派ねぇ」


そう言って。


テクニカルなバトルテクで。

グラウンドファイティングビギナーの俺を。

一瞬でボーンレスにするのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ンアッー!?
[良い点] 無責任な奴の妻を作ってんじゃねーかwww [一言] でも偉いよ。俺だったらプリンちゃんの段階でヤってる。奥さんともヤる。そして逃げる
[気になる点] 好きな男を母に取られるってのもプリンちゃん可哀想すぎる(泣)
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