38 事後の余談(ジャハル編)
間が空いてすみません。
「余談」枠で投稿する話を、どれにしようか超迷ってました。
そしていつものごとく、バリバリ本筋に関わる話になってしまいました。
そしてこれは余談だが。
バージェスに追われて森の中へと逃げ込んだジャハルは、その後、紆余曲折あって黒い翼に囚われることとなる。
バージェスの追跡を逃れてより3日間、ジャハルは森の中をさまよっていた。
シトロルン山脈の、トトイ神殿とは逆側のふもとの広大な森林地帯。
シヴォン大森林と呼ばれるその森林地帯は、別名「迷いの森」とも呼ばれていた。
その森林の木々は高く、上下の起伏もかなり激しいため。奥深くに迷い込んでしまうと、シトロルン山脈の方角どころか太陽の方角すらもつかめなくなってしまうのだった。
「な、なぜわしがこんな目に……」
食料はわずかしか持ってきていない。
水はすでに尽きたので、沢を見つけてはすすった。
「うぅ、なぜわしがこんな目に……」
そんな時に……
「彼」を発見したのだった。
「ダコラス……」
見覚えのある服を着ていたが、その体格が明らかに違っていた。
中型のモンスターのはらわたのあたりで、「彼」は「何か」をしていた。
「ダコラス……?」
振り向いた「彼」の顔はこげ茶色の体毛に覆われ、その口の周りにはべっとりと血のりがついていた。
よく見ると、全身が同じ色の体毛でおおわれている。
「じゅ、獣人族!?」
「見、た、な?」
振り向きざまの腕に薙ぎ払われ、ジャハルは遥か後方まで吹き飛ばされた。
そして、そのまま意識を失ったのだった。
→→→→→
どこかの森の中で目を覚ましたジャハル。
その目の前には数名の男女がいた。
「爺さん。悪いけどあんたはもう、まともな世界には戻れない」
「ダコラス。わしをどうするつもりだ!?」
「今言ったそのまんまの意味だよ。鑑定スキル持ってんだろ? しばらく俺たちに付き合ってもらうぜ」
ダコラスの姿は人に戻り、身なりが整えられていた。
身体に密着した黒い衣装に身を包み、そして赤いスカーフを巻いている。
よく見ると、他の全員も同じような服装をしていた。
「く、黒い翼……?」
その装束は、つい最近のオークションでもうわさに登っていた、盗賊団「黒い翼」のものだった。
「理解したなら話が早い。あんたには俺たちの役に立ってもらう」
「ひぃぃっ。そんなのは嫌じゃ!」
「じゃ、ここで死ぬか?」
「それはもっと嫌じゃ!」
「じゃ、決まりだな」
「ひぃぃぃ……」
こうしてジャハルは、黒い翼の幹部ダコラスのもとで、伝令や盗品鑑定などの任務を担う事となったそうだ。
そして俺がそのことを知るのは、そう遠くない未来だった。
「バージェス・トーチ……名前は覚えたぞ」
と、ダコラス。
「あのちびっこ護衛。次に会ったらぼこぼこにしてやるぜ」
と、シルクレッドとその3人の妻達。
「アルバスめ……、よくもわしをこんな目にぃぃ~~!」
と、ジャハル。
ダコラスにギロリとにらまれて「ひぃっ」と静かになった。
「全員が全員、現在のアルバスのパーティに因縁があるようですわね」
今まで黙っていたもう1人の女が、そう口を開いた。
「一番因縁があるのは、あんただろ?」
ダコラスの言葉に、その女は不敵に笑って見せたのだった。
一応、商人ギルド編は②か③まで続く一連の話になる予定です。
次回はアマランシアを再登場させようか、勇者パーティを再登場させようか、はたまた全然別の話にするか。いろいろと考案中です。
近いうちに投稿再開できればと思いますので、その時はまたお付き合いいただけますと幸いです。




