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26 トトイ神殿跡地、再び

ポッポ村を出発した後、トトイ神殿跡地までの道のりを進む。

行きには、獣使いを含む盗賊団に襲われたその森だが、今回は特に何事もなく通過することができた。


そして俺たちは、かなり早い時間に中継地点のトトイ神殿跡地に到着することができていた。


「ロロイは一刻も早くトトイ神殿跡地に行きたいのですよ!」


早速ロロイが騒ぎ出した。


まぁ、1週間もお預けを食らっていたのだから、ロロイはロロイなりに相当な我慢をしていたはずだ。

そう思うと、ロロイの成長を感じて嬉しくなってしまい、思わずまた頭をポンポンと撫でてしてしまった。


「な、何するのですか〜」


「んじゃ、早速トトイ神殿跡地に行くか。流石にもう見学許可証の確認は済んでるだろう」


「いく!! いくいく!!」


一瞬にしてロマンモードに突入して超上機嫌になるロロイ。

本当に目まぐるしいやつだ。


俺たちが4人揃って番兵の詰所を訪れると、詰所には前回の訪問時に俺たちの応対をしてくれた番兵がいてすぐに俺たちに気が付いてくれた。


「例の見学許可証の件、流石に確認は済んでるよな?」


俺がそう尋ねると、番兵から「問題ありません」との答えが返ってきた。

そして、夕方にも関わらずそのまま中へと案内してくれることになった。


「どうぞこちらへ」



→→→→→



「トトイ〜、トトイ〜、ト〜ト〜イ神〜殿〜♪」


1週間前も通った薄暗く湿った通路に、ロロイの歌声が響き渡る。


そして、前回と同じように大聖堂脇の小部屋に入り、そこからさらに通路を下った先の、鎖でグルグル巻きにされた扉の前まできた。


通常部分だけならば、やはり数分で終わってしまう。

前回、あまりにも短い距離で見学が終わって不満たらたらだったロロイも、今回はこの先まで入れるとあってすでに大興奮状態だ。


「あの扉の向こうから、ロマンが溢れているのです!」


俺にはただの古びた鉄の扉にしか見えないのだけど。

ロロイはめちゃめちゃ嬉しそうだった。


そして、番兵がその扉に巻き付いたチェーンの鍵をガチャガチャと開け始めた。

どうやら、ここを開けるのは本当に久しぶりのことらしい。錆び付いていてなかなか鍵が差し込めない鍵穴などもあって、かなり悪戦苦闘していた。



→→→→→



「ロマン〜ロマン〜、ロマンが溢れるトレジャーハント〜!」


少しずつ解き放たれていく扉に、ロロイの興奮は最高潮だ。

そしていくつものチェーンをこじ開け、ついにその扉が開いた。


「どうぞ」


下り階段の途中にある扉の向こう側は、そのまま暗い下り階段が続いていた。


「トレジャーハントなのですーーー!!!」


「基本的には、中のものは持ち出し禁止だからな!?」


走り出そうとするロロイを引き留め、必死に注意事項を伝える。


ここはキルケットの貴族院が管理している遺跡だ。

自由なトレジャーハントが認められているアース遺跡群とは異なり、勝手に中のものを持ち出したりするのはまずい。


「じゃあ、見るだけのトレジャーハントなのですーーーっっ!!!」


もはや訳がわからないのだが。

『遺物販売』を『トレジャーハント』だと言うロロイなのだから、多分本当にそれだけ(見るだけ)でもいいのだろう。


「いえ、マーカスギルド長からの許可証によりますと、トレジャーハントの許可が追加されております。あと、許可証の期限が追加され、明日一杯までとなっておりますね」


と、番兵の言葉。


「そうなのか?」


「はい、間違いありません」


そう言って番兵が見せてきた許可証には、なぜがトレジャーハントの許可が付け加えられ、さらには期限が追記されていた。


ロロイの目が爛々と光り輝き、もう止まらない状態になる。


俺もまさか、トトイ神殿跡地でのトレジャーハントが認められるとは思わなかった。

貴族院が派遣した調査隊ではない。俺のような外部の人間にそんな許可が与えられるのは、下手をすると数百年ぶりのことなのではなかろうか。


一瞬お宝を見つけ出して大儲けする図が浮かんだのだが、やはりなんとなーく怪しげな気配もする。


ロマンモードのロロイがすでに見えないくらい先まで下りて行ってしまっていて、そこで俺たちを呼んでいる。


「なぁバージェス、クラリス。俺たちが地下にいる間、あっちの大部屋で待っててくれないか。出来れば、柱の影に身を隠して」


「まぁ、俺たちはトレジャーハントにはそんなに興味ないけど……」


「ちょっと、嫌な感じがする。頼む」


「了解した」


そして、俺はロロイと2人で地下に向かうことにした。


「じゃ、行くか」


「うん!」


中には当然明かりなど無いので、倉庫から取り出した松明に火をつけて進み始めた。


階段の底まで降り立つと、そこから通路が三叉路に分かれていた。

そしてそこは、どこからともなく大きな水音がしていて意外と騒々しい場所だった。


おそらくは、付近を地下水脈などが流れているのだろう。


「どの道に行く?」


「全部!」


満面の笑みでそう答えるロロイ。


「聞き方が悪かった。どの道から行く?」


「右! そのあと真っ直ぐで、その後に左!」


とりあえず、ロロイの言う通りに隅から隅まで見て回ることにしよう。


トレジャーハントの許可が降りているとなると、ロロイは隅から隅まで見て回りひたすら遺物らしきものを集めまくるだろう。


俺としても、少しでも価値のあるものがあれば全て持って帰りたい気分だ。

こんな機会、滅多にあるもんじゃない。


きっとかなりの時間がかかるが、なんとか朝までに済ませよう。

明日の朝には、キルケットに向けてここを出発しなくてはならない。


こうなったらもう、当然徹夜も辞さない覚悟だ。


ロロイも、言うまでもなくそのつもりのようだった。


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