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04 冒険者バージェス

そんな感じで、俺がモルト町やそこの冒険者ギルドに馴染んできたある日。


その日も俺は、いつものように。

朝一のギルドで張り出された依頼書を眺めていた。


『【作業】モルト村北西部の柵の補修』

『【作業】ヤック村で薬草摘みの手伝い』

『【初級】アース街道のゴブリン退治』

『【初級】モーモーの肩肉10kgの納品』

『【初級】アルス森林のウルフェス退治×30体』

『【初級】ウルフェスの毛皮×10枚の納品』

『【中級】アルス森林のウルルフェスの討伐』

 その他多数。


一見さん相手に俺が同行するのは、初級クエストまでだ。


中級以上のクエストは、それなりの命の危険を伴うので、ある程度実力の知れた相手じゃないと怖い。


「アルバス。今日の荷物持ち相手はもう決まってるのか?」


声をかけてきたのは中年のソロ冒険者『魔法剣士、バージェス』

かなりの大柄でモジャモジャの無精髭を生やしっぱなしにしてる。

使い込まれた装備品、そしてめちゃくちゃな強面。

ザ、冒険者といった風貌だ。


顔見知りでない状態で、道端で声をかけられたら。難癖つけてカツアゲされると思って、全力で逃げるような相手だ。


だが、腕は確か。

しかも、細かい素材にはあまり拘らないタイプだ。


もしバージェスが

『【中級】アルス森林のウルルフェスの討伐』

を受けるなら。


タダでもいいから同行をさせてもらって、子分のウルフェスを含めたモンスター素材の分け前をもらうのもいいかもしれない。


「まだだな。バージェスさん…、あんた今日はこのウルルフェスの…」


「お!これは!」


俺の言葉を遮り、バージェスが取ったのは『【作業】ヤック村で薬草摘みの手伝い』


「おいおい。百戦錬磨の魔法剣士が、作業クエストを受けるのか? しかもそれ、報酬めちゃめちゃ安いぞ」


「ざっけんな、よく見ろ! 依頼主は『アルカナ』。プリンちゃんの母君だ!!」


そういえば2ヶ月前。

俺が薬草を大量に仕入れたヤック村の薬草農家の女主人が。確かアルカナといった。

一緒にいた年頃の娘は、確かに美人だった気がする。


「プリンちゃんとキャッキャウフフしながら薬草摘みができるなら…。俺はこの依頼、受けるぜ!」


バージェスは、こんな顔をしてるくせに超奥手。

理由がないと女性と話すこともできない。

だからこそ、その理由に出来そうな依頼には、超飢えていた。


そして、今はこんなハイテンションなくせに。いざ目の前に行くと恥ずかしくなり、無口になって相手に怖がられてしまうらしい。


「いや、でもあそこの娘ってまだ成人前だろ?」


「もうすぐ16だ! 16になったら成人だから、本格的に結婚相手を探すはず!!! だが、それから動いたんじゃもう遅い! その辺の金持ちの妾にでもされたら、もうおしまいだぁぁ!!! 勝負はすでに始まっている。なんとか俺が…、俺がぁっ!?」


「あ……。そう…」


しかも、俺より年上のくせに、無類の年下好き。

特に成人前後の女の子に目がない。

しかも極度の面食いで、おっぱい好き。


きっと駆け出し冒険者の頃から、女性の好みの時が止まっているに違いない。


娘のプリンより、未亡人の女主人アルカナの方が、俺たちとは歳が近いんだぞ…。

なんならアルカナも、バージェスから見たら年下なんじゃね!?


バージェスよ、目を覚ませ!


と…。

周りの冒険者達がいくら諭しても聞かないので、もう放っておかれている。


ちなみに独身で、俺と同じく結婚の経歴はない。

一夫多妻の世の中では。力や金のある一部を除き、男は常に余る運命だ。


だがバージェスは冒険者としての腕は良いので、蓄えもそこそこあるはずだ。

だから、確かに今からでも若い嫁がもらえる可能性はゼロじゃない。


ひょっとしたらってことも、確かにある。


ちなみに、そのうち嫁が欲しいと思ってるのは俺も同じだ。

一応、同志として、そこまでキツいことは言わずに温かい目で見守ることにしている。


「待っててね、プリンちゃーーーん!!」


バージェスは、早速依頼書を剥がして受付へと向かっていった。

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