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04 トトイ神殿跡地

立ちふさがるスライムなどのモンスターを討伐しつつ、俺たちはポポイ街道を順調に進み続けた。

そして予定通り、夕方前にはトトイ神殿跡地に到着した。


トトイ神殿跡地は、キルケットを出発した時から右手奥に見えていた「シトロルン山脈」の麓を、少し登ったところにある。


交易の盛んだった、キルケットとポッポ村とのちょうど中間あたりに位置しており、何軒かの宿屋が立ち並ぶ宿場になっている。


通称「トトイ宿場」だ。


何件かある宿屋のうち、俺たちは手ごろな価格の宿屋を選んで宿泊の手続きをとった。

そして、ウシャマを繋いで旅装を解いたのち、さっそくトトイ神殿跡地の遺跡に向かうことにした。



→→→→→



「トレジャーハントなのですーー!!」


ソワソワしているロロイが、堪えきれずにそう叫び出した。

場所は、トトイ神殿跡地の入り口付近だ。


「だからなロロイ。ここは観光地だから、トレジャーハントは出来ないんだよ」


キルケットを出る前から、何度も何度もそう説明しているはずなのだが。ロロイは全く聞く耳を持っていない。


「できないのですかっ!?」


そして案の定。今初めて聞いたがごとく驚いている。


「何度も言ってるだろ…」


「残念なのです。でも、雰囲気を感じられれば、ロロイはそれだけでも楽しいのです」


そうは言っても、ロロイには興奮が閾値を超えると何をしでかすかわからないという怖さもある。


俺は、バージェスとクラリスに向かって『ロロイが変な真似をし始めたら止めてくれ』と目配せをした。


2人は、俺の意図を理解して無言で頷いてくれた。


ある意味、街道のモンスター達を相手にするより面倒だ。



→→→→→



トトイ神殿跡地の見学を行うにあたり、俺たちはまずその入り口のわきにある番兵の詰め所へと向かった。


中には数名の番兵がおり、夕方にも関わらず見学の申請をすると快く応じてくれた。

キルケットから歩いて来ることを考えると、ウシャマに乗った俺たちの到着時間はかなり早い方だ。

そのまま、1人の番兵が監視員兼ガイドとして同行することになり、中に案内してくれた。


まさかのガイド付きとは……

本当に観光地なんだな。


トトイ神殿跡地において通常の見学客が入れるのは、入ってすぐの大ホールとそこの脇にある小部屋までだった。


小部屋は看守室のような場所で、そこから先には地下に降りる階段がある。

そしてその階段の途中に鉄柵があり、複数の鍵付きのチェーンでガチガチに塞がれていた。


「アルバス。ロロイ達はこの中には入れないのですか?」


ものの数分で中を全て見終わってしまったので、早速ロロイが不満を漏らす。


トトイ神殿跡地は、観光地であると同時に歴史遺産として保存されている。

そのため、観光客として見られるのはここまでだ。


「この奥に入りたいのだが」


俺がそう声をかけると、俺たちに付いてきた番兵が怪訝な顔をした。


「それはできない。そこにもちゃんとそう書いてあるだろう?」


「わかった上で言っている」


そこで俺は、倉庫から一枚の封書を取り出した。


「実は、西大陸商人ギルドのマーカスギルド長の許可証をとってある」


そう言って、俺がその許可証を手渡すと、番兵は少し驚いた顔をした後、「確認する」と言って詰所に戻っていった。


「入れるのですかっ!!」


「まぁな」


「アルバスは最高のガイドなのです!」


ロロイはもう、ワクワクしすぎて「ロマンの歌」を歌い始めていた。


これは、今回俺が西大陸商人ギルドからの仕事を引き受けるにあたっての『おまけ』みたいなもんだ。

いろいろと条件を交渉するついでに、ダメもとで言ってみたら割と簡単に通ってしまった。


番兵はすぐに戻ってきた。


「悪いが、少々確認に時間がかかりそうだ」


「なに。どれくらいだ?」


「2日ほど、だ」


「それは、随分と長いな」


期待に目を輝かせていたロロイが、がっくりと肩を落とした。


おそらくは、キルケットまで人をやって確認をするのだろう。

一応、ギルド長の印章が押してあるのだが、そもそもそれを鑑定できる者がここにはいないということなのだろう。


俺の目の前で執筆して印章を押していたので、まさか偽物という事もないだろうが……

出発前のギルド長とのやり取りを思い出し、俺は少しいや~な気分になった。


「とりあえず飯にする、か」


バージェスの言葉で、そういうことになった。



→→→→→



トトイ宿場にて、俺たちは道の端の広場で調理器具の焚き火を囲んでいた。

周囲はゴツゴツとした岩場だ。


高級な宿に泊まれば夕食も出てきたかもしれないが、特にそういう宿は選んでいない。

だから、基本的に夕飯は自分たちで勝手に用意して食うスタイルだ。


「これ、んまそーなのです!」


「そ、そうか?」


「そーなのです!」


俺の作るマシュラ鍋を見て、ロロイが嬉しそうに声を上げた。


「マシュラの姿鍋だな。さっき宿の女将に聞いたら、塩で下茹でして臭みを落としてから、煮汁を替えて他の具材と一緒に濃いめの味付けで煮込むといいらしい」


だから、聞いたままにそんな感じにしてみた。


マシュラは、硬い甲羅をハンマーで叩き割り、ナイフを差し込んで甲羅から肉を切り離した。

ロロイが食いたがっていたので調理してみたのだが、正直言ってあまり旨そうな見た目とは思えなかった。

どちらかと言うとグロ系だ。


だから、それとは別にコドリスの香草焼きとモーモー焼き。それとモーモー肉のスライスと野菜を煮込んだ別の鍋を用意してある。


主に、バージェスとクラリス用だ。



「マシュラ、なかなか美味いのですよ!」


さっそくマシュラにかぶりついたロロイが、うれしそうな声を上げた。


「アルバスも早く食べるのです」


「へいへい」


ロロイに促されて俺も食ってみたが、見た目から想像していたほど味は悪くはなかった。


俺も、15年間も冒険者をしていたので、『食えるものはなんでも食う』しかないような場面に何度も出くわしてる。

そのおかげで『未知の食い物』への耐性はそこそこ高いつもりだ。


ちなみにだんだんと倉庫に大量の食材を持ち歩くようになり、遺跡探索の準備精度も向上していったので、徐々にそんな場面も少なくなくなっていった。

だがそれでも、今でもその気になれば『食える物ならなんでも食える』つもりでいる。


好き好んで食いたいとは思わないが、な。


バージェスとクラリスは、マシュラには別に興味がないようで、いつものようにコドリスやモーモーの肉を食って満足していた。

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