表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/316

03 ポポイ街道のモンスター②

「うりゃー!」


苦戦するクラリスをしり目に、少し離れたところではロロイがアルミナスの風属性の遠隔攻撃スキルでスライムを蹴散らしていた。


「ねぇねぇアルバス。スライムは美味しいのですか!? なんか、少し甘いいい匂いがするのですよ!?」


くんくんと鼻を鳴らしながら、亡骸となってとろけているスライムに近づいて行く。


「アルバス。ロロイはスライムを食べてみたいのですが、倒すとすぐに溶けてしまうのです!? どうすれば良いですか? あと、スライムは美味しいのですか?」


なんか、一度に一気にたくさんのことを聞かれて答えに困ってしまうが、とりあえず一個ずつ答えることにしよう。


「食べて美味しいかどうかは知らん。でもコアの中の水分は昔、魔力回復薬に使われてたらしいぞ」


だから、少なくとも食用できないってことはないだろう。


ちなみに今は普通の水を、魔力を含みやすく精製するような技術が開発されたので、「スライムコア内の水」に素材としての価値はほとんど無くなっている。


「食べ物じゃなくて、飲み物!? かなり気になるのですぅっ!?」


強力な俺の護衛達に、既に逃走モードに突入しているスライムの残党。

そしてそれを追いかけまわすロロイ。


「倒すととろけちまうから、そのまま齧り付くしかないかもな」


「なるほど!」


「嘘つくなバージェス!」


バージェスの冗談をロロイが本気にしかけていたので、慌てて訂正した。


「嘘なのですかぁ」


食べ物の恨みなのか、結構怒ってるロロイ。

そんなロロイの前に、草むらから一際大きなスライムが飛び出してきて、立ち塞がった。


瞬時に縦に伸び上がったその体高は、完全にロロイの背丈を超えている。


「ん? どちら様なのですか」


ロロイが首を傾げた。


「デカスライムだ! ロロイ気をつけ……」


俺が言い終わるより前に、ロロイの身体は、倒れ込んできたデカスライムに押しつぶされ、その皮膜の中に飲み込まれてしまった。


「しまった!? バージェス!?」


「わかってる。中火炎魔術ミルフレア!」


手の中に中級火炎魔術を発動させ、バージェスがデカスライムに向かって駆けて行く。


だが、バージェスが到着するよりも早く。

ロロイの身体がスライムの皮膜内の粘液の中でぐるりと反転し、そのままコアに向かって引き寄せられた。


「な、なんだ?」


そしてロロイは……


デカスライムのコアを両手で鷲掴みにして、いきなりかじりついた。


「はぁっ?」


ロロイに噛みつかれてコアが崩壊したデカスライムは、皮膜と魔障フィールドが維持できなくなり、瞬く間に溶けていった。


「んー……なんか、思ってたような味じゃなかったのです。ちょっとヌルヌルしてるだけで、ほとんどただの水なのです」


スライムの粘液でドロドロになりながら、悪びれもなくそんなことをぼやくロロイ。


「スライムに食われたかと思って、マジで焦ったんだぞ! ってか、バージェスも変な冗談言うなよ!」


実は本気で焦っていたので、思わずロロイとバージェスを怒鳴ってしまった。


「ごめんなさいなのです。ロロイはどうしてもスライムを食べてみたかったのです…」


「悪い悪い、ちょっと冗談がキツかったな」


キルケットの中では忘れかけていたけど、ロロイの本質は、非常識で野生児甚だしいこの感じなのだ。

キルケット内では街人の生活を真似して大人しくしていたというその順応性の高さもまた、実は野生児たる所以なのだろう。


あの場面での正解に近いアドバイスは『魔力回復薬に使われてたことがある』じゃなくて、『魔障フィールドを破壊してから何度も放置すると、徐々に弱っていずれコアが剥き出しになる』だったかもしれない。


もしくは『せめて火は通せ』だったかな。


まぁ色々と頑丈なロロイならば、問題はないのだろうが。



→→→→→



少し休憩をとることになり、ロロイは少し道を逸れ、近くの川でスライムの粘液を洗い流していた。

遠巻きだが冒険者がいる中でも、ロロイは平気で下着姿になったりするのでこっちが焦る。


俺は極力そっちは見ないようにしていた。

バージェスはクラリスからの妙な視線を受け、すごく不自然に山の方をずっと眺めてた。


「アルバスー! あっちの方の水底に、デッカくてゴツゴツした変なモンスターがいるのです!」


「あぁ、たぶんガマシュラだな。さっきから道に沢山うろついてるマシュラやタマシュラの上級上位種だな」


マシュラ系統のモンスターは、一応食用になるというのを聞いたことがある。

コドリス食の文化が根付いているキルケットでは、わざわざ好き好んで食うやつもいないようだが。


「ガマシュラは上級モンスターだ。そっちはかなり硬くて簡単には討伐できないと思うから倒すならマシュラかタマシュラの方だな。多分味はそんなに変わらない。何匹か討伐しといてくれれば、夜にでも俺が調理するぞ」


トトイ神殿跡地まで行けば、なにか美味い調理方法なんかも聞けるかもしれない。


「アルバスは、頼りになる料理人なのですーー!! でも、やっぱりロロイは一番大きいのが倒したいのです」


おおはしゃぎのロロイ。


その横では、先程スライムに手も足も出なかったクラリスが、今度は硬い甲羅を持つマシュラ相手に刃が立たず、かなり不満そうに剣を振り回していた。

頭と手足を甲羅の中に引っ込められ、そこに蓋をされてしまうと、これまたクラリスのような軽装剣士にはかなり相性の悪い相手だ。


「アルバス! アルバスの『骨折りハンマー』貸してくれ!」


そう言って俺からモンスター解体用の道具を借りていき、クラリスはなんとか数体のマシュラを討伐していた。


その間、ロロイは水中のガマシュラを遠隔打撃で必死に叩いていたが、途中で諦めてクラリスと一緒にマシュラを倒しはじめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ