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02 ポポイ街道のモンスター①

「アルバス。モンスターなのです!」


ポポイ街道を北に進んでいると、不意にロロイの声が響いた。


この整備された街道のど真ん中でも、時にモンスターが襲ってくる。

ポヨポヨと薄い皮膜に包まれたスライムが俺たちの進歩に立ち塞がっていた。


「さて、わたしたち護衛の出番だな」


クラリスがやる気満々でウシャマから飛び降り、ロロイと共にスライムに向かって走っていった。


ポポイ街道の生息モンスターはスライムやデカスライム、そしてマシュラだ。


スライムとマシュラは、比較的綺麗な水辺に生息するモンスターなので、キルケット周辺だと主に北側と東側に生息している。


スライムは体高50cmくらいの、薄い皮膜に覆われた粘液状モンスター。そして、上位種のデカスライムになると、体高は1〜1.5mほどになる。


マシュラは、硬い甲羅に覆われた動きの鈍いモンスターだ。

単純に甲羅が硬くて倒すのに苦労するのだが、あちらからは襲ってはこない。


先程から、街道上に何体ものマシュラがのそのそと移動しているのだが、若干邪魔なだけでそれ以上の問題は特になかった。


そんなわけなので、ポポイ街道で戦うことになるモンスターは大体がスライムだ。

そしてスライムというモンスターは、倒し方を知っていてその手段さえもっていれば、駆け出しの冒険者でも簡単に討伐できる初級のモンスターだ。


そう。やり方を知ってて、手段を持っていれば……


「だぁー! 何だこいつら。ポヨポヨしててめちゃくちゃ弱そうなくせに、剣が全然効かないじゃねーか!」


意気揚々と飛び出していったクラリスが、早速悲鳴を上げている。

斬る、突く、叩く。クラリスが剣によって繰り出す全ての攻撃が、スライムの身体の表面で弾かれてしまっていた。


「クラリスは、スライムとはかなり相性悪そうだなぁ」


スライムはかなり特殊なモンスターだ。

初級に分類されるモンスターでありながらも、表面に「魔障フィールド」という特殊なマナの被膜を持っている。

この魔障フィールドが少し厄介で、物理的な打撃や斬撃なんかは全て弾かれてしまうのだ。


魔障フィールドのイメージとしては、人間のスキルでいうところの「鉄壁」のようなものだ。


「なんだ、スライム初めてなのか? 油断してると張り付かれて、服とか溶かされるぞ」


バージェスがちょっと面白がりながらクラリスをからかう。


クラリスのような、攻撃手段が単純な物理攻撃しかない剣士にとっては、スライムはかなり厄介な相手だ。


バージェスが余裕たっぷりにクラリスをからかえるのは、本人が魔法剣士だからだろう。


魔障フィールドを破り、スライムを倒す方法は「魔術で攻める」ことだ。

スライムの魔障フィールドはかなり脆いので、どんなに弱々しくても、魔術で攻撃しさえすれば簡単に壊せる。

魔術師がいるようなパーティならば、例え駆け出しの初心者パーティてあっても、逆に倒しやすいモンスターだとさえ言える。


だから、魔法剣士バージェスにとってスライムは全く脅威ではないのだ。


小火炎魔術フレア


バージェスが呪文を唱え、右の手に初級火炎魔術を発動させる。

そしてそれをそのまま、足元のスライムへと叩きつけた。


バージェスの魔術攻撃により、スライムの魔障フィールドは簡単に弾け飛んだ。


そしてバージェスは、そのまま剥き出しになったスライムの体内のコア部分を素手で貫いた。

魔障フィールドさえなければ、スライムの身体は素手で貫けるほどに柔らかいのだ。


「アルバス、素材(スライムコアの皮膜)いるか?」


「もちろん」


『スライムコアの皮膜』は、その名の通りスライムのコアを形成していた薄い皮膜だ。


加工して皮袋の内側に貼り付けて防水に使ったり、色々と使い道がある。

持って帰って素材屋に売れば、それなりのマナにはなる。


「劇場で大儲けしてるってのに、まだこんな小銭稼ぎの素材が欲しいのか?」


元々素材にはほとんど頓着しないバージェスが、マジで呆れたように聞いてきた。


「そりゃな。1マナを笑うやつは、1マナに泣くんだよ」


言いながら、以前聞いたジルベルトのセリフを丸々パクッていることに気づいて、ちょっと嫌な気持ちになってしまった。


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