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01 ポッポ村への出立

西大陸商人ギルド編① 〜北の村での仕入れ編〜

の37話+余談1話、投稿終わりました(7/2修正)


今回は、主人公があまり直接的な活躍しないです。代わりに護衛の皆さんが色々と頑張ります。

苦手な方はご容赦ください!

俺たちの商隊がキルケットの北門を通り抜けると、すぐ右手に広大な湖が見えてきた。


「デカいなー! キルケットの近くにこんな大きな湖があったのか!?」


クラリスが少し興奮気味にそんな声を上げる。


「キルケット湖だな。キルケットの北西側の地区では、普通に生活水源にしてるんだぞ」


ヤック村に流れて来る以前はキルケットで暮らしていたというバージェスが、したり顔で解説を加えた。

流石に飲み水にはしていないようだが、キルケット湖の水は、水浴びや洗濯用には普通に使われているらしかった。


ちなみに飲み水は基本、井戸からの水だ。


俺たちは1人1頭ずつで、4頭のウシャマに乗って街道を歩いていた。

俺の乗るウシャマを中心に、右手にクラリス、左手にバージェス、そして前方にロロイの乗るウシャマが歩いている。

荷馬車こそ引いてはいないが、見るからに商隊といった風情だ。


まだキルケットに程近いということもあり周辺にはちらほらと冒険者達の姿が見え、俺たちの姿を遠巻きにしながらクエストなどに精を出しているようだった。

おそらくは駆け出しの類だろう。


「クラリスは16年もキルケットに住んでて、キルケット湖を見たことがなかったのか?」


「う、うるせぇな。冒険者やり始めるまでは、そもそもキルケットから出たことすらなかったんだよ」


俺が思わずそんな口を出してしまったら、クラリスが怒り口調で反論してきた。

そしてそのまま、クラリスは少し怒って少し先にいってしまうのだった。


「そう言えば、クラリスはお嬢様だったな……」


大貴族である故キルト・ウォーレンの娘で、現在のキルケット貴族No.2の権力者であるジルベルト・ウォーレンの腹違いの妹。

今は俺の護衛をしてもらっているわけなのだが、本来ならばクラリス自身が護衛つけて出歩いてもおかしくないような身分だ。


「お嬢様とかそういうこと言ってると、またクラリスにドヤされるぞ? あいつ、最近そーいうの結構気にするからよ」


バージェスは半笑いになりながら、クラリスを追いかけてウシャマを進めていった。


「へいへい、気をつけるよ」


そんなバージェスの背中に気のない返事を返し、俺とロロイが並んで二人を追いかけた。

別にそこまでしっかりと隊列を組んでるわけでもないし、この付近は見通しもよくモンスターも弱い。なんとなく固まっていれば十分だろう。


俺たちの今回の目的地は、西大陸の最北に位置する漁師の村「ポッポ村」だ。

ポッポ村の沖合にはトドロスという特有種の海獣が生息しており、その素材から作った武具には水属性系統の付与スキルが付きやすいことで有名だった。



→→→→→



今俺たちが通っているこの街道は通称「ポポイ街道」と呼ばれている。

街道の北端にあるポッポ村と、中間地点にあるトトイ神殿跡地の名を混ぜ、いつしかそう呼ばれるようになったのだ。


キルケットから、今回の旅の目的地であるポッポ村までは、徒歩で大体2日間の行程だ。

ウシャマを使えばもう少し短縮できるだろうが、どちらにしろ1日ではポッポ村まで辿り着けないだろう。

だから今日は、中間にあるトトイ神殿跡地で泊まる予定だ。


俺の前方を行くロロイは、鼻歌なんか歌いながらかなり上機嫌だった。


「トトイ〜トトイ〜大神殿! 楽しい楽しいトレジャーハント〜」


「あのなぁロロイ……あそこは本当に、ロロイが期待してるようなトレジャーハントができるような場所じゃないんだぞ…」


俺の呟きは、ロロイの鼻歌にかき消された。


「トレジャーハントなのです〜!」


「……」


トトイ神殿跡地。

それは、今からおよそ200年前まで栄えたエルフの神殿の残骸だ。

かつて西大陸に人間が攻め込んできた際に、人間によって占拠された。

そしてそのまま略奪のかぎりを尽くされたため、残っているような貴重品は皆無だ。


ただ、場所的にはキルケットとポッポ村とのちょうど中間地点であり、行き来する行商人が寝泊まりするのにちょうど良い。

そのため、今では何軒かの宿屋が立ち並ぶ宿場となっている。


そのついでにトトイ神殿跡地を見学していく商人が多く、それで「観光地」などと揶揄されているのだった。


ヤック村やモルト町は大した産業がないので、アース街道は荒れ放題のまま放置されていたのだが。

ポッポ村とキルケットとは、もともとかなり盛んに行商人の行き来がおこなわれていたために街道がかなり整備されている。

その果てに、より行き来しやすいようにと中間地点にはそのような宿場までができているのだった。


ちなみにだが。

最近はヤック村やモルト町も、モーモー焼きや薬草文化が見直されつつあるため、どうやらアース街道を整備する事業が立ち上がり始めているという話を聞いていた。


アルカナもヤック村の大旅館の女主人として、いくらかその事業に出資しているらしいという話を、アルカナからの手紙で聞いていた。


キルケットのミストリア劇場も軌道に乗っており、ミトラの木人形を買い求める客も途切れることなく増え続けていた。


俺の妻たちは、それぞれに自分の仕事をきっちりとこなしていた。


「俺も負けていられないな」


まずはギルドから任されたこの仕事をきっちりとやり遂げる。


『北のポッポ村に赴き、トドロス80体分の素材を仕入れてくる』


それが今回、西大陸商人ギルドから俺が引き受けた依頼の内容だった。


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