40 錬金術師の余談
いつも通り、余談と言いつつほぼ本筋ですm(_ _)m
そしてこれは余談だが…
ミストリア劇場は、次々に打ち出した俺の施策がヒットし続け、継続的に多くの人出で賑わい続けることとなる。
さらに後ほど、紆余曲折を経てウォーレン家からの庇護を受けることとなり…
それが決定打となって、完全に他の追随を許さぬ勢いとなっていった。
そうして、破竹の勢いで西大陸中にその名を響かせ、ついには『西大陸の歌劇文化の中心地』と呼ばれることとなる。
後にその劇場主として着任した人形細工師のミトラは。多くを語らず、いつも静かに吟遊詩人たちの唄う詩に耳を傾けていた。
そんなミトラが、大商人アルバスの妻であることを知るものは、実はそう多くはなかったという。
だが、それとは別に。
ミトラの名はやがて世界中に轟くこととなる。
『幻の錬金術師ミトラ』
後に大商人アルバスから、王侯貴族や名のある冒険者たちがこぞって買い求めたという、精巧で繊細な作りをした装飾品の数々。
その材質は宝石や貴金属に留まらず、海龍の皮膚や魔獣の骨格などから作り出されたものもあった。
それでいて加工の痕跡すら存在しないそれらの品々には、通常ではあり得ないような高性能なスキルがついていることもあったという。
王侯貴族の求める工芸宝飾品としても、冒険者の求める武具としても、いずれとしても最高級の品である、それらミトラの作品の数々を見た王侯貴族や商人たちは皆こぞってこう口にしたという。
「これはまさに、幻の錬金術の成せる技!」
そうして『幻の錬金術師ミトラ』の名は世界中で知られることとなっていった。
その『幻の錬金術師』が、ミストリア劇場の物静かな劇場主と同一人物だと知る者は、ごくごく親しい一部の者達だけだったという。
…というのは。
まだまだずぅぅぅーーーっっと先の話だ。
実際のところ。
俺がミトラと結婚してしばらくの間、ミトラが新たに作りだすのは何種類かの木人形だけだった。
そして夫の商売に付き合って新しいことを始めたと思ったら、それは壊れた武具の修理。
俺の、地味でせこい商売に付き合ったにすぎなかった。
だが、さまざまな装飾が施された武具や装飾品に触れる中で。ミトラの想像力はどこまでも羽ばたき、次々と新しいデザインを独自に考案していった。
そしてある王族の結婚の儀式に際して、
大商人アルバスから王族へと献上された、6大精霊を型取ったとされる6つの素晴らしい彫刻。
それは『ミトラの6大精霊コレクション』と呼ばれ。その細工の素晴らしさに加え、6体全てに幸運を招くスキルが付与されていたことから、王族の結婚の儀式の際には必ず会場に引き出される国宝級の品となっていった。
そして、大商人アルバスが扱うミニチュア版『ミトラの6大精霊コレクション(1/20スケール)』もまた、相当な高値にもかかわらず貴族や裕福な平民たちを相手に、飛ぶように売れていった。
そして、そんな作品の数々を手掛けた『幻の錬金術師ミトラ』の名はやがて…
大商人アルバスの名と共に、世界中に轟くのであった。
錬金術師編、およびオークション編はこれにて完結です。
次の第6章は、いまだに構想がごちゃついてるので、投稿できるのはけっこう先になるかもです。
もしくは、小話を膨らませて10話程度の軽いやつにするか…ですかね。
いつも通り出たとこ勝負は避けて。ちゃんとひと段落つくところまで仕上げてから投稿する予定です。
それでも投稿中にけっこう修正加えてるので…ww
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