02 アルバスの4つの仕事①
そうして、ふた月もヤック村とモルト村を拠点に生活をしていると、ギルドの職員や、常連の冒険者なんかとも少しずつ顔見知りになってきた。
「あいつだぜ。勇者のパーティにいたのに、弱すぎて追い出されたって奴」
一時はそんな悪評を立てられたが。
いっぺんの嘘もない事実なので、仕方がない。
「それがどうした! 弱くて悪いかー! だはははははは」
ライアンの妻達に虐げられてきた日々なので。
元々変なプライドとかは持ち合わせていない。
俺はそんな悪評を耳にするたび、堂々と笑い飛ばしてやった。
「俺は、勇者ライアンのパーティにいた頃から、プロの荷物持ちなんだよ! 本日はいかがされますか!?」
何せ、俺。
マジで弱いから。
むしろ、勇者パーティにいたということで、
変に戦力として期待される方がキツい。
「あ…ところで、薬草買わないかい?」
長い大きな耳が特徴の、小型草食モンスター「ウッサ」ですら。
相手が早すぎて、1発も攻撃が当てられないので倒せないのだ!
ウッサは、駆け出しの冒険者や。
下手すりゃその辺の街娘にだって討伐できるレベル。
マジで俺には、戦闘の才能がない。
ちなみに、今の俺は「クエストの荷物持ち」に加え、3つほど金になる仕事をして、そこそこの生計を立てていた。
簡単に紹介する。
1つ目は「ガイド」だ。
街道だろうと、森の中だろうと、山の中だろうと、俺は一度通った道はほとんど覚えることができる。
そのため、ふた月も色々な冒険者にくっついてクエストに行き続けていたら、付近のだいたいの地理を丸暗記していた。
街道はともかく、この付近の森や山はなかなか入り組んでいて、付近を縄張りにしているベテランの冒険者でさえ、たまに迷うことがあるらしい。
慣れていれば、太陽の動きや、風向きやモンスターの生態なんかを頼りに、ある程度方角を絞って進み、知っている地域まで戻ることもできる。
だが、駆け出しで不慣れな冒険者にはそんなことはできない。
毎年何十人もが遭難して。そのまま行き倒れてモンスターのうんこになっていた。
クエスト中に、そんな冒険者たちの亡骸を発見することも多い。
暗黙のルールで、ヒトの亡骸は倉庫には入れない。
大抵は、身分がわかるものを持参していればそれを取って、ギルドへ届け出ておしまいだ。
冒険者であれは、首から下げてるギルドの登録証。
行商人であれば、商会の登録証などだ。
話を戻すと「ガイド」とはつまり。
朝一からモルト町のギルドで張りこみ、付近の道に不慣れそうな冒険者に案内人として同行することを提案。そして案内人として同行する代わりに、クエストの分け前をもらうという仕事だ。
「冒険者の旦那。ガイドはいらないか? あんたこの辺に不慣れだろう」
何度かそんなことをやっていると、逆に冒険者の方から、俺に道案内を頼んでくることもある。
「初めて行く方面だから、ちょっと頼むぜ」
「山道や森って、入り組んでて苦手なのよね」
みたいな感じ。
ちゃんとしたパーティには、ちゃんと道が読めるやつがいるから。
俺が声をかけるのは、もっぱらソロかちゃんとしてないっぽいパーティだ。
もちろん「荷物持ち」と一緒に行うことも多い。