9話 お嬢様と手作り肉じゃが
「お嬢様、昨日は失礼いたしました」
「ん……私より周りのメイドさんに謝った方がいい」
……お嬢様ってかなり大人びているのに、正直な子どもの部分が残っていらっしゃるので私のガラスの心をたまにお砕きになられますね。
お仕事のミスから手抜きのポテトチップスになってしまったこと、結果的にお嬢様はお喜びになられていましたけれど私としては納得いっていません。なので私は今日……
「お嬢様、今日のお夜食は私の……手作りでございます」
「手作り……しずく、料理できたの?」
「ぐふっ……私ってそんなだめメイドに見えますか!?」
まぁ否定はしませんけど。基本的にお嬢様直属メイドたちの中でミスをすると言えば私ですから! ドヤ!
そんな意味のないことを誇っていると、お嬢様のグルメなお腹の虫がグゥ〜と可愛く音を立てて私の持つタッパーを要求してきた。お腹の虫が素直なのは天才幼女も凡人も変わりありませんね。
「そんな汚名も返上します! こちらが私手作りの愛の肉じゃがでございます!」
「おぉ……またじゃがいもさんだ」
確かに! ドヤ顔で出したけどじゃがいも被ってる!
「ま、まぁまぁ、細かいことは気にせずに食べちゃいましょう! 自信作ですから!」
「ん。じゃがいも好きだから良い。いただきます」
「はい、私もいただきます♪」
愛知県出身の私としては肉じゃがの肉は豚だろうと牛だろうとこだわりはない。東西で割れる中心地点にいるため、その日の気分によって変えられるのです。今日はスーパーで割引されていたので牛にしましたね。
牛肉の旨味が甘い割下にしっかりと染み出して、それを吸収した玉ねぎ、じゃがいも、にんじんはそれぞれの甘さを持ってカーニバル! これぞ、これぞ手作りの肉じゃが!
「……美味しい」
「美味しいですか!? 私の手作りの肉じゃが、美味しいですか!?」
「う、うん。圧がすごい……」
はぁぁ……作ってよかったぁ。好きな人に美味しいと言ってもらえる。料理する上でこれ以上幸せなことがあるでしょうか。いや、ない!
「そういえばお嬢様、明日は学校がお休みで料亭に向かわれるのですよね?」
「ん。板長が変わったから味見」
「それならですね、私に一つ考えがあるのですよ……」
私はニヤリとした表情を作り、お嬢様に作戦を耳打ちした。




