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5話 お嬢様とフランクフルト

「お嬢様、本日もお夜食をお持ちしました」

「ん」


 毎日の夜恒例のこのやり取り。

 いい匂いがするお嬢様の部屋での秘密のお夜食。これを始めてもう1ヶ月と少しが経つんですね〜。


「今日のお夜食は、こちらです!」


 私はドヤ顔でコンビニ袋をお嬢様の目の前の机に置きました。

 お嬢様は私にペコっと小さく感謝の意を表す礼をして袋から包み紙を取り出されました。今の礼、萌えすぎですお嬢様ぁ。


「何これ。串?」


 包み紙からはみ出た串を不思議そうに見られるお嬢様。まぁお嬢様ほどの方でしたら串付きの食べ物など食べる機会は無さそうですからね、不思議に思うのも無理はありません。まぁ昨日も短いとはいえ串付きのみたらし団子でしたが。


「ええそうです。そちらを持って内容物を引っ張り出し、コンビニ袋に入ったソースをかけてお召し上がりください」


 お嬢様は私の伝えた通りに串を引っ張って包み紙から内容物を取り出した。

 中から出てきたのは一本の肉。そう、フランクフルトです。

 お嬢様は上手にフランクフルトを取り出されたことですし、私の分も取り出しましょう。


「……しずく、これ何?」

「それはソースです。ケチャップとマスタードですよ」

「そうじゃない。このソース、どうやってかけるの?」


 はっ! 失念していました。

 お嬢様のような良家の方にはコンビニのフランクフルトに付いてくるパキッと割るとケチャップとマスタードが同時に出てくる地味にすごい発明品のことをご存知ないのですね!

 まぁ私も今からかけようと思っていましたし、ちょうどいいですね。


「見ていてくださいお嬢様。私がお手本を見せますので」


 フランクフルトにソースをかける程度のことでドヤ顔ができる私。幸せ者でしょう?

 私はソースの器をパキッと折り、ケチャップとマスタードの頭が飛び出ていることを確認してフランクフルトをなぞった。

 すると茶色い一本肉に黄色と赤の線が走る。これぞコンビニフランクフルトですね。


「わかった。やってみる」


 流石は天才少女と呼ばれるお嬢様。私のソースのかけ方を一度見ただけで把握したらしく、完ぺきにフランクフルトに2本線をお引きになられました。


「お見事です、お嬢様」

「ん。いただきます」

「はい♪ 召し上がれ」


 お嬢様の小さいお口がフランクフルトに触れる。

 おっといけないいけない。見てるだけでなく私も食べないと。

 私もお嬢様に続き、フランクフルトにかぶりつく。

 ジュワッとはじけた肉汁にケチャップの甘酸っぱさとマスタードのキレ。これによって生み出される言葉は……


「……美味しい」


 そう、お嬢様の言う通りなのです。

 私がフランクフルトを初めて食べたのって小6の頃でしたかね〜。親に強制連行されたお祭りで食べた気がします。

 だとすると小4のお嬢様にとってはちょっと背伸びした食べ物かもしれませんね。


「お嬢様、少し大人びて見えますよ」

「……そうなの? そういえばしずくって何歳?」

「私ですか? 19です」

「えっ」

「え?」

「もっと若いかと思ってた」


 ……純粋なその言葉が少しだけ胸に棘として突き刺さったのでした。

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