4話 しずくとみたらし団子
「お嬢様、本日もお夜食をお持ちしました」
「ん」
しずくは何やら白いビニール袋を持っている。昨日持ってきてくれた牛丼の袋に似ているけど、サイズは一回り小さい。
なんだろう、と思っていたら醤油の香りが鼻先をつついた。
「ふふ、お嬢様ならばもうこの中に何があるかお分かりですか?」
しずくは得意げに聞いてきた。残念ながら私にはわからないけど。
「醤油を使った何か。少し甘いもの」
「ふむふむ、正解です! では正体を見てもらいましょう。こちらです!」
しずくがビニール袋から取り出したのは透明なプラスチックの容器だった。
そしてその中に、茶色くて丸い4つの玉が連なっている串が4本ある。
「しずく、これは?」
気になって咄嗟に聞いてしまった。これは恥ずかしい……。
「ふふ、これはみたらし団子です!」
「みたらし団子?」
団子はわかる。白くて丸いお餅だ。
でもみたらしは分からない。どういう意味なんだろう。
「はい! おいしいですよ!」
「ねぇしずく、みたらしってどういう意味?」
「え? えっと…………まぁ食べましょうか!」
……流された。(・ω・`)しょぼん。
しずくがプラスチックの容器を開けると、さらに部屋に甘い醤油の香りが漂った。食欲をそそる、良い匂い。
「これは食べ方わかる。こう」
「あぁ……団子にかぶりつくお嬢様……尊い」
しずくは礼儀正しく手を合わせ、何かにお祈りしている。
その間に私はみたらし団子というものを口にして、噛む。
一気に砂糖醤油の甘さが口いっぱいに広がった。そしてちょっとついたおコゲが苦さも演出して、口の中でコントラストを描いていた。
「美味しい」
しずくの持ってきてくれる料理は一言目に「美味しい」と言える。私はそれが1番嬉しいことだと思う。
しずくはこれを誰もが食べる庶民の料理と言う。そして私が普段食べる料理のことを、誰もが食べられるわけでは無い特別な料理と言う。
でも、私にとっては……
「ん? どうしました?」
しずくと食べるこの時間のご飯が、1番特別だ。