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3話 お嬢様と牛丼

「お嬢様、本日もお夜食をお持ちしました」

「ん」


 お嬢様はいたって冷静に私を待っていたようですが、その実ウキウキしていたのは分かります。

 だって……口元緩んでいますから!


「かわぇぇ……」

「しずく? 何か言った?」

「なんでもございません!」


 危ない危ない。私がロリコンでお嬢様をペロペロしたいくらいに好きだとバレたらクビにされてしまう!

 せっかくお掃除メイドから念願のお嬢様専属メイドになれたのに、ここでクビなんてあんまりです!

 というわけで、今日もお嬢様に気に入ってもらうためにご飯を持ってきたんですよ〜♪


「本日のご飯は、こちらです!」


 私は得意げにビニール袋を机に置いた。

 お嬢様は神の舌を持つ天才少女とメディアも注目されている方ですが、なぜか私の持ってくる庶民飯で喜んでくれます。

 なので私は今日、庶民のご飯と言っては避けては通れぬものを持ってきました!


「出していい?」

「はい♪ どうぞどうぞ」


 お嬢様が小さなおててで正方形の発泡スチロール製でできた容器を取り出した。


「お肉、玉ねぎ、お米?」

「そう、これは牛丼です!」

「牛丼……」


 あの超人気チェーン店、「だいすき家」の牛丼です! 庶民なら誰しも一度は食べたことあるでしょう。吉原家や小松家の方が好きという方もいますがね。


「お嬢様、お肉はお好きですか?」

「うん。でもいつも見るお肉とは違う気がする」

「そうでしょうとも。お嬢様が普段食べられているお肉はおそらくA5ランクのものばかりでしょうからね」


「だいすき家」の牛丼にそんな概念はありません! 安い、速い、そこそこ美味い! これが大事なのですから!


「さぁさぁお食べください、美味しいですよ〜」

「うん。いただきます」


 小さいおててを合わせ、「いただきます」をする様はもう天使! おっといけない、私も暖かいうちに食べないと。

 プラスチックの蓋を取り、ムワッと牛丼の甘い香りが部屋に広がった。

 割り箸で牛肉を掴み、玉ねぎ、ご飯を巻いて口へ運ぶ。これが宵街しずく流の食べ方です。


「ん〜〜、あま旨い」


 汁だくにして正解でした。ほんのりとしたタレの甘さと肉と玉ねぎ、ご飯の甘さが口に広がりますね〜。


「ん……美味しい!」

「ふふ、それは良かったです」


 舌が肥えているお嬢様でも美味しいと感じられるとは。「だいすき家」も名誉なことでしょうね。

 そこからお嬢様は夢中になって牛丼をかき込まれた。わかります、早く早く口へ運びたいですよね。

 食べ終えたお嬢様は満足そうに表情を緩められた。口元にご飯粒が付いているのがまた尊いですね。指で取ってあげましょう。


「お嬢様、ご飯粒がお付きですよ」

「本当? ありがと。あむっ」

「ひょ!?」


 なんとお嬢様は私の指についたお米をパクりと食べられてしまった。

 お嬢様の唇の感触が私の指にダイレクトに伝わる。


「しずく? しずく?」

「あぁぁ……尊い」


 メイドになって良かった。

 心からそう思ったのです。

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