25話 お嬢様とおにぎり
「お嬢様、本日のお夜食をお持ちしました」
「ん……時間なかった?」
「な、なぜそれを!?」
「それ、コンビニの袋でしょ? それを持っているとき、だいたいしずくが仕事でミスをして時間がないとき」
鋭いですねお嬢様……流石ですと言いたいですが、もう少し人の心を持っていただきたい! こっちだってミスして泣きそうなんですよ〜。メイド長に怒られますし。
「……どんなミスをしたか聞いても?」
「お嬢様の写真ファイルを個人USBにこっそり移そうとしたらバレました」
「……?」
ミスというか、私情が出たというか、まぁそんな感じですよ。今回はそんなに迷惑をかけていません! メイド長にしこたま怒られただけです!
「ま、まぁ仕事の話はいいでしょう。それより! 今日はこちらです!」
「これは……三角形」
「そう、こちらはおにぎりです!」
名前を言ってもあまり分かっていない様子のお嬢様。おにぎりを知らないとは……母上様はお嬢様におにぎりを握ってあげたこともないのですね。
「ま、まぁ食べてみましょう! 美味しいですよ!」
勝手に私一人でしんみりするわけにはいきません。ここは強引にでももう食べてしまうことにしましょう。
「どうやって食べるの? これ」
「……あぁ! そうですよね、コンビニのおにぎりの袋って初見だと難しいですよね」
もう当たり前になった3回構造のおにぎりの袋。私はそれを丁寧に説明して、お嬢様もスラスラと覚えられた。
「では、いただきます」
「ん。いただきます」
おにぎりにかぶりつくと口の中にマイルドなジャンキーさが襲ってきた。そう、中身はツナマヨです。ツナの和風な旨味とマヨネーズの化学の旨味。ダブル旨味で最高です!
「美味しい」
「ですよね〜♪」
「これなら私でも作れそうだけどどうなんだろう」
「おにぎりは手軽に作れますよ。こんどいつかお料理体験、してみますか?」
「ん……やってみたい」
ふふ、素敵な予定、できましたね。




