18話 しずくとショートケーキ
「お嬢様、本日のお夜食をお持ちしました」
「ん」
今日しずくが持ってきたのは白い箱。いつものビニール袋率の高さを考えたらかなり珍しい品物だとわかる。
しずくは多くを語らず、焦らすことなく白い箱を開けた。中に入っていたのは未知の食べ物……ではなく、よくデザートに出るものだった。
「ショートケーキ……?」
「そうです! ショートケーキです!」
「……よく食べるけど」
そう、私はショートケーキをよく食べるから珍しいものではない。しずくにしては珍しいミスだなと思ったけど、しずくに言わせるとそうじゃないらしい。
「お嬢様がお食べになるショートケーキは一流パティシエが作ったものでしょう? それではダメです! もっと街の! そこら辺にある! 何気ない洋菓子店! 意外とそんなところに銘菓は潜んでいるんですよ」
「ほ、ほう……」
しずくはテンション高く街の洋菓子店さんの貴重さについて多くを語った。
「食べてみればわかりますよ。きっと一流パティシエのものとは別物だと」
「わかった……食べてみる」
まぁ他のお仕事についてはノーコメントとしても、しずくへの食に関する信頼は揺るがない。だから私はしずくの言葉を信じてみることにした。
ショートケーキにフォークを刺してみるといつもより抵抗があった。謎に思ったけどそのまま突き刺して、口に運ぶ。
ふわっとした甘さの中に強烈な酸味が後追いをしてきた。この二重構造……
「美味しい」
「ですよね!」
いつも食べるショートケーキはいちごも甘い。でもこのショートケーキに乗っているいちごはかなり酸っぱい。それがいいアクセントになっていた。
「お嬢様はショートケーキ、お好きですか?」
「うん。好き」
「ならウェディングケーキもショートケーキにしましょうね」
「……(・ω・`)?」
はぁはぁ言ってるしずく。たまにこういう症状が出るから心配だ。今度ドクターに診てもらおうか。




