14話 しずくとアイスクリーム
「お嬢様、本日のお夜食をお持ちしました」
「ん」
今日は昨日のおでんのようなお鍋じゃないし、普段のように袋に入ったものでもない。
今日しずくが持ってきたものは……水色のカップだった。
「しずく、それは?」
「こちらはハイパーカップ。庶民のアイスクリームです」
アイスクリームは食べたことがある。ねばっとしてて、ビヨーンと伸びるものからそうでないものまで、多種多様なアイスクリームがデザートとして出された。
「今蓋を開けますね〜」
しずくはパカっと蓋を取って、中にある薄い蓋も剥がした。するとその奥に見た感じ固そうな、私の知っているアイスクリームとはちょっと違うものが詰まっていた。
「なんだか固そう。美味しいの?」
「たしかにお嬢様の口に入るアイスクリームは、すべて柔らかめ。それは市販の業務用アイスを食べているのではなく、職人がその場で作ったものだからです。しかしっ! 庶民が食べるアイスクリームといったらまず見た目は固いように見えるんです!」
「なるほど……スプーンちょうだい」
よくわからないけどわかった。
しずくはスプーンを渡してきたけど……何これ。木?
「木で作られたスプーン?」
「はい! コンビニアイスはそういうものです!」
そうなんだ……と納得してハイパーカップの表面にスプーンを当ててみると……固い。予想通り。
なかなか非力な私ではスプーンがアイスに侵入せず、表面のガリッと削れた部分だけを刈り取ることができた。
それを口に運び、口腔内温度が一気に下がったことを感じる。そして同時に広がった甘さとクリーミーで濃厚すぎる味わいから出た結論は……
「美味しい」
「ですよね!? コンビニアイス、美味しいですよね?」
「うん」
これでもかってくらい暴力的に甘いけど、それはそれで良し。
「これ、ウチの猫が蓋に付いたアイスを舐めるのが好きなんですよね〜」
「へぇ、しずく猫を飼っているんだ」
「はい。そういえばお嬢様の家ではペットを飼われていませんね」
「お父様が動物嫌いだから……」
「な、なるほど」
だから本当は猫や犬を飼いたいなんて、言えない。
今度、しずくに猫の写真、撮ってきてもらおう。




