魔法の属性
この世界に魔法が生まれた時、その種類は7つだった。
・火
・氷
・風
・木
・土
・雷
・水
この7つを「基本7属性」と呼び、この7つの属性は「第1世代」と呼ばれていた。
例えば、俺は水属性のみを使うことが出来る魔導士なので第1世代の魔導士ということになり、魔導士の大半はこの第1世代に分類される。
しかし、近年になるとこの「基本7属性」とは別に「光属性」と「闇属性」の2つの基礎属性が新たに発見……というよりも生まれた子の中に見られるようになった
その結果、既存の7属性にこの2つを合わせて「基本9属性」と呼ぶ場合も出始め、最近の文献ではむしろこの呼び名で通るようになった。
更に、魔法の進化はこれで終わりではなかった。
基本7属性の内で2つの属性を合わせ、新しい魔法を使う者もあらわれるようになり、属性は多様になり、戦局を更に混乱させた。
例えば――。
①火属性+風属性=爆風
②火属性+雷属性=電熱
③氷属性+風属性=雪
など、2つの属性を合わさった新しく生まれた属性は「複合属性」と呼ばれた。
そして、この、新たに発見された「光属性」「闇属性」と、基本7属性の内の2つを合わせて新しく生まれた魔法のことを「第2世代」と呼ぶようになった。
ただ、これに関しても法則性はなく、新しく生まれる魔導士が必ず第2世代かと言われればそうではなく、生まれて来る子どもの大半は昔と変わらず第1世代の魔導士であることが多い。
そして、使える属性というのは生まれた時に決定し、レベルが上がることはあっても使える属性が増えることはなかった。
第2世代の方が珍しいので戦場で有利なことに間違いはない。しかし、珍しいということは同じ属性の師匠に出会えることが少なく、その力を伸ばすことが難しいとも言いかえることが出来る。
幸い、水属性である俺は師匠という点に関して困ることはなかった。火属性と並んで世界で最も多い属性の1つなので、術を極めるという点において苦労はない。しかし、他にも大勢いるということは、その中で差別化して個性を出すという点に関しては色々と試行錯誤の日々だった。
そんな俺の悩みはコゼットには無縁だが、逆に、コゼットには大きな問題が直面した。
「月光属性……第3世代か……」
俺は頭を抱えた。
学校での属性検査の結果、コゼットは「月光属性」だと判明した。
第1世代に属する基本7属性の内の1つと、第2世代に属する光属性、または、闇属性のどちらかを合わせた複合属性が「第3世代」と呼ばれていた。
月光属性というのはこの国には1人もおらず、世界でもほとんど聞いたことのない文献だけの属性だった。
第1世代である「氷属性」と第2世代である「光属性」の複合属性だということはわかっているが、それ以外は不明で、どういう術があるのかというのも確立されている。
他者との差別化に四苦八苦している俺とはまるでベクトルの違う悩みだった。
ただ、悩んでいるのは俺だけではない。
魔法戦術が趣味のコゼットは、どうすれば自分の力を上手く運用できるのかに頭を悩ませていた。
「氷属性と光属性ってことでしょ? じゃあ……防御? スピード? どっちだろ?」
コゼットの悩みは俺も十分に理解することができた。
属性によって得意な術というのは決まっている、
氷属性は防御力に、光属性はスピードに長けている。問題なのが、氷属性の短所がスピードであるというところで、単純に両方の属性の良い所取りができるのか、というところが、あまりにもデータがないのでわからないことだった。
「氷属性も光属性も遠距離タイプの魔法だから、遠距離ということに変わりはないとは思うが……」
ただ、それも仮説に過ぎない。
遠距離タイプと遠距離タイプを合わせた複合属性が必ずしも遠距離タイプだという保証はない。
噂だけの話だが、この世界には「太陽属性」という属性があるらしく、その属性は遠距離タイプの木属性と、同じく遠距離タイプの「光属性」を合わせた第3世代の魔法――しかし、この属性は超近距離特化で、闇属性の魔法を打ち消すことが出来る、と言われている。
太陽属性だけが例外なのかもしれないが、第3世代の魔法というのは本当にデータが少ないので、何をどういう風に伸ばせば良いのかがわからなかった。
「属性が決まったから一緒に魔法具を買いに行こうと思ったが、これは少し調べてからだな」
近距離タイプか遠距離タイプかがわからないとそれに合った魔法具を買うことはできないので、お祝いの魔法具は少しお預けとなった。




