ギルドに連れて行かれることが決定しました。
「あああああ」
声をあげながらベットに倒れこむ。
とてつもなく長い一日だったな。神様にこの世界に送られて、走らされて、この村について……。
意味の分からないご飯を食べて、ミーアとなぜかお友達になって。
……ほんと、意味わからないなこれ。今思い返してみるとアホみたいな出来事ばっかだ。
少しだけ、あっちの世界のことを考える。
……残念ながら、俺を心配する人はいないだろうな。逆にいなくなってくれてありがとうとか思われてそうだ。
嫌な気分になり、考えるのをやめて目を瞑る。
さっさと眠ろう。眠ってこの気持ちを忘れよう。
途端に眠気が俺を襲ってくる。よほど疲れていたのか、俺はすぐに眠りについた……。
「すみません、少しお時間頂けますか?」
ばっと飛び起きる。
「え、えっとどちらさまでしょうか?」
「私です、ミーアですよすすむさん」
「あ、ああ……いま開けますね」
眠りかけていた目をこすり、立ち上がってドアを開ける。
「すみません、寝てましたか?」
「いや大丈夫ですよ」
「ん、また敬語ですね」
「ああ……えっと、大丈夫だよ」
満足げに頷くミーア。
「ちょっとお邪魔してもいいですか?」
「あ、うん」
部屋に入ると、あたりを見回して一言。
「案外普通なんですね……」
「へ? 普通って?」
「いえ、そこまでの戦闘力がありながら武器が二本おいてあるだけっていうのが」
戦闘力……? なんじゃそりゃ。
「でも、弱い武器でも十分に対処できるということでしょうか」
「……?」
「えっと、それでですね、さっそくお話の本題に入ろうと思うんですけど」
「あ、うん」
と、急に頭を下げるミーアさん。
「ちょ!?」
「お願いです、村を救ってください!」
「……は?」
思わず素っ頓狂な声が出る。
「きっと聖騎士さんですよね!? お願いです!」
「いやちょっと待って! まったく意味が分からないんですけど!?」
突然の村を救ってくれ発言からの聖騎士認定のコンボで俺の思考を破壊してくる。
「え、えっと、違うんですか?」
「いや、違うも何も聖騎士ってのが分かんないし……」
ぽかーんとしたような顔をするミーア。
「見間違えたんでしょうか……? いえ、そんなはずはありません……現に今も……」
「いや……え?」
ぼそぼそと何かを考えるように、ミーアが俯く。
「えっと……」
「あ、はい……その」
と、なぜか俺の手を握るミーア。
「へ?」
「……やっぱり間違ってない」
「いや……え?」
「あ、すみません」
何かを確認したような仕草をした後に手を放すミーア。
いや本当に意味が分からないって! なにがしたいのかわかんないって!
「いやなにしてるの?」
「あ、えっとですね、レベルを見てました」
「……レベル?」
なんじゃそりゃ。いや知ってることは知ってるけど意味が分かんないんだけど。
「いや、レベルってなに……?」
「知らないんですか? この世界の常識ですよ?」
戸惑いの目が俺に向けられる。いやこの世界の常識とか知らないから! 言えないけど別世界人だから!
「ふむ、ではお教えしましょう。レベルとは!」
「とは?」
「強さです!」
「驚くほどシンプル!」
シンプルすぎて逆にびっくりしたわ。
「私にはそれを計れる、いわゆる特殊能力が備わっているんです。特別なんです。」
「へ、へえ……」
なんか急に情報量多くなったな。
「私の場合、調べようと思えば誰でも見れるんです。正確な数値とかは分かりませんが、オーラ、みたいなのの色で分かるんです」
「へ、へえ……」
「基本的に高いほど強いです。レベルだけじゃなくて、攻撃力とかもありますけど、私にはそういうのは分かりません」
「あ、うん」
とりあえず、俺が知ってるレベルと同じようなものだってことは分かった。
「それでですね、すすむさんのレベルがあまりにも高かったので聖騎士様なのかなあと……」
「あ、ああそういうこと……」
俺そんなに強いの? まじで? おそらくだけど聖騎士ってかなりの強キャラだよね?
「でも、違うんですよね……?」
「あ、うん。全然そんなんじゃない」
「そうですか……」
と、シュンとするミーア。
「いいえ! でももしかしたらということもあります!」
「……は?」
「正確に検証しないといけません」
「いやなに言って」
「ということで、ギルドできちんと調べます。レベルだけじゃなくて、その他もろもろ調べさせていただきます」
「いやちょっと待って」
「では明日の朝に出発しましょう。早めに寝てくださいね」
「いやいやいやいや」
「ではお休みなさい」
バタンとドアを閉めて出ていくミーア。
部屋で一人ぽかーんとしている俺。
「いや……え?」
なんかよく分かんないけど、とりあえず“ギルド”とやらに行くことになったみたいです……。