村に向かうことにしました。
温かい風が俺にあたるのを感じて、ゆっくりと目を覚ます。
「うっ……」
太陽の明かりの眩しさに顔をしかめながら、あたりを見渡す。
見た感じ、野原のような感じだけど……。
「何もないんだけど」
本当に何もない。いくら目を凝らしても何も見えない。
ま、まさかこのまま孤独死とかないよな? 食料が無くて餓死とか無いよな!?
……心配になってきた。とりあえず歩こう。
と、立ち上がると、腰のあたりからじゃらじゃらと音が鳴った。
「ん?」
目を向けると、小さい包みが腰に下げてあった。
取って中を開けてみると、
「なんだこりゃ……お金?」
ゲームとかで見るようなコインが詰まっていた。
「そういえば、あの神様がお金をなんたらって言ってたな」
まあ、使いどころがなければ意味がないわけで。
「とりあえず、人が居る所に向かいたいんだけど……」
さっきも言った通り何も見えないから、どこに行けばいいのかわからない……。
と、包みの中に何かが見えた。
「これは……地図?」
って言っても、一面緑なわけだけども……地図って判別できるのが方位記号だけって、どんなところなんだよここ……。
「うわ、拡大とか、スクロールまでもできるのか。すっげえハイテク……」
スクロールしまくって村らしきものを探してみる。
「あ、小規模だけどあった……ここから五キロ……五キロ!?」
遠くね!? めちゃくちゃ遠くねえ!?
これ……歩くしかないよね……? 俺の脚大丈夫……?
ま、まあここでうじうじしててもしょうがないし……。
……行くしかないよね……行くかあ。
ゆっくりと歩き出す。
それにしても、本当に何もないんだな……花と草だけしか見当たらない……。
ちょっと幻想的だな……
……。
…………。
このまま五キロか……。
なんかこう、魔法とかでぱぱっといけないかな?
「こう……この村みたいなのにテレポート」
……何も起きない。まあ、そんなうまい話あるわけないよね……。
「じゃあ……速度を上げるとか?」
頭の中で魔法をイメージしてみる。すると、
「……まじか」
足元に魔法陣が現れて、光を残して消えて行った。
「走ってみるか」
勢いをつけて、走り出してみる。
「うおおおおおおお!! 速い! 景色が流れていく!」
風が気持ちいい! すっげえ!
でも、あんまりスピードあげると風がすごいことになりそうだな……。
自然とまったく疲れないのは、魔法の影響なのか?
そんなことを考えながら、ひたすら走っていると。
「あ、見えてきた見えてきた」
街の入り口、木の門が見えてきた。
そろそろ魔法を解いて……。
鍵を外すようなイメージをすると、案外簡単に魔法が解けた。
「うわ、さっきまでとのギャップがすごいことになってる……歩くのにちょっと抵抗が……」
少し手間取りながらも、門に向かって歩いて行く。
よく見ると、恐らく門番であろう男の人物がいた。
「あ、あのー」
近づいて声を掛けると。
「帰れ」
「え? え、えっと」
「お前らに与える食事はない。住まわせるところもない」
「いや、えっと」
「殺されたいのか?」
あまりの迫力に、思わずすくんでしまう。
いや、お前らって俺一人なんですけど……。
「……もしかして、お前放浪者か?」
「え? 放浪者? いや、えっと……そ、そうです放浪者です!」
いや、そうだね、ある意味放浪者だしね。別に嘘じゃないよね。
「ふむ、そうか。すまない、今少し忙しくてな」
頭を下げる門番さん。
「い、いえ! いきなり押しかけた俺のほうが悪いですし!」
「そうか。それでは中へ」
と、門を開ける門番さん。
「さあ、入ってくれ」
少しわくわくしながら、恐らく俺の始まりの村になるであろう場所に、足を踏み入れた。