不慮の事故と言うことにしました。
いつしか眠っていた俺は、何故か元の世界の、俺の家の近くの道を歩いていた。
何故だろう? とは考えずに、ただぼーっと、家に帰っていた。
「ただいまー」
ぼんやりとそう言いながら、靴を脱ぎ、家に上がる。
「あ、あら、おかえり」
おばさんがそう答えてくれるものの。
すぐに自分の部屋に行き、ランドセルを投げだしベットに寝転がった。
……あの、おばさんの目。いやそうな、なんでこいつが……という目。
俺はいやと言うほど見てきた。親が交通事故で死んで、親戚中をたらいまわしにされ続け。たぶん、これからもされ続けるだろう。
それに比例して、あの目を見る回数も増えていく。
……もう嫌になった。寝よう。寝たらその場しのぎにはなる。
毛布を頭までかぶり、目を瞑る。
俺は寝るのが得意だ。いつもこういうことをして、逃げてきたから。
だから俺は寝続ける。いままでも、これからも、逃げ続けるんだ。
「っ!!」
勢いよく飛び起きる。
「………………はあ」
変な夢を見てしまった……最悪だ。
覚めた目をこすり、隣を見る。
「………………ん!?」
なんかいるんですけど。いや、ライト達はいないんだけど。
「えっと……なんでここにミーアが寝てんの?」
本当に謎なんだけど、何故かミーアが隣で寝てる。
……あ、そういえばここ臨時の宿屋銀だったな。ということはミーアにとってはここは臨時の家なわけだ。寝ててもおかしくないな。
すやすやと寝ているミーアをみて、今日のことが鮮明にフラッシュバックする。俺が火竜を倒した時じゃなくて、その前のミーアを助けた時。
俺の腕の中でぐったりとして、もう死ぬんじゃないかと地味に焦っていたのだ。本当に良かった。
ゆっくりと音をたてないように立ち上がる。起こしたら悪いからな。
……と、細心の注意を払ってたつもりだったのだが、寝てる間に俺の指からすっぽ抜けていたのであろう指輪を思いっきり踏みつけて転倒。
「いってえ……」
そこそこの痛みに頭を押さえながら座り込む。
やっべ、起こしたかも? と思ってミーアのほうを見ると。
「……あ」
ばっちり目が合ってしまった。
「えっと……おこしてごめん」
とりあえず謝っておく。
「……んん……パパ……」
あり、寝ぼけてるだけだったっぽい。良かった。
それにしてもパパって……俺そんな老けてるのか……? と複雑な気持ちになる。
と、ミーアが立ち上がる。
「ん……」
よろよろと俺の方によって来る。いや怖い怖い。
「な、なんでしょうか御嬢さん?」
なにも言わず近づいてくるミーア。怖い、ホント怖いから。
狭いテントの中、端へ端へと詰められていく俺。
「え……いや……ミーアさん……?」
「うう……」
そのまま俺に抱き着いてくるミーア。なんだこの雑なラブコメ展開は。ふざけんな作者、もっと丁寧に作れや。
とまあこれがラノベだったらええ……ってなるほど雑な展開に文句を言っていると。
あれ? なんか泣いて……え? なんで泣いてんの!?
「行かないでください……お願いですから……」
どうにか離そうとすると、そんなことを口走るミーア。
いや、行くってどこに……。
と、そのまま眠り込んでしまった。なんか中途半端なところで物語を終わらされた気分だ。
とまあそんなことを言ってないで、ミーアを引きはがさないと。これ、見る人が見れば結構あぶない構図だし……。
内心ちょっとドキドキしてるけど。こんな美少女に抱きつかれる体験二度と無いだろうなあ……。
そう思いながらミーアを引きはがそうとするも、全然離れない。なんか力つよいな……。
「うおっ!?」
そのままどうにかできないかと悩んでいると、ぐいっと引っ張られて。
俺が寝てるところにミーアが抱き着いてるとか言う結構やばい構図が出来上がってしまった。
いやほんとまずいって。こんなとこ誰かに見られたら俺社会的に死ぬって。
俺がどうにか引きはがそうとするも全然ダメ。
……魔法、使うか。いやいやダメだ、人に魔法使うとかとんでもない。
悩んだ末、俺が出した結論は。
「はい、おやすみなさい」
諦めてもう寝ます。おやすみなさい。
寝てる間の不慮の事故ってことで。
目を瞑り、寝る姿勢に入る。
幸い俺は眠るのは得意なので、一分ぐらいですぐに眠りに入ってしまった。