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疲れを癒すことにしました。

「お前すげえな……」


 驚きすぎて表情が固まっているライトが話しかけてくる。


「いや、これを俺がやったと思うと……」


 一度、自分が倒した火竜を見て。


「やっぱ信じられないわ」


「俺のほうが目の前の状況に追いつけねえよ……」


 と、短剣を俺に渡して。


「返すよ、ありがとな」


 渡した時とあまり変わらない見た目の短剣を受け取り、腰に付いている鞘に戻す。


「やはり、お前は強かったな」


 レイさんも立ち上がって俺の方へ来ようとする。


 が、すぐによろめいて倒れこんでしまった。


「大丈夫ですか!?」


「ああ、すまないな……」


 肩を貸して、なんとか立ち上がる。


「お前かなりでかいのを一発喰らってたもんな」


 ライトも逆側に行って肩を貸しながらそういう。


「でかいのって……ああ、あの火柱か」


「あれはさすがに死を覚悟したぞ。一度もあんな炎見たことがなかったからな」


 とりあえず村人たちがいる方へ行くことを決め、そうそうに歩き出す一行。


「それにしても、なんで火竜があんなところに……?」


「ああ、それなんだがな。おそらくだが腹が減っただけだろう」


 迷惑すぎる……お腹空いて村壊滅とかほんとシャレにならない……。


 と、ライトが難しい顔をして。


「それよりもな、火山にモンスターが一匹もいなかったことの方が気になるんだよ」


「え? モンスター?」


「そ、普段なら道中絶対に襲ってくるモンスターが一匹もいなかったんだよ」


「火竜がモンスターを食べるという事例は聞いたことがないからな……火竜のせいではないと思うのだが」


 二人とも悩んだまま黙りこくってしまう。 しょうがないから俺も何か考えることにしよう……。


 と、魔法のことに考えがいく。


 そういや俺、案外簡単に魔法使えたな。いまならテレポートとか使えるんじゃ?


 よし、善は急げということでさっそく試してみよう。念じろ、念じろ……。


 場所は村人たちがいたところ……よし、いくぞ!


 ……しばらく、そのまま念じ続けてみたものの、何も起きない。


 なんでだ? なんで使えないんだ? ……あ、そういえば座標が何たらってライトが逝ってたな。


 そっか、俺がテレポートを使えないのはそれが原因なのか……。せっかくだし、この場で聞いてみるか。


「あのさ、ライト」


「なあ進」


 喋り始めがライトと被る。こういうとき、妙に気まずくなるんだよな……。


「あ、どうぞ」


「ああ、大したことじゃないんだが、お前が戦闘の時にずっと使ってた魔法、あれなんなんだ?」


「魔法? えっと……強化魔法のこと?」


「いや、そっちじゃなくて」


 となると……あ、加速魔法のことか。


「あれはただ単に自分が速くなるだけっていう魔法」


「へー、そんだけなのか。てっきりめちゃくちゃやばい魔法かと」


「やばいってなんだよ……」


 ライトが少し考えるようにしてから。


「それ、俺達にもかかったりしないか?」


「加速魔法をってこと?」


「そういうこと」


 うーん、試したことないからわかんないな……。


「ちょっと試しにやってみる」


「おう」


 二人に加速魔法を付与、加速魔法を付与……。


 と、二人の足元に魔法陣が。


「お、やっぱできるのか」


「本当にできた……」


 レイさんが、これで移動は楽勝だなと笑う。そうだな、とりあえずスピードは格段の上がるよな。


「よし、ちょっと走るか」


「了解だ、私もひと踏ん張りする」


 そういうやいなや、すごいスピードで走っていく二人。


 置いて行かれまいと俺も急いで出発。そのままハイスピードで目的地目指して駆け抜ける。


「お、見えてきたな」


「さっさと休みてえ……ぐっすり寝てえ……」


 二人が疲れ切った顔でそう言う。ボロボロになった鎧も、休ませてくれとぎしぎし悲鳴を上げている。


 俺も尻尾にぶっ飛ばされたせいで若干全身が痛い……戻ったら休養しよう。


 そんなことを考えているといつの間にか目的地に付いていて。


 俺達が来るのが見えたのだろう、大勢の村人が神妙な面持ちで待っていた。


「どうだった?」


 ギルド長が話しかけてくる。


「無事討伐でした。っていっても、全部進がやってくれましたけどね」


 ライトが人に接するときの敬語モードで受け答えする。


「え、ほんと?」


「ああ、本当だ。何発だったか……確か二発でしとめたな」


 ざわざわと声が上がる。それと同時に、俺に大量の視線が集まる。


 やばい、こういうのに慣れてないせいで変な汗出てきた……。


「詳しく話を聞いておきたいところだけど、今は疲れてるだろうし休んどいて。私はテレパシーでいろいろやっておくからさ」


「恩に着ます」


 前に俺が着た時とは違い、いくつもテントが立っていた。村人の半分ぐらいの量はあるんじゃないかと思う。


 と、誰かに服の裾を引っ張られる。


 振り返ると、


「あ、ミーア」


 すると、近づいてきて。


「無事でしたか?」


「ああ、なんとかね……」


「そうですか、なら良かったです」


 ほっとした顔をするミーア。


「リリアさんから飛び出していったと聞いて何事かと思いましたよ」


「あ……その件はすいません……」


「いえ、謝ってほしいんじゃないんですけど……えっと、今はとにかくゆっくり休んでください。さ、こっちです」


 ミーアがライトとレイさんも呼んで、四人で一番奥のテントへ向かう。


 横に長いテントで、人が何人も寝れるようになっていた。


「ここです、臨時の宿屋銀です」


「ありがとうなー」


「わわ、私は子供じゃありませんので!」


 ライトが頭をなでると顔を真っ赤にして反論するミーア。どうやら子ども扱いを受けることがいやらしい、と今気づいた。


「鎧とか剣とかは、こっちのテントに置いてください」


 そこには、おそらく村人の武器だろうものが二十は置いてあった。


他の武器に混ざらないように武具を置いて、さっきの臨時宿屋銀に戻る。指にはめてあった体力増加の指輪はなくしそうなのではめておくことにした。


「とりあえず、臨時ですがヒールもかけておきます。あとできちんとポーションを渡しますので」


 と、ヒールもかけてもらい、床に寝転がる。


「では、ごゆっくり」


「ああ、ありがとう」


 ライトが若干子供に言うような声色で言ったため、少し顔をむっとさせながら去るミーア。


「はあ、寝転がったら眠気が急に襲ってきやがった」


「そうだな。今回はぐっすり眠れそうだ」


「まあそんなわけにもいかないけどなー」


 目を閉じかけているライトに、質問を。


「そんなわけにもいかないって……?」


「ああ、ここ平原になってるだろ?」


 うん、確かにあたりを見回しても平原しかない。かなり奥に山が見えるけど。


「それで見渡しがいいせいで、モンスター……っていうかゴブリンとかの魔物がたまーに襲ってくるんだよ」


「ああ、そういうこと……」


「しかもそれがたまに量が多かったりするもんだから、村の人達だけじゃ心配で」


「なるほど」


 と、俺が納得していると。


「ってもうこいつ寝てやがる……」


 いつの間にかレイさんが眠りについていた。


「んじゃ俺達も眠りに着こう……」


「そうだな、さっさと寝よう」


 二人で目を瞑る。


 さっきまでかなり眼が冴えていたので眠れるか心配だったのだが、目を瞑るとあら不思議。


 一斉に眠気が襲ってきて、すぐに眠りについてしまった。

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