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火竜と戦闘になりました。【後編】

 直感で、まずいと思った。


 今いかないと、ライト達は……。


「すいません、ちょっと俺行ってきます」


「え? あ、ちょっと!」


 魔法をかけて、思いっきり走る。


 もう俺の頭の中には、俺が戦えるかわからないとか、そんなことはなかった。


 ただ、最悪のことを考えると居てもたってもいられなくなっただけだ。最悪二人抱えて逃げよう。


 例のごとく一瞬で村に着く。


 俺が逃げた時の倍、炎が燃え盛っていた。


 その中に、火竜が。その正面建物の裏に二人がいた。


 鎧は輝きを失うほど傷つけられていて。ライトに関しては、剣が折れていた。


「ライト!」


 俺が近寄りながら声をあげると、ライトがこちらを向いて。


「おお、来てくれたのか」


「ああ、とりあえず逃げよう」


 俺が再度魔法をかけようとすると。


「いや、逃げられないんだわ」


「え? ……いや、なんで?」


 ライトが折れた剣を持ち上げて。


「ここでこいつをどうにかしないと、ここら一帯まずいことになる。最悪環境破壊の限りを尽くされてここの土地が死ぬ」


「まあもう無理そうだがな……見ての通りボロボロだ」


「そこでお前を呼んだわけだ。頼むぞ」


「いやいや、そんな無茶言われても……」


 できることならやりたい。俺のステータスが半端じゃないことは分かってるし、恐らく二人よりも強いことも。


 ただ、戦い方が分からない。現状俺の使える魔法は足が速くなる魔法――加速魔法と呼ぼう――だけだし。


「頼む、お前しかいないんだ。これでだめなら最後の抵抗へと移るしかないからな」


 ……俺に出来るのか?


 ……やるしかないんじゃないのか?


 このまま二人を見捨てられるか?


 答えは、NOだ。そんなこと絶対に無理だ。


「分かった、やってみる」


「お、やる気になってくれたか。頼むぞ」


 とりあえず、腰に下げてある剣のうちの一本を渡す。


「弱いかもしれないけど、一応無いよりかはましでしょ」


「おう、さんきゅ」


 と、立ち上がるライト。


「よし、じゃあ行くぞ」


「……ああ」


 壁から一斉に飛び出す。


 火竜がこちらに向かって火球を放つが、ライトの剣から放たれる衝撃波によって打ち消される。


「はああああああああああ!!」


 レイさんが、魔法のようなものを剣にまとわせる。


 そのまま振りかぶり、大きく切りつける。衝撃で少しよろめきながらもすぐに立て直す火竜。


 そのまま二、三発斬撃を浴びせ、着地。


 火竜が反撃とばかりに火を吐く。まるで火炎放射器のような勢いで、周りを燃やしていく。


「くっ!」


 火炎をなんとか避けると、そのまますれ違いざまに切りつける。


 が、ダメージは低いようで、火竜は微動だにしていない。


 と、そんなふうに二人が激闘を繰り広げている中。


 俺はどうすればいいのだろうか? なにかできることは?


 ……ええい物は試しだ、行くぞ!


「だあああああああああああ!!!」


 加速魔法をかけ、勢いをつけて火竜に切りかかる。


「ガァッ!?」


 どうやらダメージは入ったようで、火竜がひるんだ。


 どうやら、一応戦えるようだ。良かった……。


「おい進!避けろ!」


「え?」


 気が付いた時には、目の前に火竜の尻尾が。


「ガハッ!?」


 軽く吹き飛ばされる。くそ、油断した……。


 ああ、今回は骨折れてないな。よかった……。


 多少の痛みは我慢して立ち上がる。と、視界の端に本が写る。


 魔法書、と表紙に書いてあった。


 ……これ、魔法が書いてあったりするよね。ということは、もしかしたら俺が使える強力な魔法が書いてあったりするかもしれない!


 本が燃えていなかったことに感謝しつつ、急いで本を開く。


 と、本の内容は思っていたものとは違った。


 要するに、魔法のコツ、というものだった。


 この本によれば、念じることが一番大事らしい。慣れてくると一瞬で出せるらしいが。


 それと、魔力の量にも魔法の強さが左右されるとも書いてあった。同じ炎でもまったくレベルの違うものがでる、と。


 …………念じること、か。それなら俺にもできる……かな?


 立ち上がって、火竜のほうを向く。


 よし、念じろ。あの巨体を吹き飛ばすぐらいの強い風を。


 火竜だけを狙って吹き飛ばせ。周り、特に二人には被害が出ないようにしろ。


 念じろ、念じろ……。


 ふと、何かがつかめたような気がした。


 ……根拠はない、けどいける! 念じろ……!!


 よし、今だ!


「吹き飛べえええええええええええ!!!」


 火竜に向かって思いっきり剣を振る。すると。


「ガアアアアアアアアアアアア!?」


 風が巻き起こり、火竜が驚き咆哮をあげる。


 まだだ、もっと強く!


「これでどうだあああああああああああ!!!」


 さらに強力な突風により、その巨体が吹き飛ばされる。


 地面に体を大きく打ち付け、周りを砂埃と炎が舞う。


「よっし!」


 思わずガッツポーズをしてしまった。いやしょうがないよね、だって完璧に成功したし。


 と、油断している暇はない。まだ火竜はゆうゆうと立ち上がっている。


 さっきの要領で、次はこの剣で攻撃しよう。


 なら、剣を強化するのが一番だろうか。と、一瞬で魔法をかける。なんかちょっと慣れてきたかも?


 いやいや油断は禁物。戦いに集中しよう。


 火竜がさっきよりも強力な火球を放ってくる。


 強化され、光っている剣を構えて、迎え撃とうと腰を落とし。


 火球を真っ二つに切って、そのまま突進する。


「はああああああああああああ!!」


 勢いよく斬撃を浴びせる。よろめく巨体に容赦なくさらに切りつける。


 一旦下がると、火竜は怯んだまま。


 ……もしかして、もう瀕死とか。


 いや、俺の攻撃力ならありえるかもしれない。それに剣も強化してるし、かなりのダメージを与えているはずだ。


 じゃあ……あと一撃で仕留めてやる。


 剣を構え、さらに強化する。二重、三重、四重……。


 何重にも強化されたその件は、神々しいほどに光り輝いていて、まるで聖剣のようだ。


 さらに加速魔法をかけ、火竜を見据える。


 少し前までは強大な敵に見えたものが、今は弱弱しく見える。


 ……よし。


走りだし、剣を大きく振りかぶり。


「これで終わりだああああああああああああ!!!」


 鮮血が宙を舞う。


 巨体を切り裂いた剣は血で汚れたものの、それでも光を失うことを無く、煌々と輝いている。


 その剣を、自分を倒した剣を見据えた火竜は。


 どこか満足げに巨体を横に倒し。


 もう二度と、動くことはなかった。

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