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火竜と戦闘になりました。【中編】

 なんでミーアがここに居るんだ!? 村人は全員逃げたはずじゃ……。


 …………いや、おかみさんは“ほぼ”全員逃げたって言ってたな。


 それにあの顔……そうか、おかみさんはミーアを探しに残ってたのか。


 いや、今は考えるよりも行動だ。まずはミーアを逃がさないと。


「ライト、あそこに人が居るんだけど」


「は? ……うわホントだ、早く助けねえと。 てかよく見たら、お前と一緒に居たやつじゃん」


「そうなんだよ、とにかく俺が助けに行くから、援護をお願いしたい」


「分かったけど……大丈夫か? 火竜のヘイト稼ぐぞお前」


「そこをなんとかしてください聖騎士様」


「無茶言うなあ……」


 自分でも無茶なことを頼んでるとは思うんだけど、このままいても戦いに巻き込まれるだろうし。


 最善ははやく救出する事なのだ。


「火竜の真下か……お前行けるのか?」


「一応、なんか魔法みたいなの使えるから……」


 と、この村に来た時に使ったあの魔法を起動させる。


 足元に魔法陣が現れて、消える。よし、これでおっけー。


「魔法使えたのか……いや、あのステータスだし使えないほうがおかしいよな」


「まあこれ以外使えるのかどうかわからないんだけどね……」


 改めてミーアを見る。


 位置は火竜の真下。ライトの支援と俺の魔法でなんとかなることを願って、突っ切る。


「よし、頼むぞライト」


「任せとけ」


 ライトと目を合わせ。


 思いっきり走り出す。


 と、一瞬でミーアのところに着く。


 はっや! ……いや、五キロをすぐに駆け抜けるぐらいの魔法だし当たり前か。


「おいミーア、大丈夫?」


「…………あ、進さんじゃないですか」


 ぐったりとした顔を俺に向ける。


「ここから逃げるから、俺の背中に乗って」


「はい……」


 力なく返事をして、俺の背中に乗ろうとするも。


「あれ……腕が上がりません……」


「まじか……うわ、腕怪我してるぞ」


 傷だらけの腕を見ると……たぶん、火竜に何かされたのだろう。


「あの赤い竜に、吹き飛ばされまして……」


「よし分かった、俺が抱きかかえるから楽にしてて」


 俗に言うお姫様抱っこをして、また魔法を発動させる。


 よし、これで逃げれば――。


「ガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」


 直後、突風が俺達を襲う。


 なんだこの風!? やばい、吹き飛ばされる!


 体が宙に浮く。あっ、と思った時には、もう吹き飛ばされていた。


 ミーアが俺の腕の中に居るため、受け身を取れず。


「がっ!?」


 家の壁に、背中をすごい勢いでぶつけてしまった。


「いってえ……」


「大丈夫ですか?」


「ああ、うんなんとか」


 なるほど、ミーアが吹き飛ばされたのってこれか。


 火竜が思いっきり翼振るとこうなるのか……。


 いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない。はやく逃げないと。


 立ち上がろうとすると、背中に激痛が走る。


 ……もしかして、骨折れてたりする?


 もし折れてるのが背骨だったら俺立ち上がれないぞ……。


いや、それでも立ち上がらないと。このままだとまずい。


 今はなんとかライトがヘイトを稼いでるけど、いつ俺達を狙い始めるか……。


 と、また立ち上がろうとするも、また激痛に襲われ倒れる


 いや無理だ、立つのは確実に無理。


 やべえ、俺に逃げるための手段がない……。


なんとかあきらめずに、俺がどうにかならないかと考えていると。


「進さん、そのままいてください」


「え?」


 ミーアが動けるほうの手を俺に向けて。


「ヒール」


 薄い光が俺を包む。


 すると、少しだけど痛みが引いてきた。


「回復魔法です、弱いですけど、ちょっとは痛みが引くはずです」


「ああ、ありがとう」


 まだ激痛は走るものの、なんとか立ち上がれる。


「よしミーア、抱えるぞ」


 ミーアをなんとか抱える。ほんとミーアが軽くてよかった。


「よし、今からちょっと風を受けるけど動かないでくれよ」


「は、はい」


 また魔法をかけて、一歩踏み出す。


「くっそ、痛い……」


 いやいや、こんなとこで止まってたら死ぬぞ。急げ俺。


「くっそおおおおお!」


 一生ださないんじゃないかと思うぐらいの気合をだし、全力で走る。


 目的地はおかみさんが逃げて行った方向。たぶんそっちに村人たちが固まっているはずだ。


 行き際に、ライトたちのほうを見る。


 ライトも俺のほうを見て、おそらく「ここは任せろ」と言っている。離れてるから声は聞こえないけど。


 と痛みで思考どころじゃなくなる。痛い、痛い、一刻も早く目的地まで急げ……。


 が、ここはさすが魔法というべきか、すぐに村人たちを見つけることができた。


「はあ、はあ……」


「み、ミーア! ミーアが助かったぞ!!」


 村人が歓声に沸く。俺はそれどころじゃないけど……。


「ありがとう、本当にありがとう……!」


「いえ、全然……」


 おかみさんが泣きながらミーアを介抱する。


 良かった、とりあえず一件落着だ。俺も一休みできる。


 そう思いながら魔法を解くと、思いのほか疲れていたようで、崩れ落ちるように倒れてしまった。


「お前あの時の金持ちじゃないか! 大丈夫か!?」


「ああ、武器屋の……リリアさん」


「おいおい傷だらけじゃないか……ちょっと待っていろ」


 リリアさんが、小さなバックから小瓶を取り出す。


「口を開けてくれ……よし、これを飲むんだ」


 言われたとうりに口を開けると、なにか液体が入ってきた。


 苦い……けど、飲み干す。


「これは回復系のポーションだ、とりあえずなんとかなるだろう」


「ありがとうございます……」


 すーっと痛みが引いてくる。


 さっきまでの激痛が嘘みたいだ。すごいな、こんなものがあるなんて……さすが異世界。


「うわあ、もう体が動かせる……すごいですねこれ」


「まあな、私の特別配合だ。あんな仕事してるんだが、一応ポーション製作の知識があってな」


「すごいですね……ほんと、ありがとうございます」


「いや、あのときのお礼だ。気にしないでくれ」


 まだ覚えてたのか、と思う。この人ほんと義理堅いというか、何と言うか……。


 いや、今回はひたすら感謝しておこう。感謝感謝。


「村はどうなっていた?」


「もう酷い有様でした。目に入るものすべてが燃えてる感じで」


「そうか……」


 さみしげに俯くリリアさん。


 と、何かが俺の頭に浮かぶ。


 なんだこれ……。ああ、文字だ。読み取りにくい文字。


 えっと……ら……ライト……より? ライト!?


 テレパシーで進にメッセージを送っている、と書いてある。すげえ、この世界にはテレパシーまであるのか。


 と、そんなことを考えながら読み進める。


 俺達じゃ……無理? 援軍? 助けを……。


 要するに……ライト達がまずいってことなのか!?


 お前が頼りだ、ってそんなこと言われても……。


 俺が渋っていると、また言葉が浮かんでくる。


『あと少ししか持たない、頼む』


 ……俺は戦えるのか? 聖騎士の二人が勝てない相手と……。


 戦闘の“せ”の字も知らない俺が……。


 そう俺が渋っていると。


 ゴウッという轟音と共に。


 村に高い火柱が立った。

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