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火竜と戦闘になりました。【前編】

 炎が燃え上がっているのを見ながら、茫然とする俺達。


「……どういうことだ?」


「知ると思うかこんなこと……」


 ついさっきまで賑わっていた村の店は燃え上がり、焼けたリンゴが転がってきた。


 焼けた焦げ臭いにおいに思わず顔をしかめながら、辺りを見回す。


 直後、村人の叫び声が。


「あんたたち後ろ!!」


「!?」


 見ると、宿屋のおかみさんだった。


 誰もいないのになんでこんなところに一人で……?


 と、驚いて動けない俺がライトに抱え込まれてその場所から飛ぶように移動すると。


 目の前を火の玉が、音を立てながら通り過ぎていく。


 飛んできた方向に視線を向けると。


「……やっぱりいたな」


「まずいことになった」


 赤いうろこに覆われたからだに巨大な翼。


 赤黒く光る眼が、俺達をしっかりと貫いている。


 見ただけで分かる、まさに『火竜』だった。


「――――――――ッッ!!!」


 火竜が咆哮をあげる。その圧倒的な声量が、火竜が強力な敵だとしっかりと伝えてくる。


「村の人は?」


「ほぼ全員逃げました」


「分かった。ここは危ない、早くお前も逃げろ」


「……はい……」


 レイさんがおかみさんを逃げさせる。


 去り際、おかみさんが顔を悲しそうにゆがませたのを見た。そりゃ自分の愛着のある家や店、村までもが燃えてるんだ。泣くのも当たり前だ。


「さて、私たちはこれをどうにかしなければな」


 剣を抜き、火竜に向ける。


「ああ、勝てる気はしないが時間稼ぎくらいは」


「……え? 勝てないんですか?」


「まあやってみないと分からんがな。こんなだだっぴろいところで暴れられると困るが」


 レイも剣を抜き、火竜を見据える。


「お前も一応戦ってくれよ、俺達だけじゃきついから」


「い、いや、俺戦えないんですけど」


「よし行くぞ!」


「ええええええええええええ!?」


 急に走り出す二人、そしてそれにおどおどと付いて行く俺。


「レイ、演習どうりに」


「分かってる」


 二人が顔を合わせると、二手に分かれる。


「どおらああああああ!!」


 ライトが剣を振ると、衝撃波のようなものが火竜に向かって飛んでいく。


 翼に直撃したが、ダメージは低いようで、ひるむ様子は見られなかった。


「はあああああああ!!」


 レイが火竜に向かって跳ねる。


 魔法が掛かっているようで、人間では無理な距離をらくらくと飛び、空の火竜へと斬撃を浴びせる。


 が、これもまたダメージを与えているようには見えなかった。


「やはり強いな、まったく動じていない」


 俺の所に戻ってきてそういうレイさん。


「そんな楽観的でいいんですか……?」


「ま、焦ってもいいことはないからな」


「そうですか……」


 と、火竜がこちらを向いて。


「――――――――ッッ!!!!」


 火球が飛んでくる。熱を帯びたそれは、ブラーをまとっているように見える。


「ほっ」


 ライトが衝撃波で火球を打ち消す。らくらく打ち消したのをみると、どうやら火球自体の攻撃力は低いようだ。


「ガアアアアアアア!!!」


 また火球を吐いてくる火竜。そしてまたライトによって打ち消される。


「ふう、火球しか攻撃手段ないのか?」


「そんなはずはないと思うけど」


 と、火竜が別の方向へ進んで行く。


 なんだ? もしかして帰るのか?


 今の所俺達から遠ざかる理由はないと思うんだけど……。


 三人で火竜を見つめていると。


 ちらりと、何かが見えた。


 こんなところで見えるはずのないもののはずなのだが。


 いや、勘違いじゃない。はっきりと見えた。


 くずれた建物の裏に、隠れるように座り込む少女が。





 ミーアが、いた。

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