火山を登ることになりました。
「火竜はこの火山の頂点にいるらしい。さあ、早くいくぞ」
……いや、いやいやいや、ちょっと待って、マジで言ってるの?
よく分かんないけど、火竜ってかなりの強キャラだよね!?
俺が勝てる分けねえじゃん……すぐ死ぬって……。
「いやあ……ごめんな」
「……はい」
黙って歩き出す俺。
内心どっきどきしてるんですけど。超緊張してるんですけど。
……てか、そんな強い奴に勝てるの? 聖騎士さん達のレベルどれくらいなの?
まあ、気になったことは聞くしかないよね。
「あの、お二人のレベルってどれくらいなんですか?」
「俺達? ああ、二人とも63だよ」
…………今何って言った?
「すみません、もう一度お願いします」
「だから、63だって」
……ちょっと待ってくれ、本当に待ってくれ。
「あのすいません、そのレベルで73レベルの火竜倒すんですか?」
「ああそうだが」
「そのつもりだけど」
…………。
「あの、10レベルの差は?」
「なんとかなるだろう。君もいるしな」
「いや、俺戦えないって」
「まあそこは聖騎士の私たちがカバーする、安心してくれ」
「まったく安心できないんですけど!?」
やべえ……俺死ぬんじゃ……。
ああ、もう戻りたい……。
「なんだその顔は? まさか負けるとか思っているのではなかろうな」
「いや、失礼ですが多分死ぬんじゃ……」
「なに? そんなわけなかろう」
「俺らも一応聖騎士だからな、負ける気はしない」
「は、はあ……」
悪いけどフラグにしか聞こえません……死の未来しか見えません……。
と、そんなすぐ先にある現実に絶望しながら歩を進めていると。
坂を上ったところに、広く平らな場所が見えた。
「そろそろつくぞ。剣を抜け」
レイさんが長い刀身の剣を抜く。
「すすむくんも一応攻撃頼むよ」
「は、はい」
俺も同じように腰に差してある剣を抜く。
……二人のと比べると俺のめちゃくちゃ短いな。なんかかっこ悪い……。
「ゆっくり、ゆっくり近づくぞ」
「は、はい……!」
足音を立てないようにそろそろと近づいて行く。
……が。
やっと登り切ったものの、そこには何もいなかった。
「あれ? なんでいないんだ?」
「いるのではなかったのか? ギルド長はこの時期には絶対に居ると言っていたのだが?」
「あー……餌でも取りにいってんじゃねえの?」
どうやら火竜がいないのはご飯を取りに行ってるかららしいです。
「はあ……無駄足だったか」
「ごめんな進」
「いいや、別に大丈夫」
ていうかむしろいなくてありがたいです……。
「んじゃあ帰るかあ」
「そうだな、こんなところに居ても何にもならない」
と、ライトが剣を掲げて。
「んじゃテレポートするわ。行くぞー」
「あ、ああ」
少し残念そうな顔のレイさんは置いておいて。
結局今日は山登りしただけだったのか……。本当に無駄足だった……。
と、周りが白く光り始める。どうやらテレポートが始まったみたいだ。
「すまないな、無駄骨だった」
「いえ、全然大丈夫です」
ふと、あることに気づく。
「あの、なんかテレポートの時間長くないですか?」
「ああ、なんか長いんだよな」
「なぜ?」
「分からん」
未だに続くテレポートの中、レイさんとライトが考え込む。
……なんかあるのかな。
「うむ、考えられることは一つだ」
と、レイさんが指を一本立てる。
「テレポートというのは、座標を設定して使うものなのだ。基本的に、Z軸、Y軸、X軸の3種類で設定する」
「……?」
「ということは、その地点に新しく物ができたり、地形が変動したりするとその座標は正しくなくなるわけだ」
「そう、んでいま俺がテレポートしようとしてるのは火山に向かってテレポートした門の前だ」
「……もしかして」
「ああ、村に何かあった可能性がある」
真剣な表情でつぶやいたライトの言葉に思わずごくり、と唾をのむ。
「とりあえず、座標をギルド前に設定してテレポートする」
と、また剣を掲げて。
「テレポート!」
光が俺達の周りを飛ぶ。
それは一瞬だけだったのだが。
直後に俺達に襲いかかってきたのは。
「……熱い」
「どういうことだよ」
「……なんで」
「……なんで村が燃えてるんだ」