57 Nate - Orphanage
歩き続けたが、寒さを体から追い出すことはできなかった。骨の髄まで寒さが沁み込んでいた。うっすらと額に汗をかいてはいるが、体の芯は冷たかった。しばらく降り続いた雨が止んだのは幸いだった。風邪を引かないですむ。
夜風が鼻先に漂ってくると、空気が湿っているのがわかる。それまで降っていた雨のせいもあるが、なにより川に近づいたせいだ。視界の右、護岸の向こうには、大きな川が広がっていた。河水が放つ湿気と臭気が護岸を乗り越えて、ネイトたちの周囲にまで漂う。隣で歩いているアリスがたびたび顔を顰める。疲労と臭気のせいだろう。
地区は静まり返っていた。もう夜も遅い。多くの人は犯罪に巻き込まれないよう、外を出歩かないようにしている。街の灯はあちこちに見えるため、足元がおぼつかなくなることはなかった。傾いた電柱、朽ち果てて長い年月が過ぎた街路樹、落書きと撃ち込まれた銃弾によって無残な状態にある護岸、それらを横目に歩いていく。
やがて、比較的面積の大きな中層建築物が見えてくる。公共建築にありがちなデザイン。凹凸のない簡素な矩形だが、ファサードはガラス張りになっている。そのガラス越しに、木質の巨大な柱や梁が見えるよう工夫が施されている。部分的にこの国の伝統的な建築様式を取り入れ、現代に復活させるということで、一時期流行した様式。確かに伝統的な建築様式が入り込むことで、建物の完成から年月が経過しても、時代を超越した趣がある。時代を感じることはあっても、古さは感じない。建物の外観だけを見れば、いまも普通に誰かに利用されているような雰囲気がある。
「ここね」
建物を眺め、アリスはいう。
「それなりに築年数は経っているはずだが、古くは見えないな。人がいる気配はなさそうだ」
「まだ誰かが利用している?」
「それは中に入って確かめよう」
ネイトは建物の入り口に向かって歩いた。玄関は封鎖されているが、玄関脇の窓ガラスは叩き割られていた。そこから内部に入り込んだ。埃の匂いがする。足元の床には、埃や木屑のようなものが散り積もっていた。壁や天井の腐敗は、徐々に進行していた。建物が使われなくなってから、それなりの時間が経過したらしい。建物内部は閑散としていた。ほとんどの什器が運び出され、ものがないのだ。内部はすっかり空虚な、がらんどうの空間でしかなかった。内部に残っているのは、価値のない、金にならないものしかなかった。壁にかけられた写真や絵、部屋の隅に積み上げられた古い児童向け書籍の山。すべての部屋を見て回った。建物の間取りや残置物から見て、どうやらここが孤児院であることは間違いないようだった。下の階に講堂や食堂、職員用と思しき部屋があり、上の階には孤児たちが寝泊まりする部屋があった。孤児たちの部屋には、打ち捨てられたベッドがまだ一つ二つ残っていた。ネイトは自分の持物を確認した。最低限の水と食料はある。少なくともあと数日餓死することはないだろう。ここは寝るための場所もある。ここに身を潜めるのも悪くはなかった。ネイトは下の階まで戻った。アリスを探すためだ。部屋を確認して回っている途中で、アリスがいなくなっていた。一階にある職員が使っていたと思しき部屋に、アリスはいた。彼女の指先には蛍火。煙草に火をつけ、その火で周囲を照らし、なにかを探っていた。部屋の壁には、ここが職員用の部屋だったことを物語る画鋲留めされた職員向けの書類や壁掛けの写真が残されていた。
「その程度の火じゃ、なにも見えないだろう」
ネイトはアリスに声をかけた。
アリスはネイトに見向きもせず、煙草の火で照らした壁際にじっと目を凝らしていた。
ネイトはアリスに無視されたような気になって、彼女の肩に手を触れようとした。
「おい…」
「心配しなくてもきこえてるわ」
ネイトの指先がアリスの肩に触れた瞬間、アリスは声を発する。思わずネイトは指を引っ込める。
「それよりこれ」
アリスが指差す先に、壁掛けの写真があった。日に焼けていて、歳月の流れを感じる。きっと古い写真なのだろう。蛍火が、写真をぼんやりと照らす。二人の男女が写っている。女は髪が赤く、顔立ちからして外国人のようだ。頬はふくよかで、大きな目には優しさが滲み出ている。男の方は長身で、中年のわりには痩せていた。女と対照的に目は細く、鋭敏な印象を受ける。長身とその鋭い目のためか、男には威厳があった。
「この二人、ここの運営者だったようね。シオミマサ、アンナ夫妻」
「夫婦で経営していたのか?」
「みたいね。さっき他の写真も調べてみたら、どうやらここはこの夫婦が設立した施設だったようね。多少は政府のお金も投入されてはいるんでしょうけど」
「なんだ、二人はいわゆる篤志家ってやつか?」
「どうかしら。教育でも金儲けはできるわ。案外政府からたくさん助成金を得て、上手く事業を回していたのかもしれないわよ。それにこの夫婦、他に複数の事業を手掛けていたようだし。ほら、夫の肩書を見て」
写真の隅に記載された夫の肩書。教育業の他に、通信業、不動産投資業の代表取締役を務めていた。いわゆるやり手の経営者。
「この男が立派な人だってことはわかったよ」
「そう? 社会的、経済的成功と人格はまた別物だと思うわ」
「意外に辛辣じゃないか。それで、この経済的には成功した経営者夫婦がどうしたっていうんだ? なにか気になるところでもあるのか?」
「この二人、ここで起こった爆弾テロで死亡したの。二人の名前、前に私が事件を調べていたときに見覚えがあった」
ネイトは写真をもう一度見つめた。テロという理不尽な暴力によって奪われた命だと知ると、二人への視線も変わる。社会的に成功した彼らは、自分たちがテロによって命を落とすことになると予想していただろうか。
「確か大人は五人くらい亡くなったんだよな」
「ええ、それから子どもが一名」
「ここの講堂を見たか? 天井の一部が崩れ落ち、窓もことごとく吹き飛んでいた。きっとあそこで爆発があったんだと思う」
「私も見たわ」
アリスは頷いた。
「あんたはこの夫婦を覚えているか? あんたの父親によると、あんたもここで事件に巻き込まれたんだろう? なら、この二人にも会っていたかもしれない」
「それが、記憶にないの。この二人だけじゃない。この施設の造りも、私の記憶にはないわ。この講堂、廊下、職員や孤児たちの部屋、外の風景さえ、どれ一つとして見覚えがない」
アリスはいった。指で吸いかけの煙草を弾き、床に落ちたそれを踏み潰す。壁際に凭れかかると、次の煙草を抜き取って火をつけた。高窓から差し込む月明かりが、もの憂げな顔で煙草を燻らせる彼女を照らした。
煙草の匂いは、二人の体や衣服から立ち上る悪臭をかき消した。二人は雨に打たれたが、体を洗ったわけではなかった。汗や皮脂、垢が体や服にねっとりとこびりついていた。
アリスはやや顔を俯かせて、厳しい表情でいる。
「十五年前。そのころ私は六歳かそこら。ならば、記憶もそれなりにあるはずよ。だけど、私はいまこの施設についてほとんどなにも覚えていない。それどころか、ここへ初めて足を踏み入れたような感覚さえする」
アリスは睨みつけるように、空間を凝視する。
「一体、これは…」
彼女の呟きは廃墟の闇に呑み込まれていく。
「六歳なら、覚えていないことや記憶があやふやになっていることはあるだろう。俺にだってあることだ。あんたもそうなんじゃないのか?」
記憶を正確に保持することは不可能に近い。なぜなら記憶なるものは風化し、忘却されることを運命づけられているからだ。昨日の記憶さえ正確精緻にとどめておくことはできないというのに、ましてや十年以上も前の記憶ともなれば、なおのことだ。いまよりずっと過去の話であれば、忘却していることさえ自然であるとネイトは思う。
「だけど…」
アリスはいう。
「記憶が完全に抜け落ちてるなんて、あり得ると思う?」
アリスは問いを突きつけてくる。それまで廃墟の茫漠とした闇を睨んでいた彼女の目が、ネイトに向く。
「もしくはあんたの父親が、嘘をついているのかもな。確かに事件は存在した。ここでテロが起こって、人が死んだ。写真の夫婦も犠牲になった。それは事実なんだろう。だが、あんたはそこにいなかった」
「なぜ父は嘘を?」
「わからない。あんたに関することで、嘘をついてでも塗り潰したい別の過去があったんだろう」
アリスがいっていた記憶。幼いアリスをあやす女。悲鳴と銃声。涙を浮かべた父親の顔。
アリスの言葉を信じるならば、その記憶は、ここではないどこか別の場所においての記憶ということになる。
「父はなにを隠したがってるの? 私は…」
父親に対する疑惑の視線。それは捻くれて、屈折して、複雑な軌道を描いて、最終的にはなぜかネイトにぶつかる。負の感情は屈折する。負の感情は些細な理由や状況の変化で、その対象がすり替わる。父親への不信は男性への不信に、男性への不信は身近にいる男への不信に。
「あんたの父親がなにを隠そうと、あんたの記憶が揺らごうと、あんたはあんただ。不安に思うことはない」
「不安よりも、疑いの気持ちがいまは強いわ」
「あんたはどう推理する? 思い当たることがあるんじゃないか? 父親が嘘までついて隠したいこと」
「それがわかれば苦労しないわよ。父にきいても、絶対に答えないでしょう。嘘を貫き通すに決まってる」
娘が娘なら、親も親だ。ネイトは思わず鼻で笑いたくなった。
「親子だな。強情さがまるで同じだ」
「皮肉なんてききたくない」
アリスはネイトを睨んだ。
「自分探しの旅も楽じゃないな」
「それも皮肉ね」
「そんな怖い顔をするなよ。判明したことだってあるだろう。まずあんたはこの施設にきたことがない。従って、過去のテロ事件にも巻き込まれた可能性は低い。あんたの父親は、理由は不明だが、嘘をついている可能性が高い。あんたがいうところの、原初的記憶、その真偽はまだわからない」
「あの記憶は確かなものよ。偽りのものとは思えない」
「ならそれも確認しないといけないな。論理的に、証拠を集めて。なんにせよ、進展はいろいろとあったと思うぜ」
「肝心なことはなにもわかってない」
「すぐに結果を求めるな」
ネイトがいうと、アリスは腹を立てたのか、ネイトから視線を逸らし、険しい顔のまま煙草を吹かした。眉根を寄せながら、煙を吐く。彼女は煙草の先を睨みつけていた。負の感情は屈折する。
まったくもっておっかない女。直接この女と関わってから二十四時間以上が経過した。二十四時間で人は簡単に変化する。知的で、優等生な女から、強情で豪胆な女へ。頭の切れは変わらない。むしろ知性と勇敢さは研ぎ澄まされている。同時に、脆く危うい部分も見せるようになった。記憶への偏執。自己存在への懐疑。正直ネイトにはよく理解ができない。
深々と一服するアリスと、たまたま目があう。視線で会話をする。これからどうするべきか。ネイトは指で示す。上の階へ。とりあえず睡眠を取ろう。
階段を上る。壁面に描かれた地図が目に入る。閉塞都市の地図。この国の姿。放射能で国土の大半を穢されたために、汚染地域を巨大な壁で隔て、狭小で限られた非汚染地域を超高層建築で埋め尽くした都市。
「この都市の外、打ち捨てられた土地に出てみたいと思うことはある?」
地図を横目にアリスが問いかけてくる。
「ないね。放射能にやられた土地なんだ。安全に住めるわけがない」
「この都市だって怪しいものよ。政府は安全だというけれど、どこまで信じるべきか」
「少なくとも俺たちは五体満足に誕生することができて、いまも生きている。でも、街の外ではどうなるかわからない」
「でも、あなたはこの街が嫌いなんでしょう?」
「どうしてそう思うんだ?」
ネイトはきいた。
アリスは微笑んだ。
「気づいてなかった? あなたがこの街の話をするとき、憎しみが滲んでいる。それも心から」
「心理学者にでもなったつもりか?」
「まさか。私もこの街が嫌いで、憎いとさえ思えるときがあるから、あなたの気持ちがわかるのよ」
アリスがそういった瞬間、ネイトはかちんときた。
「裕福な出のお前にわかるのか? 下層部の無茶苦茶な環境に押し込められ、未来や将来の展望もまるで描けない人間の、街に対する憎しみが」
所詮アリスも都市上層部に生きる極めて裕福な人間だ。有力政治家の娘。下層部で犯罪を重ねてその日その日を生きてきた自分とは人種が違うといってもいい。アリスはネイトの憎しみを理解できるというが、そんなはずはないと思った。軽い気持ちでそういったように思えて、ネイトは腹が立った。
「お前にはわかりやしないだろうよ。貧しさと閉塞の中で生きる人間の気持ちなんて」
ネイトはいった。
アリスから微笑みが消えた。
「…そうね。そうかもしれない」
それをいったきり、アリスは口を噤んだ。
ネイトは気持ちを落ち着けようと、足を進めることに意識を向けた。ベッドがいまだ残されていた孤児たちの部屋に向かった。部屋に入り、ベッドに積もった埃を払う。
「あんたは右、俺は左だ。半分腐りかけたようなベッドで、枕もないが、なにもないよりはましだ」
そういってネイトはベッドに身を沈めた。壁際に寄って、休息を取ろうとした。
アリスはベッドに腰掛けていた。両手で自分を抱き締めるようにして、体を震わせていた。
「寒いのか?」
ネイトはきいた。
「火が欲しい」
アリスはいった。ネイトは首を振る。
「だめだ。火を熾すと、外からそれが見える。俺の上着を貸そう」
「あなたはどうするの?」
アリスに問われて、ネイトはすぐに答えられなかった。
「寒さに耐えるさ。寒さと飢えは慣れっこだ」
風こそ吹き込んでこないが、底冷えで固く引き締まった空間に、ネイトの言葉は実に虚しく響いた。今度はアリスが首を振り、あなたが風邪を引くわ、という。
ネイトは黙って上着をアリスに渡した。
「火を熾すのに必要なものを集めてくる」
ネイトはそういって、部屋を出た。床に剥がれ落ちた窓の木枠や残されたままの廃材、薪の代わりになりそうなものをかき集めた。冬の冷たさが骨身に沁みた。夜の闇が冷然とネイトを包囲する。
かき集めたがらくたに火をつけ、煽る。小さな火を熾した。部屋の窓を少し開ける。熾した火に手を翳した。体に沁み込んだ寒さが溶けていく。部屋は暖まり、アリスの体の震えが止まる。二人して火を見つめる。暖かさに眠気が誘発され、思わず目を閉じそうになる。
眠ってはいけない、そう思いながらも、目を閉じずにはいられなかった。
「眠りなさい」
そんな声がする。アリスの声だが、なぜか母親の声のようにきこえた。このまま眠りに落ちれば、また夢の中で母に会えるのだろうか。そんなことをネイトは考えた。
「なるべく早く、火を消すんだ」
そう呟いたつもりだったが、本当に呟きになっていたのかはわからない。ふっと意識が途切れ、視界が暗くなった。
まるで電池が切れて動かなくなった人形のように、ネイトは急速に眠りに落ちてしまった。泥のように眠る。夢さえも見ない眠りだった。
どれほどの時間が過ぎたのか、はっとして目を覚ます。外はまだ暗かった。外を見ても夜明けの気配はなく、まだ深夜過ぎなのだろうと思った。熾した火は、わずかに燻っていた。アリスはネイトに背を向けるようにして、体を丸め、眠り込んでいた。衰弱した火が、彼女の金色の髪をかすかに照らす。彼女の髪は疲れや汚れを溜め込んで艶などまったく存在せず、乱れていた。
ネイトは手で顔を洗った。指先に皮脂と目脂がこびりついた。黴と埃が溶けあったベッドに手を擦りつけて、汚れを拭った。
燻っていた火を消す。部屋は本来の暗さを取り戻した。
これからどうするべきなのか、闇の中でネイトは考えた。アリスと逃亡を始めてから三十時間かそこら。アリスを使って、AGWに囚われたレナを取り戻さないといけない。仲間のことが気にかかる。会場に取り残されたケイジとショウはどうなったのか。二人が無事だとはとても思えなかった。乱戦の中で、命を落としたのかもしれない。仲間を思うと、暗い感情しか浮かんでこない。それでも彼らの状況を確かめるのは必要だった。
眠り込んだアリスの背を見つめる。この女を利用しない限りは、仲間たちを救い出すことはできない。どういうわけか、この女は自分と手を組もうといっている。それはこの女の気紛れのためか、偏執のためか。ともかく、彼女を利用し、彼女と手を組み、知恵をあわせ、事態を切り抜けないといけない。政府に密かに連絡を取り、AGWを誘き出す。そして仲間を救う。
睡眠は思考の淀みを追い払ってくれた。アリスが眠りから覚め、朝がきたとき、どのような行動を取るべきか、ネイトは考えを巡らせた。この場所をセーフハウスにすればいいといったが、果たして本当にここに留まるべきか。それともどこか別の場所に移動するべきか。
考え込んでいたとき、不意に足音がきこえた。部屋の外からだ。
ネイトはアリスを揺り起こした。扉の脇の壁際に立って、耳を澄ませた。足音は連続してきこえる。徐々にそれは大きくなる。こちらへと何者かが近づいている。状況を即座に察したアリスがネイトの隣へやってきた。銃を取り出し、それを握る。
自分たちがいる部屋の扉の前で、何者かの足音が止まる。
扉の向こうに人の気配を感じる。かすかな息遣いと靴で床を踏む音がきこえる。
ネイトは深く息を吸った。音、気配からして敵は一人。敵が扉を開けて、踏み込んできた瞬間を狙うつもりだった。いざとなれば、銃を構えたアリスがいる。自分が敵を押さえて、アリスが銃を突きつければ、敵の無力化は可能だ。
ネイトたちは扉が開くその瞬間を待った。
突如として爆音が響き渡った。扉は開かなかった。代わりに扉は吹き飛んだ。散弾銃の乱射か、もしくは手榴弾を炸裂させたか。衝撃と風圧を受ける。ネイトはよろめいた。アリスもよろめいた。
次の瞬間にはネイトは髪を掴まれていた。壁に何度も顔を叩きつけられる。そして地面に引き倒される。アリスが銃を撃とうとしたが、間にあわなかった。想像以上の俊敏な動きで、アリスの銃は弾き飛ばされた。何者かがアリスに銃を突きつけた。
「手をかからせやがって。ガキどもが…」
男が忌々しそうに呟く。そしてネイトに目を向けた。
「てめえ、一体どこの…」
ネイトがそういった瞬間に、体を足で強く踏まれた。呻き声を発する。
男はいった。
「お前が持ち込んだブツを、綺麗な金にかえてやった男だよ」
「…お前、ゴトーか?」
男は怒りの表情で、ネイトを再び足で踏みつけた。




