06_黒竜歴523年4月30日
「おじいちゃんのお仕事が見たい」
孫のシウゴに突然言われ、
すわ!何のことだ!と驚いとるオレを尻目に、シウゴは説明をつづける。
「いつもフラッと来るおじいちゃんが、普段どんなお仕事してるのか、知りたい」
・・・知りたい、といわれてもな
オレはジェット=プライド
魔界の六騎魔王の一人、炎の魔王と呼ばれている。
仕事としては、自分の領地の魔人たちを統べ、取り決めや法を制定し
また、他の六騎魔王との(無駄で退屈な)会議をしたりと
そういう仕事をしているわけで・・・
孫のシウゴは人間界に住む俺の孫だ
我が愛しの娘と、クソ虫・・・じゃなかったウジ・・・じゃない
に、に、に、、、人間の間に生まれた。
人間として生きるため、人間界に住んでいる。
俺たちもシウゴや娘が返ってくる場所として、『人間の親』として人間世界に住まいを作って、かりそめの生活を時たましている。
「し、仕事か・・・うむ・・・しかしな・・・」
仮初の生活にすぎない人間世界においては
俺は仕事ということをしていない。
当然だろう?正直金なら魔界でいくらでも稼げるのだ。
「あ。当たり前だけど人間界のほうじゃなくて、本当のお仕事のほうね?」
そういうとシウゴは魔力を解き放ち、姿を『魔人』へと変える
「母さんたちには秘密で、、、ね」
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「うっわ、ひっろーい!!これおじいちゃんの城?!」
孫のシウゴを連れ、魔界へ戻った俺はそのまま城へと案内する。
城に入ったと同時に、多くの使用人が頭を下げて迎え入れる。
「ジェット様・・・おかえりなさいませ・・・そちらの方は?」
使用人の一人が近寄って話しかけてくる。頭を下げながらシウゴに警戒を払っている
そりゃそうか、始めてみる魔人だもんなぁ
「うむ・・・孫のシウゴだ。我が城を見たいということでな」
「大変失礼いたしました。いらっしゃいませ、シウゴ様」
「こんにちは・・・ええっと・・・お名前は・・・?」
「バルバリシア、と申します」
「バルバリシアさんね・・・よろしくお願いします!」
「シウゴよ、城の中には危険が多いからな・・・バルバリシアに案内をしてもらうといい。よいか?バルバリシアよ」
「はっ!」
シウゴを連れて、バルバリシアは王の間から席を外す。
・・・俺も書斎に行って溜まった書類を片付けるか
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「バルバリシアさんは、ここで何年くらい仕事しているの?」
「かれこれ250年ほどお世話になっております」
「長い!!そんなに昔から!」
「魔人は長生きですから・・・私なぞまだ若輩者でして・・・」
どうみても若輩なんて感じはしないなぁ・・・
オーラもすごいし、魔力もすごい量だし
「バルバリシアさん・・・ちょっとだけお願いがあります。」
「なんでしょうか?私にできることでしたら」
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「ただいまー!!」
いつもの声で、僕は家の扉を開ける。
いつものように、お母さんが迎えてくれる。
「あら、シウゴおかえりなさい。どこに行ってたの?今日は」
「へへー、秘密!!危ないことはしてないよ!」
そう、魔界に行っていたことはお母さんにもお父さんにも秘密
秘密といわれて、お母さんが何とも言えない顔をしている
いつも正直にどこに行ってたとか言ってたからなぁ
ちょっと戸惑ってる感じかな・・・?
「んー・・・あまり危ないところに入っちゃだめだからね?後、他の人にバレないようにするのよ?」
「もちろん!おなか減った~~今日のご飯は?!」
そういいながら、再び台所に戻っていく。
先手を打って危ないことはしてないと言ったことが効いたらしい
あんまり心配かけないようにはしないとね・・・
僕の正体だって、みんなが見たらびっくりしちゃうしね
台所に行く、お母さんの後ろを追いかけて、作っている鍋の中を覗き込む
鍋の中には真っ白な液体がなみなみと入っていた
ミルクのいい香りが鼻につく
「あっ!こら・・・!んもう・・・今日はシチューよ」
「シチュー!やったー!!僕シチュー大好き」
「ふふ・・・ごはんより先にお風呂入っちゃいなさい。泥だらけで、どこで遊んできたのよ」
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・・・とんでもない子供だ
あの魔王様の孫なのだからおかしくないか・・・
いや、おかしい・・・まだ生まれたばかりではないか
『僕とお手合わせをしていただけますか?』
「末恐ろしい子供・・・だな」
魔力を開放し、多彩な魔法を放ってきた。
戦い方もそこらの若造よりも凝った戦い方をしてきた。
炎の鞭や炎の槍はもちろん、まさか縄の様なものを使って縛り上げたり
炎を使って魔力探知を外だしするとは思いもしなかった。
・・・もちろん、私も力は全然出していない。せいぜい10%程度の力にした
だが、その10%の力に張り合う程度の魔力を引き出していた。
人間は育つのが早い・・・あっという間に私を超えてしまうだろう
「・・・魔王様はあれを制御できるのか?もし・・・」
不穏なことを考えてしまう・・・
いや、やめよう。私はプライド家に仕えるもの
プライド家の方針を決めるのは私ではない。
彼がそのうち【人間の味方】となるとしても・・・だ