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僕の家には秘密がある  作者: 玖龍 眞琴
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03_黒竜歴514年6月3日

とある田舎のとある家

一人の女性が、子供と一緒に洗濯物を畳んでいる

子供は畳んでいる洗濯物をこねくり回したり、女性にしがみついたりと大忙しだ

はたと、外から聞こえた物音に反応して、子供はそこから立ち上がって駆け寄ろうとする

ブワッと室内に突風が吹き、コロンと洗濯物の上に転がってしまう


「あらあら・・・シウゴ、ちょーっとおとなしくしましょうねー」


可愛い可愛いシウゴはもうすぐ4歳の誕生日

元気盛りのわんぱく小僧

ちょっと目を離したすきにあっちこっちに飛んで行ってしまう

魔法をちょっと駆使して、うまく誘導するのももう慣れたもの


シウゴは倒れこんだ洗濯物から体を起こすと

トテトテと、ジェシカのもとに近寄ってくる


「おかーさーん、お外行きたいー」


「お洗濯終わったら、お散歩行こうか。もうちょっと待てるかな?シウゴいい子だもんね。」


ニコニコしながら、シウゴの頭を撫でる

おとなしく撫でられて、シウゴはその場にちょこんと座りなおす


「僕、いい子だから待ってる!」


そわそわしながらも、言うことを聞いて、座って待ってるシウゴ


「じゃあ、シウゴ。お出かけできるように変身しようか?」


まだ幼いシウゴの頭には二本のツノが生えている

シウゴは魔族の血に目覚めている子供だ。

この『人間の住む村』で生まれてきた魔族になる

幼いころからシウゴには『魔族』であることを隠すように躾けてきた

シウゴ自身もほかのみんなと自分が違うことを薄々感じている。

夫が「真の姿を隠しているのはかっこいいぞ!」と言ってからは

積極的に『人の姿』に変身するようになった

変身を教えてから早2年。覚えはいいほうだと思う。

とはいえ、魔力の量からそんなに長時間変身はできない。

そう、私のようには…


「はーい・・・・うーん・・・変身!」


拙いながら一生懸命に魔力を練っている

洗濯物を畳みながら、魔力の練りを補助していく。


「あっ!おかーさん・・・今日は僕一人でやるの!」


「あら?できる??」


「できるもん!!」


いつもと同じように、昨日よりほんのちょっとだけ上手に魔力を練り

変身の魔法を組み立てていく。

淡い光と共に、『人の姿』のシウゴが姿を現す


「ふー・・・!できた!!おかーさん!できたよー!!」


「ふふ、えらいえらい」


ニコニコと駆け寄ってくるシウゴ

洗濯物を片付け終わり、ジェシカも立ち上がってエプロンを外す。


「よーし、それじゃあお散歩とお買い物いこうか!」


-----------------------------------------------------------------------


「おばちゃん、こんにちは!」


「おや、シウゴちゃん 今日も元気だねー」


「うん!元気!!」


道行く村の女性にシウゴは元気よく話しかける。

お世話になってるパセラのおば様だ


「パセラのおば様、いつもすいません」


「いいのよ、ジェシーちゃん。おばさまはくすぐったいからよしとくれったら。あ、そうそうこの前のお肉のお礼さね」


「こんなにいっぱい!いつもすみません」


「なーに、お肉をよく食べれるようになったのも、旦那さんのおかげだからねぇ」


パセラさんから複数の野菜を受け取る。

この村では物々交換が当たり前で、狩人の夫が採ってきた肉やキノコ、薬草などと

野菜や穀物と交換してもらうことは非常に多い。

パセラさんのところではいろいろな野菜を作っている。特に夏野菜は絶品だと思う。


「あっ!トマトだー!」


「あはは、シウゴちゃんはトマト大好きだねー!」


「大好きー!」


「シウゴ、こら!暴れない!!」


トマトを見つけて踊りまわるシウゴ

どっかに飛んでいかないように手をつないだままだから、ジェシカまで振り回されている


「ほらほら、お母さんを困らせちゃダメでしょ、シウゴちゃん」


暴れるシウゴの頭をポンポンと撫でながら、シウゴをうまい具合に抑える

年の功か、シウゴも暴れているのを抑えられながら、不満な顔を一切することなく、おとなしくなる


「はーい、ごめんなさい!」


「ジェシーちゃんも、頑張ってるのはいいけど、あんまり一人で抱え込んじゃ駄目よ??たまにはシウゴちゃん連れて、うちに羽を伸ばしに来なさいな」


パセラさんはジェシカの顔をじっと見ながら、ちゃんと叱る

魔界のプリンセスであったジェシカが叱られるなんてことは

この村に来て、パセラに出会ってからのことだった。

素直に、忠告を聞くことができるのは

パセラの叱り方のうまさだろう

最初のころの驚きはなくなったが、今でもそれは変わらない


「はい、いつもご迷惑をおかけしてます」


本当に羽を伸ばすわけにはいかないが、

たまにはお言葉に甘えよう

そんなことを思いながら、ジェシカはシウゴと買い物に向かった。


-------------------------------------------------------------------------------------


「あら…薪が…」


台所で料理をしている最中、薪が切れてしまったことに気が付いたジェシカ

今から森に取りに行くのはさすがに夜も更けており、

いくら危険はないといっても避けておくべきだろう…


「うちの人も今日はギルドのほうだし…大丈夫よね」


すっと魔力を解放し、人の姿から元の姿に戻る

繊細な炎の魔法を扱うなら人の姿より、こっちのほうが楽なのだ

元の姿は炎の化身。真紅の輝きと暖かさを持つ

かつて、人々に『火の女神』と恐れられた姿

人々に積極的に危害を加えたりはしないが、襲ってくるものを灰すら残さない火力で

一国を焼き尽くした過去もある

…さすがにもう黒歴史だが


「あ!おかーさん!きれー!!」


「あらあら…シウゴに褒められちゃったわ…お父さんには秘密だからね?」


「きれいなのに、ダメなの?」


不思議そうな顔をするシウゴ

シウゴは自分も魔族だから、違和感がないのだろうけど

こんな姿をうちの人がみたら腰を抜かすどころじゃすまない気がするわ…


「ダーメ。お母さんとシウゴだけの秘密だからね?」


口元に指をあてて『シーッ』という

シウゴも同じように指をあてて『シーッ』という


「さ、ご飯作っちゃうから、ちょっと待っててね」


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