09_黒竜歴_524年5月22日
学校で習うこと(13歳:王都)
「で、あるからして・・・人間と魔族の間では・・・」
教鞭をとっている歴史学の爺さん
1000年前の人魔戦争の話だ。
子供のころにおとぎ話じゃないけれど、ファブラのじいちゃんから
じいちゃんがそのお父さん、おじいちゃんに当時の話を聞かされて
それをさらに僕へ伝聞でよく聞かせていた
(その時の話をジェットのじいちゃんに聞くと大体人間の悪口で終わっちゃうからあまり情報がない)
人間界に伝わる人魔戦争はおおよそ
【魔族が人間界に侵攻してきて、人間を蹂躙しようとしたところ、天界から助けが入り、さらに伝説の勇者が力を解放して撃退した。魔族は魔界に引きこもり、魔物や魔獣を人間界に捨て置いて今でも侵略の機会をうかがっている】
となる
だが、天界と魔界に残っている情報はこうだ
【ある王国が人間界を牛耳り、教会も締め上げ、愚かにも天界に侵攻した。戦う術がそこまで豊富ではない天界にとって人間界からの侵略が思わぬことであり、また人間も強力な神族を押さえつけるための神殺しの技術を昇華していた。これに困った天使たちのうち、勇気ある一部の天使が堕天を覚悟で魔界へと協力要請をする。魔界にあった魔力封じの技術で人間の侵略を抑え、身体能力で勝る天使、魔族、神族でその王国の人間を殲滅。人間界に残っていた、虐げられていた人々と教会に復興を任せ、魔界と天界へそれぞれ帰った】
という物である。
「まぁ・・・寿命の違いってのもあるしね・・・」
ぼそっとつぶやきつつ、ノートを取りながら、話半分で聞いていると
横からペンで僕の頬を突いてきた。
ジトっと横目で見ると、小さな声で、囁いてくる。
「ぼーっとしすぎじゃない?シウゴ」
「そりゃぼーっともするだろ・・・真実じゃない話聞いてたって退屈なだけでさ」
「でも、テストには出るわよ??ちゃんと聞いてないと落第しちゃうわ?落ちても知らないからね?」
くすくすと笑いつつ、人のノートにぱっといたずらをする
「あっ!おい、やめろよアリア」
「ぼーっとしているシウゴが悪いんですよー」
僕たちは今年、村を出てこの王都にある騎士養成専門の学校
【聖ガルデバランス学校】に通い始めた
僕もアリアも王国の聖騎士団に入隊することを目標に置いている。
「こりゃ!そこのアベック!いちゃついても良いが話は聞かんかい。」
バッと周りの目が僕らのほうに向く
そこらからクスクスと笑い声がする・・・
「うっ・・・す、すいません」
「で、パリストン。人魔戦争の後に起きるのはなんじゃったかな?」
立ち上がり、テキストを置いて
教職の質問に、回答する。
この辺は有名な話だし、一応入学前に人族の歴史として抑えているから
間違いようがない。・・・簡単だしね
「教会による復興と、我が王都ガルシア国の設立であります」
「うむ、その通りじゃ・・・夜はいちゃつくだけじゃなく予習もしているようじゃの」
高らかにかっかっと笑いつつ、再びテキストに目を戻す
・・・この好色じじいめ
ふと隣を見るとアリアが顔を真っ赤にしてる。
そりゃそうだ・・・そういうことに免疫ないもんな
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「シウゴのせいで!私まで!変な目でみられちゃうじゃない!!」
教室を出るときに急いで付いてきて、そのまま黙りこくっていたアリアが
寮に戻った後にそのまま部屋まで押しかけてきて
扉を閉めた途端、ベットの上にあった枕を投げてくる
授業が終わった後、クラスメイトの女の子たちから
色々と根掘り葉掘り聞かれてアワアワしてたのを見てた。
俺は俺でほかの男どもに冷やかされたり
まぁ・・・アリアファンクラブのやつらに追いかけられたりと
割といつも散々な目にはあっていたわけだけどな
「いや、今日のはお前が悪いだろ。で?クラスメイトにはどんなこと聞かれたんだ??」
クスクスと笑いつつ、枕を軽く投げ返す。
顔を真っ赤にしながら
「どこまで行ったの、とか・・・シウゴがかっこいいからうらやましいとか・・・初めては痛かった?とか・・・って何言わせるのよ!!」
再び全力で枕を投げつけてくる。
アリアは昔からこういう色恋沙汰は苦手だ。
「いや、それも俺のせいじゃな・・・」
「ええい、シウゴのくせにー!生意気だー!!」
「なんかそれ、どっかの絵本でよく見るな」
クスクスと笑っていると、そのままベッドに倒れこんで
枕に顔をうずめて足をばたつかせている。
今日は一日不機嫌・・・というかこんな感じだろうな
明日、気分転換にどこかに連れてってやるか・・・
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アリアは確かに可愛い。それは間違いないと思う。
とはいっても、アリアは人間だ。
純魔族の俺とは寿命の長さも違う。
彼女を嫁として迎え入れることは現実的にできない…
…うちの両親がいる時点で説得力はないけど
なんだかんだと騒いで、そのまま僕のベットを占領し
朝まで不通に部屋に泊まっていくことになった。
こういうことしてるから、冷やかされるんだろうに・・・
部屋に彼女を置いたまま、朝早くの鍛錬のため
近くの修練上・・・ではなく
町はずれの森に、人知れず向かう
少し、街中を散歩して、誰かにつけられていないかを探りながら…
村の時と同じで、魔力を、ばらすわけにはいかない
もう流石に隠し方は慣れたもので・・・よっぽど魔力に長けたもの出ない限り
僕の正体を見破ることは不可能だろうけども、だ
警戒に警戒をしておくに、越したことはない。
さて…今日も秘密の特訓といきましょうか
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シウゴが部屋から出ていく音で、私の頭が覚醒する…
「ん…シウゴ…?」
部屋中に私の声が響き渡るが、返答はない。
「ごはん・・・?」
寝ぼけ眼をこすり、机の上の時計に目を向ける
まだ、朝の4時…こんな早くにどこに行ったんだろう??
魔力探知を広げて、シウゴを探して追いかける
ふらふらと町の中を動き回るシウゴの魔力を感知して、一つの答えを導き出す
「…お散歩か」