始まりの悪夢
始めに、〝――〟この線がカクヨムの自作から直接コピペした状態の為、一章04話まで文字化けしております。近いうちに訂正しますが、その間のお目汚しをお許しください。
では本編の方、お楽しみ下さい。
――これは夢。
――始まりの夢。
――繰り返し見る悪夢。
――忘れられない、忘れてはいけない現実。
眼前に広がる光景はあまりにも凄惨で、悲惨で、“この時の自分”は状況を把握しきれずにいた。
周りを見渡せば、同じ騎士学校の仲間は皆倒れ息絶えている。同時に魔物の死骸も数体あり、鍛錬場は人と魔物の血で染まっていた。
“そこにいる自分”もまた両方の血で染まっており、左手で細剣を握り右手はまだ息のある友の手を強く握りながら必死で何かを言っていた。
「リヒト……もう行け。この傷じゃあ俺はもうダメだ……」
そう言った彼の腹部は抉れて肉が見えており、そこから血液が止めどなく溢れ出していた。
「なに言ってんだ! 大丈夫だ、まだ助かる! 今からお前を背負って医者にみせてやるから諦めるな!」
この傷ではまず助からない。今の俺なら簡単にそう判断出来るが、この時の俺は子供で本気でまだ助かると信じていた。
と言うより割り切れなかった、簡単に諦めることなんて出来るわけがなかったんだ。
大切な親友を見捨てるなんて。
「この状況だ……分かるだろ? 頼む……行って、他の皆を――。一人でも多く助けてやってくれ……リヒト、お前なら出来るだろ……?」
自分の死を悟ってか、言いながらも彼は微笑んでいた。
それでようやくそこの自分も気付く、もう無理なんだと――助けることは出来ないんだと。
「……お前は俺を買いかぶり過ぎだ。俺はお前が思うほど強くはないし、親友一人も助けられない只の……ガキだ」
――そうこの時、俺は自身の無力を思い知ったんだ。
「そんな事ねぇよ……リヒト、お前は……お前なら……」
徐々に呼吸が浅くなっていく親友。しかし、途切れつつも強い意志を感じる言葉にそこの自分と俺は最後まで耳を傾けた。
「俺たちの夢を……みんなの理想を叶える騎士に…………なれ……る」
言い切ると全身の力が脱力し、親友は眠るように息絶えた。瞳を覗けば既に光はなく、ただ虚空を映すばかり。
「……」
何も言わず、そこの自分が目蓋を閉じさせる。
すると死んでいるとは思えないくらい親友の表情は穏やかだった。
「カリス、お前は俺に期待しすぎなんだよ……俺が、俺なんかが、みんなの夢や理想を叶える騎士になんてなれるわけないだろ?」
自嘲気味に俯きながら呟く。
真紅の眼からは涙が零れ落ちており、亡き者となった親友の顔を濡らしている。
「でもよう、お前たちの全てを奪った奴は俺が必ずブッ殺してやるよ……それでいいだろ?」
返答のない問いはただ大気を漂う。
もはや、この場にいてもしょうがない――そんな風に思っていた筈だ。
そこの自分が細剣を強く握り締める。それからゆっくり立ち上がると、扉の方へと足を向けた。
この事件を起こした奴を探さなければ。探して出して絶対に殺してやる。そんな激しい感情が心を蝕んでいた。
それに、まだきっと生きている筈の大切な親友二人も探さなきゃいけない。
自分なんかより強いアイツらなら、魔物の一匹二匹に殺られる筈はない。
そう心に思いながらそこの自分は、鍛錬場の重い扉を両手で押し開けた。
途端――。
「――ッ‼」
熱風が吹き込み、全身を叩いた。
そこの自分は思わず両腕で顔を覆い、一歩後退る。
だが、負けじと再び一歩を踏み出してはもう一歩と鍛錬場から進み出る。
外に出るとより熱さが増したはずだが、徐々に身体がその熱さに慣れたのか――或いは、熱さなど気にも留めないほどに激情に駆られていたかは今となっては覚えてないが――ゆっくりと顔を覆った両腕を外し、その真紅の両眼で前方の全てを映した。
「クソッ‼」
吐き棄てるように言ったそこの俺は、奥歯を噛み締めては顔を怒りで歪める。
その眼に映り込んでいるのは、自身の通う〈オルドル騎士学校〉が炎に包まれ、音をあげながら徐々に崩れていく様子。
「あれじゃあ、もう中にいる奴等は……」
助からないだろう。そう思っていた筈だ。
周りを見渡せば、炎は校舎だけではなく辺りをそして街にまで火の手が上がっているようだった。
そこら中で悲鳴の声が聞こえ、街の警鐘も鳴り響いている。
この時点で、子供の自分ではもうどうする事も出来ない状況なのは理解していた。
きっと街の騎士団も既に動いており、街に入りこんだ魔物の討伐に動いている筈。
今の状況でもっとも最善な選択は、街にある教会まで避難すること。街一番の大きさを誇るあの教会なら多くの人が避難出来るだろう。そして、そこには騎士団もいる。自分も協会に逃げ込むべきだ。
それが自分が生き残る最善の選択なのは分かっていた。
しかし、この時の俺はその選択を取らなかった。
――何故なら“全てを知っていた”から。
この魔物の襲撃が街の外からでは無く、“内から発生”した事を――。
この騎士学校を焼いたのは、一頭の“黒竜”から放たれた炎である事を――。
そしてその黒竜を魔物をこの騎士学校に“召喚した一人の人間”を――。
だからこそ逃げるわけにはいかなかった。
殺された仲間達の為にも、事件の首謀者を知っている俺が仇を取ってやらないと。あまりにも、報われない。
俺はそこにいる自分の眼を見た。
その真紅の眼に宿る強い意志は憎悪と怒り。
――許さねぇ、絶対に許さねぇ。殺してやる、殺してやる。
子供ながらの直接的な感情は激しく燃え上り、このとき初めて自分の心に“復讐心”が芽生えた。
そう、全てはここから始まった。
今の自分の原点。そして存在理由。
忘れられない、決して忘れてはいけない過去。
「フィリオ、エレナ、お前たちは生きててくれよ……」
そこの自分が、今じゃ懐かしい大切な“二人の親友の名前”を言った。
思わず心が締め上げられた俺は、胸に手を当て視線を地面に落とす。
その言葉は、気持ちは、八年経った今も自身の胸の内にある。そのことを今一度、思い起こされてしまった。
俺は顔を上げ、もう一度そこの自分を見る。
覚悟を決めた顔をしては地面を強く蹴り、まだ生きているであろう二人の親友を探しに駆け出した。
背中が遠ざかっていく。
同時に自身の見ている空間が徐々に白み始めた。それは靄のように広がっては俺を包み込み、あっという間に周辺を白く染め上げる。
これは夢の終わりを告げていた。
「……今日の悪夢はここまでか」
俺は安堵の息を漏らしては呟いた。
ここから先の方が正直色々と辛い。
何回も繰り返し観てきたが、慣れるものでもない。さっさと夢から醒めちまおう。
そう思うと、俺は夢の中でゆっくりと眼を閉じた。
お読みいただきありがとうございます。




