棘
涙をたぎらせたあの日は
もうずっと昔のこと
それでも私の胸に
今でも刻まれているのは
町中とり残された
夕焼け黒い家屋たち
人程はものを言わないが
何かを語っていそうだった
耳を傾けてみれば
そそくさと走り抜ける風
片腕でひょいと捕まえた
指間からひゅるり逃げてった
寂しくはないと嘘ついた
嘘に嘘を重ねていった
だから今の私って
ほとんど嘘で出来ている
耳を塞いで慰めて
だけどそれでは足りなくて
目を塞いで唱えてく
言葉の数は泣いた数
はっと耳と目を開けば
世界は闇に落ちていた
街頭の灯りがちらついた
ふわふわと綿みたいだった
過去は変えられないって
何度も身をもって知ったんだ
あの時の根源の日々が
今でも胸を貫いている